1.プロローグ:楽屋オチ
この回は、前回までとは違って、内藤先生がクイズを出す形式で始まりました。「『Pomp and Circumstance』というクラシックの名曲の日本語のタイトルは?」という問題でした。
その答えの『威風堂々』です。この曲は、アメリカ人であれば誰でも聞いたことのある、卒業式に流れる、とても有名な曲です。因みに、“pomp" は「壮麗さ」や「尊大さ」、“circumstance"はこの場合「厳かな催し物」という意味です。音楽大学出身の加藤さんは、曲を聞いたら、すぐ分かったのではないかと思います。
以前取り上げた #StarWarsDayの回もそうでしたが、今回も写真にインパクトがある投稿を多く取り上げたかったので、リアクションを新鮮にするために、加藤さんとヒデさんの2人は、敢えてリハーサルを行わず、リハーサルは僕と佐々木さんに加え、スタッフ2人が加藤さんとヒデさんの代役を務める形で行いました。
打ち合わせの中で、今後は僕についても「リハーサルを無しにすることもあり得る」という話が出ました。僕としては、リハーサルがないと心配で夜も眠れなくなりそうなので、是非とも今後もリハーサルがあるといいなと思っています。
2.アメリカの高校3年生の恒例行事
今週は、アメリカでは卒業式シーズンということで、高校生にとっての一大イヴェントである、フォーマルなファッションでキメるダンス・パーティーの“プロム"と、工夫を凝らして仕掛けるいたずら “プランク"について紹介しました。
アメリカの中学校と高校では年間を通して、いくつかのダンス・パーティーが体育館などで開催されます。しかし、ホテルなどのレセプション・ルームを借りて開催する“プロム"はやはり格別で、卒業式と並ぶ“ハレの場"と言っていいでしょう。
番組でも紹介しましたが、“プロム"への誘い方(もしくは誘われ方)は高校生活の大きな勝負所のひとつです。SNS時代においては、より派手に、より工夫された “演出"が求められるようになっているようです。(これは高校生の勝手な思い込みでしょうけど)タキシードなどの衣装代やリムジーンのレンタル代など、1人あたりが“プロム"にかける金額が年々上昇していると言う統計が出ています。
“プロム"のシーンが登場するアメリカの映画やテレヴィ・ドラマも数多くあります。ケヴィン・ベーコン主演の『フットルース』のハイライトのダンス・シーンも“プロム"が舞台ですし、「スティーヴン・キング」が原作の、ブライアン・デ・パルマ監督によるホラーの名作『キャリー』のクライマックスも、“プロム"の会場で繰り広げられます。
因みに、僕はといえば、高校時代はとてもシャイだったので、ダンス会場では“壁の花”になってしまうことが確実だと思っていたので、 “プロム”にはあまり行く気になれませんでした。しかし同じ“壁の花”仲間から「一大イヴェントだから」と説得され、結局男性2人で行くことにしました。(もちろん、そういう方向の趣味はありませんが。)
“プランク”と言うものには、様々なレベルの“いたずら”があります。クラス全員がパジャマなどのコスチュームを着て学校に来たり、先生が教室に入ってきたら生徒全員が机の方向を変え黒板に背を向けていたりする、悪意のない“いたずら”レベルのものもあれば、校舎や先生の所有物を破損させ、警察沙汰に発展するなど、行動が度を超してしまう場合もあります。そんな中、今週番組で取り上げた、車が校舎に突っ込んだかのように見せたウィスコンシン州の高校生が行った“プランク”は、伝説として残るような最高の“いたずら”でした。
また、アメリカの学生の多くは高校3年の時、プロムと卒業式の間のどこかに、教師陣の暗黙の了解の元に学校をサボる “シニア・スキップ・デイ" と言うものもあります。(学校によってはこれを正式に禁止しているところもあります。)優等生もこの1日ばかりは罰を恐れることなく、登校することを放棄することが許されます。
因みに、僕は小さい頃からジョン・ヒューズ監督の『フェリスはある朝突然に』が大好きで、「いつかは・・・」と憧れていましたが、結局“シニア・スキップ・デイ”の日も、普通通りに授業に出席しました。
3.今週の衣裳について
●男性がまず揃えたいスーツについて
今回は高校生の話でしたが、大学を卒業したり、新しいステージに行く場合は、男性としては、やはりそれに相応しいワードローブを揃えたいところです。今日は、男性が必ずクローゼットに用意したい3着のスーツを紹介します。職業や職場によっては、もっと増やす必要はあるかもしれませんが、普段からスーツを着ない男性も、この3着はマスト・バイと言ってもいいでしょう。
まず1着目は「ネイヴィー・スーツ」です。ネイヴィーは男性のビジネスウェアにおける基本のカラーですが、それには理由があります。この色は、様々なシャツとネクタイの組み合わせにとてもよく合い、また、オフィスでも営業でもフォーマルなイヴェントにも適しています。僕が初めて購入したスーツも、ネイヴィーでした。因みに、番組ではブルー・バックで収録されるので、NGになっています。
2着目に手に入れたいのは「ダーク・グレイのスーツ」です。ライト・グレイですと着る人を選ぶところがありますが、ダーク・グレーはネイヴィーと同じく、様々なシャツとネクタイのコンビネーションに合わせやすい色なのです。
3着目は、ライフスタイルによって、いくつかのオススメがあります。フォーマルなイヴェントに行く機会が多い方は「ブラック・スーツ」、少し目立ちたいと思う方はストライプやプラッドなど、ちょっとした柄が入ったもの、体型がしっかりした方は、「ダブル・スーツ」に挑戦するのもいいかもしれません。
「グローバル・スタイル」のダブル・スーツ
今回は『グローバルスタイル新宿南口店』でオーダーしたチャコール・グレーのピンストライプ・スーツです。縦に細かい線が入っていたので、またモアレでNGが出るかもしれないという覚悟で、スタジオに持って行きましたが、結局問題はなく、オンエアでもモアレが出ていなかったのでひと安心しました。
僕はアメリカ人でありながらも、英国紳士に憧れるところがあるので、今回も裏地は目立たないグレイにし、ボタンも落ち着いた黒にしました。
生地は『マイクロファイバー・スパン』というグローバル・スタイルが出しているエントリー・レベルのものですが、ストレッチ性もあって、動きやすい造りになっています。
スーツというものは「窮屈なもの」という偏見が、以前の僕にはあったのですが、番組が始まるようになって、スーツを着る機会が多くなりましたが、そのどれもがとても着やすく、その堅苦しいイメージが払拭されました。特にダブル・スーツは、気を引き締める効果さえあり、とても気に入っています。
「ファブリック・トウキョウ」の白いシャツ
「ファブリック・トウキョウ」のこのシャツは、形態安定加工がされているので、洗った後にすぐ干してシワを伸ばせば、アイロンをかけなくても綺麗に仕上がります。
ちなみに作り立てのシャツは、特に襟周りがパリッとしていて少し固いので、初めて着る前に一度洗濯することををおすすめします。
カフスのデザインは、カッタウェイ・カフスと呼ばれる、角を斜めにカットした形のシングル・カフスにしてみました。ラウンドのものは柔らかい印象を与えるのに対して、こちらは少しシャープな印象を与えます。
「パラブーツ」のダブル・モンク・シューズ
この靴は、色が濃い目の茶色であることと、細かくて粒の揃った「シボ」(革の表面にできている細かいシワ模様)の温かい表情に惹かれました。
僕の大きいサイズに合うダブルモンクは、パラブーツの黒の「アヴィニョン」より、少しタイトな作りだったので、ワンサイズ大きいものにしました。
「ブルックス・ブラザーズ」のグレーのスラックス
僕はスポーツをするので、足の付け根とヒップが大きいので、スーツのスラックスには、基本的にプリーツを入れるのですが、このパンツは、座ってもストレスのない工夫がされているので、とても気に入っています。
「ブルックス・ブラザーズ」の茶色のベルト
以前は、つく棒がどの小穴にでも通ればいいと思っていましたが、BigBrotherによると、4つ目くらいの小穴に通るのがベスト・サイズとのこと。
茶色い革にゴールドのバックルのものもありましたが、僕にはあまり似合わないので、シルバーのバックルというのもポイントです。(ゴールドは、金髪の白人に似合うとのこと。)
「ゾフ」の茶色いメガネ
ウェリングトン型とは、リムが(場合によって少し丸みのある)台形の形になっていて、上辺が下辺より長いものなのですが、アメリカではこの名前が使われているのは一度もありません。今回の茶色メガネは、言ってみれば「ウェイファーラー・スタイル」をベースに、下辺にもう少し丸みをもたせたもの、と言えばいいのでしょうか。
4.エピローグ:生涯忘れられない歴史の先生からのドッキリ
アメリカにおいては、高校生や大学生が、先生に対して何らかの“いたずら"をすることはとてもよくあることなのです。しかし、今でも鮮明に覚えている“いたずら"は、高校2年の時、アメリカ史の先生が生徒に仕掛けたドッキリです。
その先生は、大学受験を控えていた僕ら生徒を、学校のパソコン室に連れて行き、進学を希望する大学についてのリサーチをさせました。そこへ校長先生が急に現れて、全員に作業を止めるように言いました。その後に、厳しい顔をしたアメリカ史の先生が、ゆっくりと喋り出しました。「学校のパソコンのシステムに不具合が急に発生し、君たちの学年の成績データが消去されてしまった・・・」
生徒は全員唖然となりました。中には、涙を浮かばせた女生徒もいました。僕も頭が真っ白になり、その後の校長先生の説明も、何人かの生徒の抗議も、どこか遠い世界から聞こえてくる声のように思えました。しばらく話し合いがあった後、アメリカ史の先生は、全てがトリックだったことを明かにしました。もちろん校長先生までもが、“ぐる"でした。
その後、成績ばかりにしがみつくことの無意味さや、最悪の事態が起こっても世の中は終わらないこと、パソコンに頼りすぎる社会の賛否についてなど、様々な議論がクラスで話し合われました。先生は僕ら生徒に対して「一杯食わした」のでした(これを英語では “he pulled the wool over our eyes"、つまり「彼は僕らの目をくらまし、現実を見えない状態にした」と言います)。しかし、そのトリックが暴かれた瞬間、「目から鱗」(英語では“the scales fell from our eyes")という感覚であったことを、今でも覚えています。ヤレヤレ。