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1970年代のカントリー・ロック/ブルーズ・ロックの最盛期
  - ウェスト・コースト・ロック入門 (4)
  - リンダ・ロンシュタット/ジャクソン・ブラウン/J・D・サウザー/ボニー・レイット | MUSIC & PARTIES #011
2021/09/13 #011

1970年代のカントリー・ロック/ブルーズ・ロックの最盛期
- ウェスト・コースト・ロック入門 (4)
- リンダ・ロンシュタット/ジャクソン・ブラウン/J・D・サウザー/ボニー・レイット

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Mickey K.
風景写真家(公益社団法人・日本写真家協会所属)

目次


1.南カリフォルニアのカントリー・ロック・サウンド

70年代に入ると、カリフォルニア出身のイーグルスやドゥービー・ブラザーズといったビッグ・ネイムのバンドが大活躍するようになりました。

こうしたバンドは、サイケデリック・ロックの多くのバンドと同じウェスト・コースト出身でありながら、R&Bやアメリカ南部のカントリー・ミュージックの影響をより強く受けています。“サザン・ロック"や“ブルーズ"の泥臭い響きを、カリフォルニアならではの開放的な雰囲気で表現したサウンドが特徴です。

そもそもイーグルスというバンドは、ウェスト・コースト・ロックの女王、リンダ・ロンシュタットのツアーのためのバックバンドを基に生まれたグループです。このリンダ・ロンシュタットやイーグルスに多くの曲を提供したジャックソン・ブラウンとJ・D・サウザーという2人も、ウェスト・コースト・ロックを語る上で忘れてはいけない人物です。

リンダ・ロンシュタットのオススメCD

『悪いあなた』 (1974年)
70年代のウェスト・コースト・ロックを代表する記念碑的なアルバムです。ロンシュタットは本作で大ブレークを果たしました。『ローリング・ストーン』誌の『歴代アルバム500』では、164位に選ばれています。

『ラウンド・ミッドナイト』(1987年)
フランク・シナトラやナット・キング・コールなどの作品のアレンジャーとして知られるネルソン・リドルとともに制作した、ジャズ・スタンダードを歌った3枚のアルバム(『What’s New』『Lush Life』『For Sentimental Reasons』)を新たに2枚組としてリリースしたアルバムです。3枚ともミリオンセラーとなりました。

『ヴェリー・ベスト・オブ・リンダ・ロンシュタット』
ウエスト・コースト・ロックの歌姫の代表曲が21曲収録された、1枚組のベスト盤です。


2.ウェスト・コースト・ロックを代表するシンガー・ソングライター、ジャクソン・ブラウン

ドイツで生まれ、LAで育ったジャクソン・ブラウンは、ティーネイジャーからフォークソングをクラブ(日本でいうライヴ・ハウス)で歌い、高校卒業後はLAとNYCで自ら音楽活動を行う一方、音楽ライターとしても他のミュージシャンへも楽曲を提供しています。1972年に『ジャクソン・ブラウン』でソロ・デビューを果たしました。

ソロとしてのキャリアも充実している一方で、イーグルスのデビュー・シングル『Take it Easy』を提供するなど、作詞家としての評価も高く、2004年には、「ロックの殿堂」入りを果たしています。

同じ歳のブルース・スプリングスティーンとも親交が厚く、政治的な活動も活発に行なっています。「ローリング・ストーン」誌からは、「1970年代で最も完成された作詞家」と評されたこともあります。

ジャクソン・ブラウンのオススメのCD

『ザ・ベスト・オブ・ジャクソン・ブラウン』
ブラウンのアルバムからそれぞれ1曲程度をセレクションした、入門用としては文句のない1枚組のベスト盤です。

『プリテンダー』 (1976年)
ブラウンの最初の妻が自殺した後にリリースされた本作には、暗い、失望的なムードが漂います。収録曲にもある『プリテンダー』は、LAの郊外の暮らしの虚しさを皮肉った内容です。本作は「ローリング・ストーン」誌が2003年に発表した『歴代アルバム500』で391位に選ばれました。

『ホールド・アウト』(1980年)
発表当時、アメリカではディスコ・ブームに湧いていたということもあり、シンセサイザーを取り入れたサウンドとなっています。そのため、海外の音楽評論家の間での評価は微妙なものの、ブラウンのアルバムの中では唯一、ビルボード・チャートで1位を獲得しました。

『レイト・フォー・ザ・スカイ』(1974年)
当時のツアー・バンドと共に収録した3枚目のスタジオ・アルバムは、素朴なサウンドと絶望感が漂う詞など、初期のブラウンを総括した傑作です。イーグルスのドラマーであるドン・ヘンリーや、J・D・サウザーがバックアップ・ヴォーカルとして参加し、美しいハーモニーを奏でています。

『ザ・ブロードキャスト・アーカイブ』
70年代から90年代の間にアメリカのレイディオで放送されたライヴ演奏を収録した4枚組です。音質は当然レイディオ・クオリティーなのですが、ジャクソンの心に染みる歌の力は見事なものです。


3.“もう一人のイーグルス" 、J・D・サウザー

“もう一人のイーグルス"とも呼ばれたJ・D・サウザーも、ウェスト・コースト・ロックを語る上で忘れてはいけない人物です。

J・D・サウザーは、デトロイトで生まれてテキサス州で育った、シンガー・ソングライターです。若い頃はジャズに興味を持っていたものの、60年代にLAに移り、カントリー・ロック・ミュージックに目覚めることとなります。

LAでは、のちにイーグルスのリード・ヴォーカルとギタリストとなったグレン・フライと出会い、ルームメイトとなり、一緒に音楽の制作活動も行いました。

サウザーはフライやリンダ・ロンシュタットなどとの親交を通して、音楽スタイルを完成させます。カントリーやカントリー・ロックという音楽は、表面的にはプリミティヴな印象の音楽ではあるけれど、その根っこはとても深く、図太いスタイルが特徴です。

作曲家・作詞家としての評価が高く、イーグルスやリンダ・ロンシュタットをはじめ、多くのミュージシャンに曲を提供してきました。

イーグルスのヒット曲である『我が愛の至上』『Victim of Love』『Heartache Tonight』『ニュー・キッド・イン・タウン』『ハウ・ロング』などの制作に携わっています。

サウザーは、リンダ・ロンシュタットだけでなく、女性のブルーズ・ヴォーカリストとギタリストのボニー・レイットにも曲を提供しています。

1979年のアルバム『You’re Only Lonely』の同名タイトル曲は、全米でヒットし、日本でも映画『波の数だけ抱きしめて』の挿入歌として起用されたり、三菱の『アウトランダー』のCMにも使用されました。
AORの名曲とも言えるこの曲は、日本人の琴線に触れるセンティメンタルな、とてもいい曲だと思います。

J・D・サウザーのオススメのアルバム

『ユア・オンリー・ロンリー』 (1979年)
J・D・サウザーの3枚目オリジナル・アルバムです。名曲『You’re Only Lonely』には、ジャクソン・ブラウンがバックアップ・ヴォーカルとして参加しており、シングルは、ビルボードのアダルト・コンテンポラリーのチャートで1位を獲得しました。他にもイーグルスのグレン・フライと共同で作詞・作曲した2曲も収録されています。

『ホーム・バイ・ドーン』 (1984年)
J・D・サウザーの4枚目のオリジナル・アルバムです。80年代に入るとカントリー・ロックの人気は一時期停滞し、本作も発売当時はあまり注目されなかったのですが、このアルバムは隠れた名作です。リンダ・ロンシュタットやイーグルスのドラマーであるドン・ヘンリーがバックアップ・ヴォーカルとして参加しています。

ボニー・レイットのオススメのアルバム

『ホーム・プレート』 (1975年)
ブルーズ・ロック独特の泥臭さが残るものの、より洗練された、ポップ寄りなサウンドを意識して制作された5作目のオリジナル・アルバムです。ジャクソン・ブラウンとJ・D・サウザーがバックアップ・シンガーとして参加しており、サウザーは『Run Like a Thief』という曲を提供しています。

『ニック・オブ・タイム』 (1989年)
それまでブルーズ・ロックのミュージシャンとして一定の評価は得ていたものの、ヒットには恵まれていなかったレイットが、キャピトル・レコード移籍後の第一弾してリリースした、10作目にして最大のヒットとなったアルバムです。1990年のグラミー賞において最優秀アルバム賞、最優秀女性ポップ・ボーカル賞、最優秀女性ロック・ボーカル賞を受賞しました。

『ザ・ベスト・オブ・ボニー・レイット』 (2003年)
キャピトル・レコード所属時のカヴァーとオリジナルを18曲収録した、黄金期のボニー・レイットのベスト盤です。


4.エピローグ

以上、「ウェスト・コースト・ロック入門」シリーズの第4回目では、前半と後半に分けてサイケデリック・ロック、カントリー・ロック、そしてジャクソン・ブラウンとJ・D・サウザーとその周辺のミュージシャンについて書きました。次回はデヴィッド・リンドレーとライ・クーダーの“泥臭い"ルーツ・ミュージックについて取り上げます。お楽しみに!


MUSIC & PARTIES #011

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