1.プロローグ
このコラムでは、僕をこれまで育んできた音楽について紹介します。父の影響で幼い頃から聴いてきたクラシック・ロック、90年代に流行っていたブラック・ミュージック、そして東京に拠点を移し、クラブに通うようになって聴くようになったクラブ・ミュージックやBigBrotherの影響で聴くようになったジャズ・フュージョンの名盤をピックアップしました。
2.レッド・ツェッペリン 『マザーシップ』
僕の父は、エルサルバドルでプロのロック・ギタリストとして活動していましたが、より大きな成功を求めて、アメリカに移住しました。
特にレッド・ツェッペリンがお気に入りのようでした。
しかし、ロックの本場の壁は厚く、アメリカでのミュージシャンとしての成功はならず、結局はIBMやIntelのエンジニアになりました。
それでもやっぱり、僕が生まれてからも、週末休みになるとギターを弾いたり、「Cakewalk」というお気に入りのDAW(作曲)ソフトで遊ぶのが息抜きの方法でした。大好物の“サッポロビール"を飲んで少し酔うと、「ヤマハのクラシック・ギター」で『天国の階段』を弾いていました。
3.ボーイズIIメン 『II』
僕が初めて買ったCDは、1994年にリリースされたボーイズ・II・メンの『II』というアルバムでした。
このCDに収録されている先行シングル、『I’ll Make Love to You』は、92年に発表された、『End of the Road』と並んで彼らの代表曲となりました。1曲目の『Thank You』は個人的に大好きな曲です。
当時は、スィートな彼らのハーモニーがとても気に入っていたました。でもUCLA卒業後、日本でDJをするようになって、渋谷の『マンハッタン・レコード』で彼らの曲のリミックス・エディションを入手し、それをプレイしているうちに、ヴォーカルではなく、R&Bにおけるプロデューサーの存在意義を感じるようになりました。
同じメロディーでも、ミキサーやプロデューサーが違うと、全く違う音楽になることに気づきました。
同時に『II』のプロデューサーであった、ベイビーフェイスとジャム&ルイスの偉大さを理解できるようになりました。
4.サンタナ 『ロータスの伝説』
カルロス・サンタナというギタリストは、ルーツをラテン・アメリカに持つという点で、以前より関心があるミュージシャンです。
しかし、本当の意味でサンタナの魅力を感じたのは、この3枚組レコードを聴いた時でした。
最新のデジタル・リマスターを施した日本のライブ音源を重量盤のレコードにプレスした音は、その時代のその会場の空気さえ再現しているようでした。
また、このアルバムのもう一つの特徴は、日本を代表するアーティストの横尾忠則による22面体というジャケットにあります。
今や、「ポール・リード・スミス」(アメリカのギターメーカー)を使用する代表的なギタリストであるサンタナは、当時は、日本の『ヤマハのSG-175』というモデルをプレイしていたことも注目すべきです。
ラテン・アメリカとカリフォルニアのサンフランシスコにルーツを持ち、日本の文化と融合するという点において、カルロス・サンタナは、僕の良き先輩のように感じています。
5.ジョン・ディグウィード 『ライヴ・イン・ブルックリン アウトプットNYC』
サシャ『リフラクテッド:ライヴ』
『ULTRA JAPAN 2017』でも体感することのできたサシャとジョン・ディグウィードのバック・トゥ・バック(交互にプレイするスタイル)によるプログレッシクブ・ハウスは、僕の人生に大きな影響を与えました。
カルフォルニアにいた頃は、ナイトクラブにはあまり興味がなかったです。当時の僕のダンス・ミュージックに対する評価は低く、僕のような四角張った人にはカリフォルニアのナイトライフは治安が悪すぎるように思えたからです。でも上智大学に留学した時に、友達に連れて行かれた渋谷『CLUB PHAZON - WOMB MOBILE PROJECT』で彼らのプレイを体験することで、一夜にしてクラブミュージックの虜となってしまいました。
完全にハマってしまった僕はその結果、大学卒業後も、通訳・翻訳の仕事の傍ら、DJやDTM関連の仕事も手伝うようになりました。
最近では、MP3でもライブ音源を入手しやすくなり、様々な場所(会場)での彼らのプレイを簡単に聴けるようになりました。
だが結局は、彼らのサウンドを堪能するには最低限CDクオリティは欲しいです。ハイレゾ音源があればさらに深く楽しむことができます。
6.ウェザー・リポート『8:30』
ジャコ・パストリアス『ジャコ・パストリアス』
DJを始めるようになり、レコードを聴くようになると、その音の魅力にとりつかれるようになりました。
CDなどデジタルの音源とは違った、人間らしさを感じさせてくれることに驚きを感じます。
また、レコードの楽しみの一つは、針の違いを楽しめる点にもあります。
ハウスなどの四つ打ちには、「オルトフォン」の『ナイトクラブ』を使い、R&Bには「シュアー」の『M44G』を使うなどといった楽しみ方ができます。
現在では、DJ向けの「テクニクス」のターンテーブルではなく、「デノン」のピュア・オーディオ用のターンテーブル『DP-500M』に「オーディオテクニカ」の『AT33EV』という針をつけて、ジャズを楽しんでいます。
特にお気に入りなのが、ウェザーリポートとそのベーシストだったジャコ・パストリアスです。
できることならば、お気に入りの青山にあるブルーノート東京で絶頂期のジャコ・パストリアスのライブを聴いてみたかったです。
7.エピローグ
日本人は、ヤマハ、パイオニア、テクニクスなど、世界でとても評価の高い音響製品を作り出せるのに、どうしてサウンド・エンジニアリングのクオリティがこんなに、低いのかといつもBig Brotherは、嘆いています。
ナイト・クラブのPAなんて、論外のクオリティだし、コンサートやCDの音質も、とてもプロのものとは思えない。
それは、きっと子供の頃から、いい音というものを聴いたことがないことが理由なのだろうと言っています。欧米のサウンド・エンジニアは、物心つく前から、生のクラシックなどを聴いていた連中がプロになるのだけど、日本の場合は、ベテランの人であれば、高校生まで、ラジカセのシャカシャカした音しか聞いたことがなく、若手の人は、MP3音源のスマホ+スマホに初めから付いているようなイアフォンでしか音楽を聞いてこなかったような人しか、いないからだろうとBig Brotherは、言っています。
いい音楽とは、何かということももちろん大切ですが、いい音質とは何かということも考えなくてはならないですよね。
いい音楽をいい音質で聴くということは、人生の大切な悦びの一つだから、とのこと。