1.プロローグ
数週間に渡ってお届けしてきたエレクトロニック・ダンス・ミュージックのシリーズは、いよいよ最終回です。今回はオススメのナイトクラブを取り上げます。
現在、世界中のクラブ・シーンは窮地に立たされています。世界各地での緊急事態宣言の発出を受けて、3月頃から主なクラブ・パーティーや大型イヴェントの中止が次々と発表され、今もほとんどのナイトクラブが閉鎖されたままとなっています。ナイトクラブというものは、窓の少ない、換気の悪い“密閉空間"であり、大勢の人々が詰め込む“密集場所"でもあり、人と人が急接近して汗が飛び散る“密接場所"であります。いわゆる“3密"が生じるどころか、“3密"を前提とした空間なのです。世界各地で営業自粛が段階的に解除されいく中で、ナイトクラブが“元通り"となるのは様々なエンタメ施設の種類の中でも最後になるのではないかと懸念されています。
そもそもクラブ業界は新型コロナウイルス感染症が流行する前から厳しい状態に立たされていました。2000年代以降、アメリカを中心にEDMブームが巻き起こる中、ヨーロッパではアンダーグラウンド・クラブ・シーンの中心的な役割を担っていたようなヴェニューが若者のクラブ離れや再開発、ドラッグ問題などを理由に次々と閉鎖されてきました。英国では2005年の時点では3,000軒以上のクラブがあったとされるのに対して、2015年の時点ではその半分くらいまでに減っていたそうです。ヨーロッパ各地でもこの動きが加速しています。テクノの聖地と呼ばれるドイツ・ベルリンでも、ナイトクラブが毎年300万人を呼び込む大きな観光資源になっているにも関わらず、高級住宅街の開発や物価の上昇によって多くのクラブが閉鎖されています。クラブ・パーティーというものがその一晩限りの非日常的な場であるように、ナイトクラブそのものも寿命の短い、儚い存在です。
こういった事態を受けて、ナイトクラブを救い、クラブ・カルチャーを守ろうとする動きも各地で見られます。英国の伝説のナイトクラブである「Ministry of Sound」は2010年代前半にタワー・マンションの建設のために閉鎖されるとささやかれていましたが、なんとか閉鎖を免れましたし、「Fabric」は2016年に一旦閉鎖されましたが「Save Fabric」(ファブリックを救え)というキャンペーンに多くの賛同の声が集まり、2017年に再オープンしました。一方、ベルリンでは、ナイトクラブをカジノや売春宿などのような“娯楽施設"ではなくオペラ・ハウスのような“文化施設"として認められる運動が進められていました。その真っ最中に、クラブ・シーンの痛手に追い打ちをかけるかのように、新型コロナウイルスの感染症が流行しました。
今回は世界各地のこういった歴とした“文化施設"を紹介します。
2.英国のナイトクラブ
●ミニストリー・オヴ・サウンド (ロンドン / キャパシティ: 1,555人)
「Ministry of Sound」は、1991年に開業して以来、ロンドンのハウス・ミュージック・シーンの中心地として不動の人気を誇ってきました。ニューヨークの伝説のクラブ「Paradise Garage」をモデルにしており、何より“良い音"を重視したデザインで知られています。毎週の金曜日の夜はトランス系のパーティー、土曜日の夜はハウス系のパーティーが恒例となっています。また、MUSIC & PARTIES #041でも紹介したように、Ministry of Soundはレイベルも展開しており、クラブ・ミュージックの歴史について知りたい方にオススメのコンピレイション・アルバムを数多くリリースしています。
https://www.ministryofsound.com/
●ファブリック (ロンドン / キャパシティ: 1,500人)
「Fabric」は1999年にオープンして以来、揺るぎない姿勢でアンダーグラウンドなクラブ・カルチャーを支えてきました。金曜日の夜は低音を強調したベイス・ミュージック(ドラムンベイスやダブステップなど)のパーティー、土曜日の夜はディープなハウス、テクノ、そしてディスコ・ミュージックのイヴェントを開催しています。Fabricも自社のレイベルを持っており、アンダーグラウンド・シーンのDJにスポットを当てた「Fabric」シリーズとライヴのDJプレイを収録した「Fabric.Live」シリーズのミックスCDが根強い人気を誇っています。
https://www.fabriclondon.com/
●プリントワークス (ロンドン / キャパシティ: 5,000人)
※Printworks は2023年に閉店しましたが、2026年に再オープンする予定だと発表しています
2017年に南ロンドンで開業した「Printworks」は比較的新しい大バコのクラブですが、わずか数年間で世界のトップDJを招聘する人気スポットとなりました。英国のクラブ・カルチャーの総合誌「DJ Mag」の『Top 100 Clubs』のランキングでは5位に選ばれました。その名は、ビルそのものが以前は印刷工場であったことに由来しており、その雰囲気が至るところに残されているデザインが、90年代初頭の英国のレイヴ・シーンを彷彿とさせます。メイン・ステージの後ろにある巨大なLEDスクリーンが目玉です。
https://printworkslondon.co.uk/
●ウェアハウス・プロジェクト (マンチェスター / Capacity: 1,000)
マンチェスターといえば、80年終盤~90年代初頭の英国のアシッド・ハウス・シーンで中心的な役割を果たした「ハシエンダ」や、94年に石鹸工場の跡地でオープンした「Sankeys」などの伝説のクラブで知られています。その伝統を受け継いでいるのが2006年にスタートした「The Warehouse Project」です。通常のクラブとは違って、The Warehouse Projectは毎年9月からお正月まで営業する“期間限定"のクラブで、これまで度々会場を何度か変えながら活動を続けてきました。2019年以降は、「Mayfield Depot」という廃駅を拠点として開催されています。
https://www.thewarehouseproject.com/
3.ヨーロッパのナイトクラブ
●トレゾア (ベルリン / キャパシティ: 1,000人)
1991年にベルリンの壁が崩壊すると、都市の至る所にあった廃虚ビルや空間がパーティーやレイヴの会場として利用されるようになり、ジャーマン・テクノのシーンが育まれましたました。中でも伝説的な存在とされる「Tresor」は、当初は銀行の金庫として使われていた空間を会場としていました。2005年に近隣の再開発を理由に一度閉鎖されましたが、2007年に今度は閉鎖された火力発電所で再オープンし、現在に至るまでベルリンのクラブ・シーンで中心的な役割を果たしています。DJブースが檻の中にあることで知られています。
●ベルガイン (ベルリン / キャパシティ: 1,500人)
「Tresor」と並んで名物クラブとされていた「Ostgut」は、1998年にベルリンの鉄道駅の倉庫でオープンしました。2003年に1度閉鎖されますが、2004年に廃墟の発電所に「Berghain」としてリニューアル・オープンしました。Berghainは、世界一のナイトクラブとも称される、テクノ・ミュージックの聖地で、厳しいドア・ポリシーで知られます。内装はミニマルなデザインで、音楽と非日常的な空間に浸ることができます。巨大なメインのダンスフロアでは主にテクノがかかり、2階にあるサブフロアの「Panorama Bar」ではハウス系の音楽がかかります。
●ブーツハウス (ケルン / キャパシティ: 1,800人)
2018年と2019年に「Berghain」を抑え、「DJ Mag」の『Top 100 Clubs』のランキングで最上位のドイツのナイトクラブとして選ばれているのが「Bootshaus」です。かつて船の倉庫として使われていた施設を会場としたこのクラブは2000年代前半にオープンし、徐々に音楽の幅を多様化させていくうちに人気を集めるようになりました。現在ではEDM系の重鎮であるスティーヴ・アオキらからドラムンベイスまで様々なパーティーを主催しています。また、2019年からはゴア・トランスやドラムンベイスの野外レイヴ「Nibirii Festival」とベイス・ミュージックに焦点を当てた「Blacklist Festival」もケルン周辺で開催するようになりました。
https://www.bootshaus.tv/
●パシャ (イビザ島 / キャパシティ: 3,000人)
60年代から70年代にかけて、アメリカのヒッピー・カルチャーとディスコ・ミュージックが世界中に拡散され、スペインのイビザ島にも根付きました。この頃からイビザ島に大型ディスコ(いわゆる“スーパークラブ”)が次々と開設されていきます。その中でも最も有名な老舗が、チェリーのロゴで有名な「Pacha」です。近年は改装によってサウンドシステムや演出設備もヴァージョンアップされ、再び注目を集めています。一方、70年代のルーツを継承する「Flower Power」のような長寿のパーティーも人気です。
https://pacha.com/
●アムネシア (イビザ島 / キャパシティ: 4,000人)
多くのナイトクラブが5年も営業が続かない中、1976年に開業した「Amnesia」は40年以上もイビザ島のナイトライフで中心的な存在として不動の地位を保ってきました。当初「The Workshop of Forgetfullness」(物忘れの工場)という名でオープンしたこのヴェニューは、いわゆる“バレアリック・ビート”と呼ばれるサウンドが育まれた聖地の1つです。名物はメインのダンスフロアのクラバー達が泡まみれになる“泡パーティ”と、朝日が差し込むサブフロアのガラス張りの天井です。
https://www.amnesia.es/
●プリヴィレッジ (イビザ島 / キャパシティ: 10,000人)
※Privilege は名前を[UNVRS]に変更しています
「Privilege」はギネス世界記録に「世界最大級のクラブ」と認定された大バコのクラブです。70年代初期に「Club San Rafael」というレストランとして開業したこのヴェニューは、79年ごろに「Ku」に改名され、ニューヨークの伝説のディスコ「Studio 54」を彷彿とさせる、ゲイのクラバーが訪れるクラブとして人気を集めました。95年より「Privilege」に改名されました。
http://privilegeibiza.com/en-gb/
●ハイ・イビザ (イビザ島 / キャパシティ: 4,500人)
2017年にオープンした「Hï Ibiza」はイビザ島の最も新しいナイトクラブと言われていますが、カール・コックスらの大物DJがレジデントDJを務めた名物クラブ「Space」の跡地にオープンしたこともあり、瞬く間に人気を集めるようになりました。最新の「DJ Mag」の『Top 100 Clubs』のランキングでは、イビザ島の老舗を抑え、2位にランクインしています。これまでデヴィッド・ゲッタなどのEDM系の大物からハウスやテクノの重鎮までがDJプレイを披露しています。メインのダンス・フロアとサブフロアに加え、ユニセックスのトイレの中にDJブースをおいた「Wild Corner」というスペースでも知られています。
https://www.hiibiza.com/
●ウシュアイア (イビザ島 / キャパシティ: 7,500人)
最新の「DJ Mag」の『Top 100 Clubs』のランキングで4位にランクインした「Ushuaïa」は、「Hï Ibiza」の姉妹クラブです。ビーチに面したこのヴェニューは、2011年にホテルとクラブとしてオープンし、部屋の窓からダンス・フロアを見渡せる設計が特徴的です。デヴィッド・ゲッタ、アヴィーチー、スウィディッシュ・ハウス・マフィア、アーミン・ヴァン・ビューレン、カルヴィン・ハリス、マーティン・ギャリックスなど、EDM界の大物が多くブッキングされていることで有名です。
https://www.theushuaiaexperience.com/en/club/
4.北米/南米のナイトクラブ
●エコーステイジ (ワシントンD.C. / キャパシティ: 3,000人)
屋外の巨大EDMフェスを屋内に移したような派手な演出で知られる「Echostage」は、アメリカの首都のワシントンD.C.に位置する大バコのナイトクラブ/ライヴハウスです。2012年にオープンしたこのヴェニューは、ティエスト、アヴィーチー、スクリレックスやマーティン・ギャリックスなどを招聘し、正にEDMブームと共に成長したクラブといえます。
https://echostage.com/
●エクスチェンジ LA (ロス・アンジェレス / キャパシティ: 1,500人)
「Exchange LA」は、1931年から1986年まで「ロサンゼルス株式取引所」(Los Angeles Stock Exchange Building)が運営され、ロサンゼルス歴史文化記念物にも指定されているアール・デコ調のビルの中で、2006年にオープンしました。大きな洞窟のようなメインのダンス・フロアでは、トランス、プログレッシヴ・ハウス、ドラムンベイスなど、幅広いジャンルのパーティーが開催されてきました。また、クラブ・イヴェント以外にもコンサート、ファッション・ショーなども開催され、映画撮影のロケーションとして使われることも多いです。
https://exchangela.com/
●ハッカサン (ラス・ヴェガス / キャパシティ: 3,000人)
アメリカのEDMシーンの震源地とされるラス・ヴェガスの数多くのナイトクラブの中でも、巨額なギャラが支払われるレジデントDJが多く務めてきたことで知られるのが「Hakkasan」です。そもそもHakkasanはロンドンで高級広東料理店としてスタートし、その後アブ・ダビの不動産開発業者に売却されたことを受けて、各地でレストランがオープンされ、2013年からはラス・ヴェガスでホテル業界/エンタメ業界にも参入しました。これまでティエスト、カルヴィン・ハリス、スティーヴ・アオキらが長年レジデントDJを務め、アフロジャックやゼッドなどのEDM系DJもレギュラー出演しています。(カルヴィン・ハリスは現在Hakkasanグループが運営するOMNIAというナイトクラブのレジデントDJになっているそうです。)
https://hakkasannightclub.com/
●グリーン・ヴァリー (ブラジル / キャパシティ: 12,000人)
「Green Valley」は、「DJ Mag」の『Top 100 Clubs』のランキングで2018年、2019年、2020年と3年間連続で1位に選ばれています。『Top 100 Clubs』は読者の投票によって決定されるので、これはブラジル人がいかにパーティー好きであることを物語っています。森と池に面したこの敷地には、ファットボーイ・スリムはもちろんのこと、EDM系の大物がDJプレイを披露する巨大テントのようなメイン・エリアと、アンダーグラウンド系のDJが登場するサブステージもあります。いってみれば、ダンス・ミュージックのフェスが毎週開催されているようなものです。
http://www.greenvalleybr.com/
●ワルン・ビーチ・クラブ (ブラジル / キャパシティ: 2,500人)
2002年にオープンした「Warung Beach Club」は、ブラジルのダンス・ミュージック・シーンを代表するナイトクラブです。ジャングルとビーチに面した建物は、ほとんど木製であり、常連客には “the temple"(お寺)と呼ばれるほど、パーティー・ピープルの聖地となっています。初期の頃からSashaやHernan Cattaneoなど、プログレッシヴ・ハウスのパーティーが人気で、その後一時期はEDM寄りのパーティーが多くなっていたようですが、近年は再びアンダーグラウンドのサウンドにシフトしたそうです。
https://warungclub.com.br/en/
5.日本/アジアのナイトクラブ
●ウーム (東京 / キャパシティ: 1,000人)
英国の人気クラブ雑誌“DJ MAG"が毎年選出している“TOP 100 Club"において、毎回ランクインし、2018年には世界で56位にランクされ、日本国内では最高位に選ばれているのが『ウーム』です。“ラブホ街+クラブ街"で有名な円山町の真ん中にある、コンクリートの打ちっ放しの建物の中は、まさに東京・日本のナイトクラブを代表する空間となっています。アジア最大級のミラーボールに、世界最高峰のサウンドシステムで有名なメイン・フロアはもちろんの事、1階と4階のラウンジ、3階のテラス席にテーブルを配するVIPもとても雰囲気のいい空間となっています。音楽ジャンルとしては、ハウス、テクノ、テック・ハウス、ドラムンベイスを中心としており、音楽好き、音響好き、踊り好きのためのハコです。
http://www.womb.co.jp/
●アゲハ (スタジオ・コースト / キャパシティ: 2,400人)
※ageHaは2022年に閉店しましたが、クラブイベントやプロジェクトの企画を続けています
2002年末には新木場に「STUDIO COAST」という多目的エンターテイメント・スペースがオープンしました。週末の夜には、“MOTHER"というオーガナイザー・チームなどが「ageHa」というクラブ・イヴェントを開催し、トランス、ハウス、テクノ、EDM、ヒップホップなど幅広いジャンルのバレアリック・スタイルのパーティーが開催されています。メイン・フロアのほか、バーとラウンジエリア、屋外のプール・エリアやビーチ・エリア、フード・トラックのエリアがあり、大人の遊び場として現在も人気です。都心からはちょっと不便な場所ですが、渋谷からもシャトル・バスが出ています。
http://www.ageha.com/
●ヴィジョン (東京 / キャパシティ: 1,500人)
※ヴィジョンは2022年9月に営業を終了しました
2011年にオープンした「ヴィジョン」は、道玄坂の中間位のところに位置し、大きなダンス・フロアが2つあり、キャパシティも、1500人ぐらいの大バコです。2つのダンス・フロアの床は、木製のため踊りやすく、ラウンジ・エリアやバー・カウンターもあり、ゆっくり休むこともできるため、踊り好きには、大変好評です。音質、VJ、ライブなどもレベルが高く、DJセットだけでなく、LIVEセットのイヴェントも行っています。音楽ジャンルは、特に決められていないので、公式HPでチェックしてから、来場することをオススメします。
http://www.vision-tokyo.com/
●コンタクト (東京 / キャパシティ: 600人)
※コンタクトは2022年9月に営業を終了しました
道玄坂の中程にある駐車場の奥の地下2階にある「コンタクト」は、2016年4月にオープンした新しいナイト・クラブです。フロアは、メインとバーフロアの2つがあり、キャパシティは、600人ぐらいの“中バコ"です。テック・ハウス系がメインで、日本人DJだけでなく、海外からのDJも招聘しています。会員制を取っているので、公式HPでのメンバー登録が必要となっています。
https://www.contacttokyo.com/
●ウォープ新宿 (東京 / キャパシティ: 1,000人)
長年の間、「DJ Mag」の『Top 100 Clubs』にランクインするほど世界的な知名度があったナイトクラブは「Womb」だけでしたが、2020年のランキングでは「Warp Shinjuku」が62位に初登場しました。2018年に誕生したこのヴェニューは、「世界から東京へ、東京から宇宙へ」(from the world to Tokyo, from Tokyo to the Universe)をコンセプトに、ビッグ・ルーム・ハウスやテクノのパーティーを中心に、ヒップホップやいわゆる“オール・ミックス"もかかっています。海外の大物DJと人気の高い国内のレジデントDJのプレイを楽しむことができます。
https://warp-shinjuku.jp/
●ズーク・シンガポール (キャパシティ: 2,900人)
「Zouk」は、シンガポールの最も人気のナイトスポットとされ、「DJ Mag」の『Top 100 Clubs』のランキングではアジアのナイトクラブとしては最上位に選ばれています。その名はフランス語をベイスにしたクレオール語で「パーティー」を意味するそうです。ニューヨークやベルリンの倉庫で開催されたレイヴをイメージした「Zouk」、ヒップホップがかかる「Phuture」、高級感溢れるラウンジの「Capital」など、複数のスペースから形成されており、ハウス、テクノ、トランスなど幅広いジャンルのパーティーが開催されています。
https://zoukclub.com/
●イリュージョン (タイ / キャパシティ: 5,000人)
かつてショッピング・センターとして使用されていた施設で2014年にオープンした「Illuzion」は、短い期間で東南アジアのEDMシーンを代表するナイトクラブ/ライヴハウスとなりました。プレイするDJはマーティン・ギャリックス、ティエスト、アフロジャック、スティーヴ・アオキなど主に「DJ Mag」の『Top 100 DJs』で上位にランクインするEDM系のアーティストですが、世界的な人気を誇るヒップホップ/R&Bのシンガーも頻繁に登場しています。
https://www.illuzionphuket.com/
6.エピローグ
韓国は対策として検査、隔離、情報公開を徹底したことによって、4月下旬に「社会的距離の確保」の一部の制限を緩和し、ナイトクラブが営業を再開しました。ところが5月6日にソウル市内の繁華街にあるナイトクラブで起きた集団感染で270人以上の感染者が確認され、クラブは再び閉鎖され、感染の第2波への警戒が広がっています。一方、東京では緊急事態宣言を解除して以来、夜の繁華街に関連した感染が目立つようになっています。
東京では2020年6月19日に休業要請も全面的に解除され、都内のナイトクラブは今後ソーシャル・ディスタンシングを実施した形で徐々に営業を再開することとなります。ただ、3.11の直後、海外の大物DJがしばらくの間、日本から距離を置くようになったように、新型コロナウイルスが収まっても世界のDJたちがまた世界を駆け回るようになる日は大分先になるでしょう。ナイトクラブが本来の姿に戻れる日があるとしたら、それがいつになるかの目処は全く立ちません。
東京で緊急事態宣言が出された後、都内のナイトクラブ(大バコ、中バコ、小バコ含め)が、運営資金を募るためにクラウドファンディングのキャンペーンを実施しています。
Visionは6月22日現在、募集終了まで残り9日で目標金額の約93%が集まっています。https://camp-fire.jp/projects/view/277992
Contactは既に目標を達成してます。https://camp-fire.jp/en/projects/view/290444
ageHa (Studio Coast)は目標金額の約2倍弱を集めています。https://camp-fire.jp/projects/view/284636
一方でWarp Shinjukuは目標の63%しか達成しないまま、キャンペーンが終了しました。https://camp-fire.jp/projects/view/268526?list=search_result_projects_populer_page3
こういった募金活動をするかたわら、世界中のナイトクラブやDJたちは、ネット上のストリーミングに積極的に取り組むようになりました。近年、インターネット・レイディオやポッドキャストに加えてネット配信が加わることによって、これまで以上にクラブ・ミュージックに気軽に聴くことができるようになりました。ただ、このシリーズで度々紹介してきたように、ロックやポップ、R&Bやジャズとは違って、エレクトロニック・ダンス・ミュージックは“耳"で聴くものでも“目"で楽しむものでもなく、“体"で感じる音楽です。多くの人々に居場所を与え、元気付けてきたリアルなクラブ・カルチャーは、現在“暗闇"と“沈黙"の中にあることは、とても重大な事態です。
このシリーズを通して、エレクトロニック・ダンス・ミュージックの醍醐味や、ナイトクラブという異空間の魅力を少しでも感じていただけたなら、幸いです。