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ベイスボールはレイディオ的なスポーツ、アメフトはテレヴィ的なスポーツ、サッカーはSNS的なスポーツ
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』#WorldCup (2018/07/19放送) | LANGUAGE & EDUCATION #009
Photo: ©RendezVous
2021/09/20 #009

ベイスボールはレイディオ的なスポーツ、アメフトはテレヴィ的なスポーツ、サッカーはSNS的なスポーツ
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』#WorldCup (2018/07/19放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.プロローグ:楽屋オチ

この日のテーマは、#WorldCup、2018年に開催されたFIFAワールドカップでした。4月26日放送の#ShoTimeに続き、2回目のスポーツのネタでした。実は、番組的には、スポーツに関するテーマを扱うのは、少し難しいところがあります。この番組は、毎週、ある話題やテーマにまつわる面白いツイートや、英語的として紹介する価値のあるツイートを元に構成されています。しかし、スポーツの場合、日々の試合の行方で、その話題がより盛り上がる場合もあれば、一気に冷めてしまうケースもあり、先行きが見えないことがあるのです。そうなると、過去のツイートを元に番組を構成するか、事後に振り返る形で紹介するしかないのです。ワールドカップ・サッカーの場合ですと、前回の大会の2014年まで遡ることとなってしまうため、仕方なく、この日は2018年の大会終了後にこのテーマを取り上げることとなりました。

今回“パートナー役"を務めたヒデさんは、全国高等学校サッカー選手権大会での準優勝とインターハイ優勝の経験があり、大学卒業時にはJリーグの「横浜フリューゲルス」からスカウトされたくらいの腕前(脚前?)です。そのため、サッカーにとても詳しく、サッカー番組の解説も務めてきました。この日もリハーサル前の打ち合わせや収録の合間にも、サッカーについて熱く語り続けていました。

僕はと言うと、番組の中でもちらっと言いましたが、この期間は、テニスの4大大会(いわゆる“グランド・スラム")の1つであり、ロンドンで開催されたウィンブルドン選手権の方を観ていました。数週間前の番組の編集会議でも、#Wimbledonをテーマにすることができないか提案してみたのですが、アメリカというよりイギリスで盛り上がっていたこと、日本人のテニスに対する注目度からしてもまだ少し難しいのでは、ということになりました。

結局、錦織圭選手は、準々決勝でジョコヴィッチ選手に負けてしまいましたが、1セットは奪えたこと、そして怪我から復帰して間もないのにベスト8まで勝ち残れたことを考えると、まずまずの結果だったのではないでしょうか。ただ気になることはジョコヴィッチ選手との対戦成績が2勝15敗で、2014年の全米オープンで勝って以来14連敗しているということです。錦織選手がグランド・スラムあるいは、それに次ぐレヴェルのATPワールドツアー・マスターズ1000の大会で優勝するためには、乗り越えなくてはいけない“ジョコヴィッチ"という壁があるのではないでしょうか。

そんな僕も、サムライ・ブルーの試合だけは、リアルタイムで観ることができなかった場合でも、ちゃんと録画して観るようにはしていました。そのことをヒデさんに伝えると、ホッとした顔をしていました。

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2.サッカーはSNS的なスポーツである

スポーツには、それぞれのメディア特性があります。

例えば、ベイスボールというスポーツはとてもレイディオ的です。レイディオしかなかった時代からあったスポーツであるからとも言えるし、逆にレイディオがあったからこそ、ベイスボールはアメリカの国民的スポーツになったとも言えます。試合の流れは、ゆったりしたテンポのドラマのようで、何も起こらない時間が延々と続くこともあれば、1つのヒットをきっかけに試合の流れが一気に変わることもあります。その“何も起こらない時間"があるお陰で、スポンサーのコマーシャルを読み上げる時間がたっぷりあったことも、注目すべきポイントです。アメリカでも、最近若者のベイスボール離れが進んでいるという報道もされていますが、米国の市場調査会社ニールセンによると、アメリカにおいてベイスボールは今も尚、レイディオで最も聞かれているスポーツだそうです。

一方でアメリカン・フットボールは、(アメリカでは、“アメリカン"を付けず、“フットボール"と言います。イギリスでは“フットボール"と言えば、サッカーのことです。米語と英語の違いはとても面白いテーマなので後日、特集します。)とてもテレヴィ的なスポーツです。毎年2月に開催されるスーパー・ボウルは、(この“ボウル"は、球の“ball"ではなく、丼などの器、サラダ・ボウルの“bowl"です。競技場が器のような形をしていることに由来しています。)その年のテレヴィ番組の年間最高視聴率を毎年記録するくらい、多くの人に観られていますし、その放送におけるCM枠は世界一高額だとされています。(因みに、今年の場合30秒のCMで400万ドルとされています。日本円でおよそ4億5千万円です。)また、タッチダウンまで“あと何ヤードか"を示す白いラインが、CG合成で芝生に書かれているかのように表示されたり、360度のリプレイ映像を流すなど、年々演出がレヴェル・アップするアメフトの中継技術はテレヴィ的で、本当に見事なものです。

そしてサッカーは、とてもSNS的なスポーツなのではないでしょうか。その最も大きな理由は、サッカーが民主主義的なスポーツであるからだと思います。ロナルドやメッシーなどの大スターがチームにいたとしても、その1人の選手の活躍よりチーム全体としてのまとまりの方が、勝負の行方を左右します。今回のワールド・カップでサムライ・ブルーが、1次リーグH組でコロンビアを破るという番狂わせを見せたことも、その1例ではないでしょうか。また、アメフトとやベイスボール(アメリカ国内の試合にも関わらず、メジャー・リーグ・ベイスボールでは、その優勝決定戦を“ワールド・シリーズ"と呼んでいます。)に比べ、サッカーは国際的なスポーツ、つまりボーダーレスであることもSNS的だと言えます。各国のサッカー・チーム自体も積極的にSNSを通して情報を発信し、世界中のファンのエンゲイジメントを高めています。

因みに、テニスはどうかと言いますと、全くマス・メディア向けではないと僕は考えています。プロの試合の展開はとても早く、一番の見所であるポイントの“組み立て"や“崩し"の戦略は、いくら優れた解説者だとしても、解説を聞くだけではなかなかイメージがわきません。また、試合の長さに関しても、30分以内に片方のプレイヤーがリタイアすることもあれば、4大大会であるグランド・スラムにおける男子の5セット・マッチのように、1試合が平気で3~4時間続くこともあります。試合がいつ終わるか分からないということは、放送枠を確定させたいテレヴィ局(とスポンサー)側からすると、扱い方がとても難しいところです。

かと言って、SNS的でもありません。グローバルなスポーツであることは間違い無いのですが、チームで行われるベイスボールやアメフトやサッカーに比べ、基本的に個人単位(デイヴィス・カップやフェドカップなどのチーム大会を除けば)で行われるスポーツなので、SNSにかけているエナジーは、他のスポーツに比べてそれ程多くありません。

またテニスの場合、プレイ中は物音を立てないようにするだけでなく、ブーイングすることさえ“恥"とされるくらい、“紳士的"なスポーツなので、観る側のマナーも問われます。声を高らかにして自分が好きな選手だけを応援したい観戦者からすると、どこかもどかしいスポーツなのではないでしょうか。テニス観戦は、時間とお金を持て余し、悠々自適に暮らす人、あるいは熱烈なファン向けなのです。もちろん僕の場合は、紛れもなく後者に当たりますが。

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3.今週の衣裳

「麻布テーラー」の緑色のジャケット

「麻布テーラー」の緑色のジャケット
この回に着用したのは、夏用のジャケットとして「麻布テーラー」でオーダーした緑色のジャケットです。

緑色のジャケットと言えば、ゴルフのメジャー選手権の1つである、アメリカのマスターズ・トーナメントの優勝者に贈呈されるグリーン・ジャケットがとても有名です。

このジャケットは、マスターズを意識してオーダーしたわけではありませんでしたが、夏のリゾートやカントリー・クラブなどの“エクスクルーシヴ"な感じをイメージして作りました。(できれば、テニスだけでなくゴルフも始めたいとは思っています。)

以前「ユニバーサル・ランゲージ」で作ったバーズアイのスーツが、今までの中では一番のお気に入りだったので、このジャケットも同じ形の3つボタンの段返りというスタイルでオーダーしました。2つボタンに比べてVゾーンが少し小さめになるので、ノー・ネクタイでも胸元が寂しく感じないところがポイントです。

腰ポケットには今回、“チェンジ・ポケット"を入れてみました。チェンジ・ポケットとは、ジャケットの(着る側からして)右側にある通常のポケットの上に付けるポケットのことです。かつてイギリスでは、馬に乗った人が料金所を通過する際に、ジャケットのボタンを外さず、小銭を取り出せるように、このチェンジ・ポケットが使われていました。工業化が起きて電車通勤が普通になると、切符を入れる“チケット・ポケット"として使われるようになりました。現代社会においては、それほど実用性はないのかもしれませんが、僕のように背の高い人の場合、胴周りの“ネガティブ・スペース"に変化をもたらすことができるので、とても気に入っています。

麻布テーラーのグリーン・ジャケットのチェンジポケットをアップにした写真でお願いします。

「ブルックス・ブラザーズ」のオレンジ色のチノパン

「ブルックス・ブラザーズ」のオレンジ色のチノパン
今年の夏はカラフルなチノパンに挑戦したいと思い、6月頃に「ブルックス・ブラザーズ」でベイジュ、ホワイト、オレンジ、ティールの4本を購入しました。

カジュアル・ライン『レッド・フリース』の商品なので、¥10,000とお手頃なのですが、造りもしっかりしていて、従来のダボダボなイメージのチノパンとは違ってスリムなフィットです。

また、ベルト・ループはついているので、ベルトを使うこともできるのですが、 “持ち出し"と呼ばれる、フロントを閉じる時に最後に締める、先端が少し出ている部分がついているため、ベルトなしでもスッキリ見えるデザインになっています。これまで番組では、基本的にベルトを締めてズボンを履いていましたが、このチノパンは腰回りのサイズ感もぴったりなので、ベルトなしに挑戦しました。

このチノパンの持ち出しのアップの写真をお願いします。

因みに、この日はいつも衣裳のチェックをして下さる番組スタッフに、“今日は美味しそうな色ですね"と言われました。この時はカラフルな衣裳には、まだまだ慣れないなかったので、この一言で少しホッとしました。

「ティンバーランド」のスリップ・オン

「ティンバーランド」のスリップ・オン
2年ほど前に購入した「ティンバーランド」の革のスリップ・オン・シューズです。









“スリップ"は“滑る"という意味で、 足を滑り込ませるように簡単に履けることから“スリップ・オン"と呼ばれます。

結び紐や留め具がないので、着脱は楽なのですが、その反面サイズ感が少し難しいところがあります。高品質の革製品は履いているうちに柔らかくなり、少し伸びてくるので、購入した時点でぴったりな靴は、少しずつ緩くなってしまいます。

僕もこの靴で、この教訓を学びました。今では中にインナー・ソールを1枚敷いているので、サイズはぴったりなのですが、次回結び紐のないローファー系の靴を買う際には、少しだけタイトなものを選びたいと思います。

「ファブリック・トウキョウ」のグレイのストライプ・シャツ

「ファブリック・トウキョウ」のグレイのストライプ・シャツ
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #001を参照してください。

「タビオ」のオレンジ色のソックス

「タビオ」のオレンジ色のソックス
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #004を参照してください。

「ゾフ」の黒いメガネ

「ゾフ」の黒いメガネ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #006を参照してください。

4.エピローグ:収録後のサプライズ

この日の収録が無事終わって、いつものようにメイク室に向かい、メイクを落としてもらい、ホッと一息ついていたら、突然、若手のスタッフが現れて「プロデューサーが呼んでいます」と言われました。一瞬、収録時の僕の棒読みっぷりにプロデューサーの堪忍袋の緒が、ついにブチ切れてしまったのか、と思いました。それでも僕はとりあえず、急いでスタッフの控え室に向かいました。

ゆっくりと控え室の扉を開けると、それまで真っ暗になっていた部屋に急に灯りがつきました。そこにはプロデューサーやスタッフが集まっていました。そしてテーブルの上には、ロウソクの乗った「テオブローマ」のミックスベリーのケーキがありました。

実は僕の誕生日は7月17日で、たまたま収録日と重なっていたのです。このように大勢にお祝いされるのは、実に10年以上ぶりのことだったので、普段はあまり感情的にはならない僕ですが、カーッと顔が赤くなりました。これまで“サプライズ◯◯"ということについては、ネガティヴに考えていたのですが、その考えを少しだけ改めることにしました。

『世界へ発信!SNS英語術』には、チーフ・プロデューサーが2人いるのですが、番組が4月に始まって間もない頃に、ジャズの話題で一気に打ち解けていた1人からは『エリック・ドルフィーのライヴ・アルバム』、そして普段からアメリカのコメディーの話題で意気投合している、もう1人のプロデューサーからは、『立川志の輔さんの落語のCD』をプレゼントされました。

プロデューサーの2人、そして番組関係者の皆さん、本当にありがとうございました。


LANGUAGE & EDUCATION #009

ベイスボールはレイディオ的なスポーツ、アメフトはテレヴィ的なスポーツ、サッカーはSNS的なスポーツ - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』#WorldCup (2018/07/19放送)


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