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カリフォルニア・サウンドを代表するイーグルスと『ホテル・カリフォルニア』のメッセージ
  - ウェスト・コースト・ロック入門 (1)
  - ドン・ヘンリー/ドン・フェルダー/ジョー・ウォルシュ/グレン・フライ | MUSIC & PARTIES #008
2021/08/09 #008

カリフォルニア・サウンドを代表するイーグルスと『ホテル・カリフォルニア』のメッセージ
- ウェスト・コースト・ロック入門 (1)
- ドン・ヘンリー/ドン・フェルダー/ジョー・ウォルシュ/グレン・フライ

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.イーグルスとカリフォルニア・サウンド

カリフォルニアの音楽で、まず最初に語らなければならいのは、「イーグルス」、しかも、歴史的名盤『ホテル・カルフォルニア』についてではないでしょうか。

イーグルスというバンドは、70年代のカリフォルニア・サウンドであるいわゆる「ウェスト・コースト・ロック」の中心といえる存在です。そもそもは、リンダ・ロンシュタッドのバックバンドとして、結成されたのですが、その後、ジャクソン・ブラウン(『テイク・イット・イージ』)やJ・D・サウザー(『ニュー・キッド・イン・タウン』)などの協力を得て、ロックバンドとして一定の成功を収めます。

イーグルスの成功の頂点は、1976年に発表されたアルバム、『ホテル・カルフォルニア』によって迎えることとなります。

1曲目の『ホテル・カルフォルニア』だけではなく、コンセプト・アルバムとして、とても高い完成度を持ち、70年代のウェスト・コースト・ロックを代表する作品となってしまいます。


2.『ホテル・カリフォルニア』の魅力

タイトル曲に話を戻しますと、イントロのメロディ、ドラマーのドン・ヘンリーのリード・ヴォーカル、ドン・フェルダー、ジョー・ウォルシュの2人によるリード・ギター・ソロとその魅力は、筆舌に尽くしがたいものがあります。

それに加えて、僕が興味を持ったのは、その「ホテル・カルフォルニア」の
歌詞です。CDでは分かりにくいのですが、レコードのアルバムを見開くと右側の端にこの曲の歌詞だけがクレジットされています。

日本では、レコードに歌詞カード(英語の歌詞と日本語訳)がつくことが当たり前だったのですが、基本的にアメリカでは、レコードでもCDでも歌詞がついてくることはありません。なので、彼らがこの曲の歌詞に特に思い入れがあったことは確かなことです。

この曲は、ギブソンのSGをベースに、12弦ギターと6弦ギターをジョイントしたダブルネックギターEDS-1275を使った、幻想的なアルペジオから始まります。“非現実感"なイメージが漂う曲です。おそらくは、マリファナを使用している感じを表現しているのではないでしょうか。ちなみにEDS-1275は元々、レッド・ツェッペリンが『天国への階段』をライブで演奏するときにジミー・ペイジが使用していたことで有名になったギターです。

歌詞全体の内容としては、セックスやドラックがはびこる商業主義的になりすぎたレコード/音楽業界に対して、反発を表明しているのではないかと、僕は解釈しています。


3.『ホテル・カリフォルニア』の歌詞

特に気になる歌詞が2か所あります。1か所は、

So I called up the Captain
“Please bring me my wine”
He said, “We haven’t had that spirit here
Since nineteen sixty-nine”
私が、キャプテン(ボーイ長)に
「ワイン(醸造酒)を持ってきてくれ」と頼むと
すると彼は、「ここには1969年以来
スピリッツ(蒸留酒)も置いていないのですが」と言った









という部分です。

1969年という年は、ロックの歴史にとってとても意味深い年です。1月にビートルズの最後のライヴ「ルーフトップ・コンサート」が行われ、秋には事実上、解散をしています(正式な解散発表は1970年です)。また、ヒッピー・ムーブメントの頂点となった「ウッドストック・フェスティバル」が開かれた年であり、一方「オルタモント・フリーコンサート」の会場では最終的に大混乱と暴動が起こり、「オルタモントの悲劇」が起こった年でもあります。社会的にもニクソンが大統領になり、泥沼化したベトナム戦争をどうにか集結させようとベトナム化政策を計画しました。

また、spritは、もちろんお酒という意味と、魂という意味のダブルミーニングでしょう。

もう1か所は、

We are programmed to receive,
You can check out anytime you like… but you can never leave “私たちは、受け入れるようにプログラムされているんです 好きな時にいつでもチェックアウトはできますが・・・ ここから立ち去ることはできないのです

という箇所です。

歌詞としては、receiveとleaveが脚韻を踏んでいるのですが、ここで問題なのは、何を受け取れるのか(receive)、チェックアウト(check out)と立ち去る(leave)の何が違うのかです。

ここの部分を含め、この曲は多くの方々が、様々な解釈をしていますが、僕も1つの考えを提案したいと思います。

これは、現代の資本主義・民主主義社会のことを言っているのではないかということです。つまり意訳をするならば、

“私たちは、高度に発達した民主主義というシステムを個人の立場に関係なく、自動的に受け入れるように洗脳されています"

“お金さえ払えば、形式的に物質的な自由は手に入れることができますが、本当の意味での自由は、手に入れることはできないのです"

というのはどうでしょうか。

この歌詞の後に、あの有名なギターソロが続くのです。

最後にイーグルズが好きな人へのオススメです。ホテル・カルフォルニアのリード・ヴォーカルをとったドン・ヘンリーのソロと前述のリンダ・ロンシュタッドに曲を提供していたカーラ・ボノフの作品もとてもいいので是非聴いてみてください。


4.エピローグ

BigBrotherによると問題の歌詞の後に続くツイン・リードギターのソロは、ロック・ギターの1つの頂点といえるものだそうです。

このソロを作ったドン・フェルダーがレコードではギブソンの『レスポール』(ライブでは、ダブルネックのEDS-1275)を使い、ジョー・ウォルシュが
フェンダーの『テレキャスター』を弾くという、それぞれのギターの特色を生かしたコントラストは、当時のギター・キッズにとっては、夢のようなコラボレーションだったそうです。

ギブソンには、ハムバッカーと呼ばれるピックアップが付いており、ファットで甘い音がします。

一方、フェンダーのテレキャスターには、シングルコイルのピックアップが付いており、パンチのある抜けのいい音がします。

近年は、ギブソンやフェンダーの経営があまりうまく行かない程、ギター・プレイヤーが減っているというニュースをWEBで見つけたBigBrotherは、とても悲しそうにしていました。

BigBrotherが高校生の時の文化祭で『ホテル・カルフォルニア』を演奏することとなり、先輩のプロのスタジオ・ミュージシャンから当時の日本には数本しか入ってなかったESD-1275を借りて演奏したことは、とてもいい思い出になっているとのこと。

『ホテル・カルフォルニア』はレコードでは、フェイドアウトになっているので、ライブでは、どういうエンディングにしようか、バンドのメンバーとかなりモメたのですが、なんとか決着がついたそうです。

数年後、イーグルスのライブの映像をやっとのことで入手し、チェックしたところ、BigBrother達のアイディアとほぼ同じであったので、納得したとのこと。

このことは、当時とても自慢だったそうです。


MUSIC & PARTIES #008

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