1.プロローグ
僕は、29歳の時に初めてテニスをしました。今年で4年目になります。以前より、僕の体型はテニスに向いているから、始めるように誘われていました。(因みに身長は、187cm、体重は4年前は92kg→現在87kgです。)確かに、世界のトップレベルのテニス選手とほぼ同じです。(例えば、ロジャー・フェデラー選手は、身長 185cm、体重85kgです)
Big Brotherは、子供の頃から本格的にテニスを習ってきていて、20歳代前半は、ハワイのリゾートでコーチをするぐらいのレベルです。NTRPのガイドラインでは、僕は現在3.5で、Big Brotherは5.5です。
Big Brotherによれば、4年で3.5はとても早いペースで上達していると言ってくれています。(もちろん、“それはコーチがいいからだけれど"がつきますが。)
中学からテニスを始めたとすれば、高1と同じということになりますが、確かにそれよりも上達したと僕自身も感じています。
先日、カルフォルニアで中・高6年間テニス部に所属していて、大学でもテニスをしていた友人と横浜のテニス・クラブで試合をする機会がありましがが、その時は6-2、6-1で完勝することができました。
さて、今回は、こんな僕がBig Brotherに習ってきた、テニスについての薀蓄を書きたいと思います。
2.いつテニスを始めるのか。どのレベルを目指すのか。
テニスを始めるにあたって、どんな用具を選んでいいのか、わからない人が多いと思います。(僕自身もそうでした。)
BigBrotherは、どんなレベルまで上達したいかと聞いてきました。週1~2回プレイして、普通の生活(特にトレーニングをしない)を送り、テニスサークル出身の友人(男・女)と楽しく、テニスをするレベルなのか、トーナメントに出場して知らない相手と戦うようなレベルを目指すのか聞いてきました。
僕は当然、“2020年の東京オリンピックの出場を目指します"と断言しました。“それなら、俺がテニスを教えてやる。"とBig Brotherは言ってくれました。
それから本当に、ほぼ毎日、トレーニング付きのテニス・レッスンが始まりました。
テニスを始めるにあたって、一番大切なポイントは、その人の年齢、体力、体格、そして目指すレベルを考えることです。
3.ジュニア選手の場合
ここからは、コンペティター(競技者)になるための訓練についてお話しします。幼稚園、小学生でテニスを始めるのであれば、身体にあったKIDS用のラケットを使って、KIDSのためのテニス・スクールのレッスンを受けるべきです。
親が教えると、ついつい感情的になり、怒って教えてしまうので、テニスが嫌いになってしまいます。
それに加えて、テニス以外のスポーツ、野球、サッカー、水泳、体操なども加えたほうがバランスの良い身体と運動神経を身につけられます。
硬式テニスのコンペティターを目指して、中学生から始めるのであれば、絶対に軟式テニスは、やらないこと。硬式テニス(以下テニス)と軟式テニス(以下ソフト・テニス)は、似て非なるものなので、ソフト・テニス独特の癖がついてしまい、テニスの正しいスイングができなくなります。
具体的には、ソフト・テニスは、肩、肘、手首をしなるように“振り抜く"のですが、テニスは、腰と下半身で“球を潰す"というように打つので、全く違う運動になります。
中学生は、急速に成長する時期なので、一概には言いにくいのですが、コンペティターを目指すのであれば、俗に“黄金スペック"と呼ばれる100in²、
300gの中級のラケットを購入することをオススメします。
女性であれば、振り抜きやすいYONEX、男性であればしっかり振れるPRINCEなどが良いでしょう。
ここで大切なことは、必ず違うメーカーやタイプの違うラケットを2本購入
することです。
テニスのラケットというのは、メーカー/グレイドによって全く違う特性を持っているので、その違いを感じるためにも必ず違う2本のラケットを用意してください。
ストリングスについては、中学生レベルでは、コストパフォーマンスの良い、“モノフィラメント"のストリングスを45ポンド以下で張ってください。ストリングは切れなくても、できれば3か月、長くても6か月に1度は張り替えてください。
その際に、様々なメーカーの様々なモデルの様々なゲージ(太さ)のものを同じテンションで2本とも張ってみてください。ストリングスの違いがわかるようになります。
また、コンペティター(選手)を目指すのであれば、毎年2本ずつ新しいラケットにグレイド・アップすることも必要でしょう。
ラケットは、表面上は全く変化していなくても確実に毎日、劣化していくので、ケガの防止のためにもストリングス、ラケットの交換は、早めに行うのが上達の秘訣です。(グリップテープは、毎週1回以上交換してください。)
●オススメのモノ・フィラメントのストリングス
4.高校からテニスを始める人のための用具選び
高校生になって、初めてテニスをするならば、中級レベルの重さの違うラケットを2つ使用することをオススメします。
中学まで本格的にスポーツ(野球とかサッカーなど)をやっていた人や中学からテニスをしていた人は、上級者用の違うメーカー/シリーズのラケットを3~4本購入することをオススメします。
身体も成長し、自分のテニスのスタイルもできてくるので、より自分にあったラケットを見つけるためにも、友達と交換したりして、できるだけ多くの種類のラケットを使ってみることをオススメします。
いろいろなラケットを使うことで、スイングのクセもなくなります。
ストリングスは、成長期の身体のことを考え、少し値段は張りますが、“マルチ"のものを42~47ポンドのテンションで張ることをオススメします。
毎日4時間以上練習するでしょうから、ストリングスは、1ヶ月~3か月の間に必ず交換してください。劣化して飛ばなくなったストリングスで無理矢理打っていると手首、肘、肩を怪我します。
コンペティターを目指すのであれば、全国大会レベルの高校以外に通っているのでしたら、有名なテニス・スクールに入ることをオススメします。できれば、ジュニア育成に実績のあるところが望ましいです。
●オススメのマルチのストリングス
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5.テニスが上達するには、お金がかかる
テニスは、他のスポーツに比べて、とてもとてもお金のかかることを覚えておいてください。(ゴルフは、さらにお金がかかります)
サッカーやバスケット、バレーボールならば、シューズとボールがあればできますし、野球ならば、グローブがやや高いものの、グローブは5〜10年使用できます。
しかし、テニスは、ラケットが1本2〜4万円もしますし、ストリングスも年間1〜2万円は、かかります。シューズも消耗が激しいので、他のスポーツより買い替えが早いです。それに、ボールにもとてもお金がかかります。(かけるべきです)
プロの試合では、7〜9ゲーム毎(30〜40分)に6〜8個のボールを交換するぐらい、消耗しやすいのです。(大会によって異なる)
上級者であれば、3〜4球のボールを2時間のハード・コートでの練習で使いきってしまいます。オムニでも3〜4時間でボコボコになります。)
ボコボコのボールを打っていると、無理な力が入ったスイングになるばかりではなく、腕の故障の原因にもなります。
また、コストパフォーマンスのことを考えて、ノンプレッシャーボールを使っている方もいますが、これも故障の原因になります。
ノンプレッシャーボールは、中級者への“球出し”と(重さをあえて感じるための)“サーブ”の練習には、向いていますが、打ち合い(ストローク)をするためには重すぎます。
ボールについては、世界中の試合の標準球でもある「ウィルソン」のテニスボール『CHAMPIONSHIP EXTRA DUTY』をオススメします。(ちなみにアメリカではペンの『CHAMPIONSHIP EXTRA DUTY』が売上ナンバーワンのようです。)日本国内の草大会だと、『ダンロップ』の「コンフォート」が人気です。
さらに加えれば、本当に上達するには、良いコーチをつけなければなりません。
テニスにおけるコーチの重要性は、初心者からトップ・プロまで、とても高いのです。あの錦織選手もそのことを証明してくれています。小学生の早い段階から、松岡修造に見出され、さらに中学生の時点でフロリダに移住しIMGに入ることで、世界的な選手に成長しました。
しかも、上位になるためには、元世界2位のチャン・コーチの教えが不可欠でした。
このように残念ながら、テニスが上達するには、本当にお金がかかることを覚えておいてください。
6.大学生からテニスを本格的に始める人のために
トップ・プロの世界では、20歳ぐらいまでに才能のピークが現れます。
そのため、ヨーロッパのテニスの世界ではトップ・プロはあまり大学に進学しません。日本とアメリカは、大学レベルでのテニスがとても盛んです。大学からテニスを始めて、プロ・ランカーレベルになる人もいないわけではありません。とはいえ、世界のトップ・プロを目指すのであれば、大学デビューの人は諦めてください。
さて、小・中・高とテニスをしてきた人であれば、プロレベルのラケットを1種に決め、4~10本の重さの少し違うものを使うことをオススメします。
ストリングスは、“ポリエステル"か“ポリ"と“マルチ"の“ハイブリット"をオススメします。
ストリングスは、できるだけ多くのメーカーのものを試してみてください。特にポリは、毎年新しいものが出てくるので、いろいろなパターンで試してみてください。
テニスとゴルフが欧米の富裕層に人気があるのは、体力やスキルだけではなく、テニスではラケットやストリングスなどの関連の知識や経験が結果に大きく影響するからなのです。ゴルフもボールやクラブの知識がスコアに大きく影響します。
いろいろなラケットに、いろいろなストリングスを張る時間とお金の余裕のある人が、いい結果を出せるのです。
トップ・プロの世界でも、ラケットとストリングスがあっているかどうかで、大きく試合結果が異なり、ランキングにも大きく影響します。
フェデラーとナダルが長い期間、王者に君臨できているのは、もちろん本人たちの才能と努力によるものなのですが、彼らのプレイスタイルにあったラケットとストリングスがあることも大きく影響しています。
●オススメのポリエステルのストリングス
7.社会人から本格的にテニスを始める人のために
日本では、テニスに限らず、大学までは体育会でスポーツをしていた人が、社会人になると全くやめてしまう人が多くいます。
一方、アメリカでは、貧しい家に生まれたために学生の間は、スポーツをしなかった人が、自分で働いてお金を稼げるようになってから、スポーツを始める人が大勢います。
このことは、アメリカ人のとても良いところだと思っています。
さて、社会人になってからテニスを始める人にとって、もちろん学生にも言えることなのですが、第1のアドバイスは、サーフェイスにあった“靴"を選ぶことです。
人工芝に向いているオムニ用シューズは、“止まりやすい"アウト・ソール、ハード・コート用のシューズは、“少し滑る"アウト・ソールが付いており、アウト・ソールとサーフェイスが合っていないと上達しないだけではなく、怪我の原因ともなります。
地域によっては、クレイ・コートのところもあるでしょうが、クレイにはクレイ用のシューズを用意してください。
また、自宅からテニス・コートに行くまでの間も、テニス・シューズを履いている人をよく見かけますが、テニス・シューズは、ランニングやウォーキングのシューズに比べて、ヒールのクッションが弱く、ソールもフラットなので、テニス・シューズで長く歩くと膝と腰を痛めます。(因みに巷で大人気の「アディダス」の『スタンスミス』は、クレイ用のテニス・シューズとして作られたものです。)
社会人になってからでも、本格的にテニスを始めるならば、ラケットは、上級者向けかプロ用のラケットをオススメします。
ただし、ストリングスは、“マルチ"から初めて、体力がついてきてから、“ポリ"または、“ポリ×マルチ"のハイブリットを試してみてください。
もちろんランニングやウェイト・トレーニングなど、テニス以外のプラクティスも必要となりますが、僕のように、30歳近くになってからでもテニスを始めることは可能です。
社会人になってから、始める人は、特に1時間1万円以上のプロのレッスンを受けることをオススメします。そうすることで、怪我なく、上達する可能性が高くなります。
次回以降、有名ラケットメーカーの違いとストリングスについてお話しします。お楽しみに。
●オススメのハイブリット・ストリングス(マルチ×ポリ)
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8.エピローグ
日本人のテニス・プレイヤーの数は、世界的に見てもとても多いのに、優秀な選手が少ないのが現状。
その理由は明白で、コーチングのシステムが海外に比べて、とても貧弱だからです。日本人のテニス・プレイヤーは、学校の“部活"からスタートすることが多く、顧問の先生や先輩といったいわゆるテニスを教えるアマチュアが行っています。テニス・スクールのコーチについても、プロフェッショナルなコーチとしての教育を受けていない、テニス・サークルの大学生レベルの人が教えていることがほとんどです。
これでは、うまくなるどころか、下手になってしまいます。
日本人でも世界レベルで活躍している選手の多くは、早い段階から海外のスクールで鍛えられた選手ばかりです。
海外のテニス・スクールでは、ジュニア・レベルでは、まずテニスの楽しさを教えます。決して、怒られることはありません。一方日本では、ダメ出しばかりで、泣いてテニスをしている子供さえ見かけます。
技術的には、日本のプレイヤーは、“ボールをこする(スピンをかける)"ことにばかりを気にしています。ネットのテニス自慢の人たちのブログを読んでいると、何時間でストリングスを切った、というような話ばかりです。
数時間でストリングスが切れるというのは、明らかに打ち方が間違っているからです。プロがストリングスを切るのは、ミスショットを多くしたか、予めなんらかのトラブルがストリングスにあった時です。
特にナダル選手が上位に上がってくるようになって、その傾向が強くなってきています。
しかし、テニスで最も重要なことは、“球を潰す"ことなのです。“球を潰す"には、体重移動を正確に行い、ラケットのスイート・スポットで捉えなくてはなりません。
しかし、日本人のプレイヤーの多くは、プロ・レベルでもそのことができていません。
ダニエル太郎選手や杉田祐一選手も一昨年までは、右足のかかとに体重が残っており、こすり上げるような打ち方をしていました。(ちなみに二人とも右利きです。)
しかし、昨年ぐらいからヒッティング・ポイントが前になり、“球を潰す"ことができるようになり、この結果、ランキングも上昇しています。
海外のテニス・スクールでは、“球を潰す"ことを会得するための様々なレッスンをジュニアの時代から行います。
この体重移動によって“球を潰す"という技術は、野球やゴルフとも共通していると思います。
なので、特に小学生・中学生には、テニスだけではなく、様々なスポーツを経験させてあげてください。