1.プロローグ
前回紹介したブランドやショップは、青山通りとみゆき通りと骨董通りに囲まれたエリアに店舗を構えているところが多いのも特徴です。
このエリアには、プラダやドルチェ&ガッバーナなどのラグジュアリー・ブランドや、イッセイミヤケやコムデギャルソンなどの日本人のデザイナーズ・ブランドのショップが数多く存在しています。こうしたショップの最新作を見て回るだけでも楽しい体験となります。
因みに、このエリアに港区が福祉施設を建設しようとすることには、“ブランディング"という観点からして、疑問が生じます。問題を抱えた方々を助けるための施設がこうした場所に建てられることは、そうした人々に対してのある種の差別もしくは嫌がらせなのではないでしょうか。
何千万円もする輸入車ばかりが走り、20万円もするダウン・ジャケットを売っている店が取り囲んでいるこのエリアのド真中に、明日の生活をも不安な人々を助けるための施設を作るということは、ある種の“迫害"とさえ言えるのではないでしょうか。
今回は、原宿、渋谷にある冬物アウターが有名なブランドについて紹介します。
明治通りと表参道の交差する(ラフォーレ原宿付近の)エリアには、「ノース・フェイス」「パタゴニア」「アークテリクス」などのアウトドア系や、「ナイキ」「アディダス」「ニュー・バランス」「アシックス」「アンダーアーマー」などのスポーツ系のショップが多く集まっています。
こうしたショップのアウターも実に機能的なのですが、これらのブランド/ショップについては、別の機会に触れます。
<SHOP INFO>
ザ・ノース・フェイス 原宿
パタゴニア 東京・渋谷
アークテリクス原宿ブランドストア
アディダス ブランドコアストア 原宿
ニュー・バランス原宿
アシックス原宿フラッグシップ
2.近年流行の革ジャンやアメカジを得意とするショップ
“人工皮革の革ジャン風のジャケット(ビニジャン)"を袖を通さず、肩からかけている若い女性をよく見かけます。こうした女優気取りのファッションを見ると、何だか、寒い気分になるのは、私だけでしょうか。
渋谷と原宿が“繋がるエリア"には、近年流行している“本当の"革ジャンやアメカジを得意とするショップがいくつも点在しているので、こちらも紹介しておきます。
3.アヴィレックス
「アヴィレックス」は、1975年にアメリカ空軍のコントラクターとして設立された、アメリカのミリタリー・ウェア・ブランドです。戦闘機に暖房機能がついていなかった時代において、パイロットの防寒着として“フライト・ジャケット"をアメリカ空軍に数多く納入しました。その後、フレイト・ジャケットだけでなく、ミリタリー・ウェアにアメリカン・トラッドの要素を織り交ぜたラインアップを街着として提案してきました。
レザー・ジャケットとしては、映画『トップガン』でトム・クルーズが着用した羊革の『G-1』、牛革を使用した『A-2』、羊の毛皮をライニングにした『B-3』など、定番のフライト・ジャケットの形をタウンユースにアレンジしたものがオススメです。
他にもアメリカ軍が用いた野戦用ジャケットである“フィールド・ジャケット"の『M-65』も、今ではファショニスタの定番アイテムとなっています。
因みに、ブランド名の由来は、飛行機乗りを意味する“aviator"とラテン語で王様を意味する“rex"を組み合わせた造語であり、“空の王様"を意味します。
<SHOP INFO>
アヴィレックス 原宿
4.ショット
「ショット」は、1913年に創業されたアメリカのレザー・ブランドです。1928年に、バイク乗りを風と転倒時の怪我から守るために、世界で初めて(ボタンではなく)フロント・ジッパーを採用したとされるライダーズ・ジャケット『Perfecto』シリーズを発売しました。現在もメイド・イン・USAにこだわり、米国内で熟練の職人が、主に肉厚なステア・ハイドを使って1品1品を丁寧に作り上げています。
20世紀半ばに発表された『618』と『613』は、バイカーやアウトサイダーのシンボルとなり、今でも人気のダブル・ライダーズ・ジャケットです。(“ダブル"とは、この場合襟が重なるようにデザインされたライダーズ・ジャケットのこと。)特に後者の『613』は、俳優のマーロン・ブランドが映画『乱暴者』(1953年)で着たことによって、革ジャンの代名詞的な存在となりました。肩についている“エポーレット"に星のスタッズが施されていることから、通称“ワン・スター"と呼ばれています。
より都会的で現代的なシルエットを求める方には、スタンド・カラーの『641』がオススメです。ファスナーによって、脱着できるボア・ライナー・ベストのインナーも装備されています。
渋谷の旗艦店は、多くのセレクト・ショップが並ぶ神南エリアにあります。品揃いが豊富な革ジャンのコーナー以外にも、Tシャツやニットウェアなどのカジュアル・ウェアや、バッグやアクセサリー、キッズ・ウェアの展開まであります。また、店内には、リペア・ファクトリーも併設されています。
<SHOP INFO>
ショット グランド ストア 東京
5.ザ・バックドロップ (閉店)
※「ザ・バックドロップ」は2020年に閉店しましたが、こちらのオンラインショップにて販売を続けています。
「ザ・バックドロップ」は、渋谷のファイヤー通りから北谷公園に向かって坂道を少し上がったところにある、40年間営業(かつては、「タワー・レコード」と「パルコ」を結ぶ通りにありました)しているアメカジの聖地ともいえる老舗のショップです。80年代のアメカジ・ブームの時代には、オーダー・メイドのスタジアム・ジャケットをこの店で造ることが、1つのステイタスとなっていました。
アメリカのスポーツウェア・メイカーによる大学やスポーツチームのプリントが施されたTシャツやスウェッツの品揃いが豊富です。秋冬には「バックドロップ」オリジナルのフランネル・シャツ、サーマルや、シャンブレー・シャツもオススメです。
「ヒューイット」のスタジャン、「シエラ・デザイン」のパーカー、「ロスコ」のフライト・ジャケットなど、定番のアメカジのアウターが揃っています。
レザー・ファンにとって一番の目玉は、「バンソン」の革ジャンでしょう。一番スタンダードな『B』タイプ以外に、襟付きの『ENFIELD』、シンプルな『9TJV』、ダブル・ライダーズ・ジャケットの『9C with FUR』など、「バンソン」の代表モデルに別注をかけたものを数多く扱っているのも、このショップの特徴です。中には、人気のあまり「バンソン」の正式なラインナップにも加わったものもあるとのこと。どれも重厚でしっかりした牛革を使用しており、職人の手作業によってアメリカで作られています。初めは固めですが、革が馴染んでくると柔らかくなるため、タイトなフィットをオススメします。
<SHOP INFO>
ザ・バックドロップ
6.アルファ・インダストリーズ
「アルファ・インダストリーズ」は、1959年に創業されたアメリカのアパレル・メイカーです。半世紀以上にわたって高いデザイン性と信頼性を誇るミリタリー・ジャケットをアメリカ軍に納入してきました。現在は民間向けのミリタリー・ウェアやアメカジの製造と販売を中心に行っています。
フライト・ジャケットの定番『MA-1』、襟付きの『CWU-45』、極寒冷地仕様のパーカー『N-3B』などのスタンダードなモデルを、すっきりしたシルエットを好む日本人向けにアレンジした“タイト"サイズで販売しています。これらのナイロン製のジャケットは、保温性や防風性に優れていると同時に、ファッション・アイテムとしての評判が高く、値段もお手頃なので、アメカジ入門者にもオススメの老舗ブランドです。
<SHOP INFO>
アルファ渋谷
7.エピローグ
冬の東京の地下鉄に乗っているととても奇妙な光景を目にします。
極寒地用の20万円位するダウン・ジャケットを着て、靴下を履かずに革靴を履き、汗だくになっている30歳位のアパレル関連と思われる男性や、30万円以上もする高級なダウン・ジャケットを着ているのに、駅のフォームで、コンビニの袋からオニギリを出して一人で食べているかつてはかなりの美人だったと思われる40歳くらいの女性をよく見かけます。
その男女が着ているダウン・ジャケットには、どちらも一目でそのブランドと分かるロゴがついているのが特徴です。
何に対して、どのくらいお金を使うかによって、その人の知性とセンスが表されるものです。
ファッションというものは、外見だけのものではなく、内面の表象ということをよく覚えていて下さい。