1.プロローグ
世界のプロのトーナメント・ツアーで活躍しているプロのプレイヤーのほとんどはWilson、HEAD、Babolat、YONEXの4社のラケットを使用しています。
その理由は、ラケットのクオリティが高いことと、選手への金銭を含めたサポート・システムが優れているからです。
テニス・クラブ・レヴェルではPrinceやDunlop、Tecnifibreなどのラケットも人気です。今回から数回に渡ってWilson、HEAD、Babolat、YONEX、Princeの各メイカーのコンセプトの違い、様々なモデルの違いについて説明していきたいと思います。
2.オーソドックスなテニス・スタイルに向いているWilsonのラケット
Wilsonのテニスラケットは、テニスの歴史そのものと言っても過言ではありません。70年代にはジミー・コナーズ選手、80年代にはステファン・エドベリ選手、90年代にはピート・サンプラス選手、00年代以降はロジャー・フェデラー選手がWilsonのラケットを使用しています。
女子ツアーでは、かつてはクリス・エヴァート選手、シュテフィ・グラフ選手、現在ではウィリアムズ姉妹(ヴィーナスとセリーナがWilsonラケットを愛用しています。
Wilsonのラケットは、伝統の“ボックス型"のPro Staffが代表するように、オーソドックスなテニス・スタイルを好むプレイヤーに合っています。
ボディー・ターンでしっかりと面を作り、スウィートスポットで正確にボールをとらえ、フラット系の球筋でコースをコントロールするようなプレイヤーに合っていると思います。
近年は、幅広いプレイヤーが使いやすいBladeや、パワーのあるBurn、振り抜きの良いUltraなどのラインも高い人気を誇っています。
キッズ、ジュニア用からヴェテラン向けまで、幅広いラインアップがあることも、Wilsonの強みといえるでしょう。
3.Pro Staffシリーズ
97平方インチと、現在ラケットの中ではかなりコンパクトなフェイス面を持ち、スウィートスポットは、とても狭いのですが、タッチとコントロールに関しては、最高レヴェルのクォリティを持っています。
本気でテニスを上達したいのであれば、Pro Staff 97 Counterveil (315 g)を一度は手にすることをオススメします。Counterveil (カウンターヴェイル)とはNASA公認の画期的な素材であり、振動を除去することでプレイヤーの筋肉疲労を軽減するとされています。
上級者であれば、ロジャー・フェデラー選手が使用しているPro Staff RF 97 Autograph (340 g)にナチュラル・ストリングスを張って使用することをオススメします。是非一度打つべき価値があるラケットです。
多くのプロが使用しているラケットは、市販のモデルとは全く違うスペックのものなのですが、この Pro Staff RF 97 Autographに関しては、フェデラー選手が使用しているものと全く同じなので、プロがどのようなラケットを使っているのかもとてもよく分かります。
グリゴール・ディミトロフ選手が使用していた、現在では入手がやや難しくなっている Pro Staff 97Sもとても良いラケットだと思っています。Pro Staffらしいコントロール性を持ちながら、“Sラケ"らしく、パワーとスピン性も高く、幅広いテニス・プレイヤーにオススメです。
4.Blade シリーズ
Bladeシリーズは、Pro Staffシリーズよりも幅広いプレイヤーをターゲットにしています。スウィートスポットもやや広く、スピンもかかりやすくなっています。
重さやストリング・パターンもヴァリエイションが多く、選択肢の幅も広くなっています。
ダヴィド・ゴファン選手やミロシュ・ラオニッチ選手が使用しているとされている(※実際には、市販のスペックとは全く異なります。ウェイトを重く、剛性も高くなっています)Blade 98 (18×20) Counterveilは、中上級者にベストなラケットの1本といえるでしょう。
Blade 98 (16×18) Counterveilは、よりスピンがかけやすく、ボールもよく飛ぶので、初中級者のレヴェルのプレイヤーでも使える一本です。
本格的にプレイしたい女性やダブルス・プレイヤーには、セリーナ・ウィリアムズの使用しているBlade SW104 Autograph Counterveilもオススメです。パワーとコントロール性のバランスが良く、Counterveilになったことで、振動も軽減されているので、手首やひじへの負担も少なくなっています。
5.Burnシリーズ
錦織選手がかつて使用していたことで知られるBurnシリーズは、伝統的なWilson Pro Staff や Bladeのシリーズとは全く異なり、パワー、スピード、スピンに優れた新しい時代のラケットです。
Pro StaffやBladeはやや柔らかめのビームを用いることで、独特のタッチを出しているのに対し、Burnは硬くて軽い素材を用いることで、トップ・スピン・プレイヤーにとって、ベストなツールと言えます。
Burnシリーズには、日本のみで販売されているモデルもあります。錦織選手がジュニア時代から使用していたトップ・ヘヴィー(ハンマーヘッド)のBurn 95J Counterveilも、体格の小さな日本人の高校生プレイヤーには1つの選択肢かもしれません。
Burn 100S は、よりスピン性能が高く、“Sラケ"の良い部分がとてもよくわかるモデルです。Babolatのブラストのような角々のスピン系ガットではなく、TecnifibreのRED CODE WAXのようなスナップ・バックが大きくなるストリングスと合わせることで、トップ・スピン・プレイヤーにとっては最高の武器となります。
現在Burn 100Sはツアーでいわゆる“ネックス・ジェン"と呼ばれる若手選手の1人であるルブレヴ選手や、2018年のWTA女子ツアー・ファイナルズで優勝したエリナ・スビトリナ選手が使用しています。
6.Ultra シリーズ
Ultraはとても振り抜きやすいラケットです。ネット・プレイでも扱いやすく、幅広いプレイヤーが使用できるシリーズです。
パワーのアシストがあり、スピンもとてもよくかかります。フェイスの面積やウェイトのヴェリエイションも多く、初心者、女性、シニア/ヴェテラン、ダブルス・プレイヤーなどにオススメの一本です。
ここ数年手首の怪我に悩まされている錦織選手は現在、Ultra 95 Counterveil を使用しています。スペックとしては、錦織選手が以前使っていたBurn 95 Counterveilとほぼ同じなのですが、より柔らかなタッチになっています。Counterveilのメリットが最大限に発揮されているラケットではないでしょうか。多少のミス・ショットをしても手首の負担がミニマムになっています。
Ultra Tourは、ガエル・モンフィス選手やATPの100位前後の選手、マディソン・キーズ選手などの女子選手にも人気のモデルで、プロを目指す高校生や体育会の大学生にもオススメの一本です。(なんども繰り返すようですが、プロが使用するモデルは市販のモデルとはスペックが全く異なることが多いです。)
7.厚ラケ/ジュニア・ラケット
そのほかにもWilsonは、いわゆるヴェテラン/シニア向けの“厚ラケ"のTriadシリーズや、ジュニア用のラケットが充実しており、レヴェル、体力に合わせてベストなラケットを選べるようになっています。
8.エピローグ
ウィルソン社はテニスの他にもアメフト、ベイスボール、バスケットボール、サッカー、バドミントン、ヴォレーボールなど幅広いスポーツの用品を生産しています。中でも、映画『キャスト・アウェイ』で、無人島に漂着したトム・ハンクスの唯一の話し相手となったウィルソン製のヴォレーボールのイメージが強いのではないでしょうか。
今後数回に分けて、私BigBrotherがHEAD、Babolat、YONEX、Princeの各メイカーのコンセプトの違い、様々なモデルの違いについて説明していきます。お楽しみに!