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有力ラケット・メイカーの違い (4)
  - 世界的に認められたメイド・イン・ジャパンの「ヨネックス | SPORTS & CULTURE #008
Photo: ©RendezVous
2021/09/27 #008

有力ラケット・メイカーの違い (4)
- 世界的に認められたメイド・イン・ジャパンの「ヨネックス

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BigBrother
プランナー / エディター / イヴェント・オーガナイザー

目次


1.プロローグ

『有力ラケット・メイカーの人気モデルの違い』シリーズでは、これまでアメリカの「ウイルソン」、オランダの「ヘッド」、フランスの「バボラ」を紹介してきました。今回は、若手選手の支援に力を入れている日本の「ヨネックス」です。


2.日本を代表するラケット・メイカー「ヨネックス」

「ヨネックス」は、大坂なおみ選手などの女子選手を中心に世界のトップ・プレイヤーに支持されてきた日本を代表するラケット・メイカーです。(「ヨネックス」は、テニス・ラケット以外にもソフト・テニスやバドミントンのラケットやゴルフのクラブなどの分野でも優れた製品をリリースしています。)

80年代にはマルチナ・ナブラチロワ選手、90年代にはモニカ・セレシュ選手、00年代にはマルチナ・ヒンギス選手、日本人としては、伊達公子選手が「ヨネックス」のラケットを使用していたことで広く知られています。

「ヨネックス」は、国内外のジュニア選手へのサポートも積極的に行なっており、近年は、世界のトップ・レヴェルの男子選手も「ヨネックス」のラケットを使用するようになってきています。

その代表は、『VCORE PRO 97』を使っているスタン・ヴァヴリンカ選手です。その他には、ニック・キリオス選手が『EZONE 98』を使っており、このラケットは、大坂なおみ選手も使用しています。

この他、女子の有力選手であるアンゲリク・ケルバー選手が『VCORE 100』を使用しています。

プロ・モデルだけでなく、「ヨネックス」は、ジュニアや初・中級者向けのラケットも数多くラインアップしています。

「ヨネックス」のラケットは、独自の台形のフレーム(アイソメトリック)にすることで、とても広いスウィート・スポットを実現しています。振り抜き感がよく、女子選手に人気があることがわかります。


3.イーゾーン 98

重量305 gの『EZONE 98』は、より重いラケットにあるような安定感はないのですが、反応性とハンドリングが優れています。とても広いスウィート・スポットを持ち、コントロール性能が良く、パワーのあるこのラケットは、力一杯振り切る選手にとって最高の武器となります。

ニック・キリオス選手がいかにも簡単(“EZ")そうにパワーを生み出すのも、大坂なおみ選手が相手を圧倒するパワー・テニスができるのも、このラケットの力を最大限に引き出せているからなのでしょう。

また、2019年を通して大坂選手を3回破った天敵のベリンダ・ベンチッチ選手は、より大きなフェイス面をした『EZONE 100』を使用しています。


4.ヴィーコア 100 / ヴィーコア 95

アンゲリク・ケルバー選手が推奨する『VCORE 100』は、パワフルなスピンがかかるラケットで、「ヨネックス」のポリ・ストリング『POLY TOUR FIRE』との相性が良く、攻撃的なプレイヤーにオススメのラケットです。(プロのテニス選手が実際に使用しているラケットは、市販のもののスペックと大きく異なっていることが多いです。)

フレーム内側の空気抵抗を低減するデザインによって、加速するスウィング・スピードが実現し、ベイスラインからボールを狙ったところに落としやすくなっています。

若手の中でも特に期待されているカナダのデニス・シャポバロフ選手は、『VCORE 100』よりフェイス面が小さい『VCORE 95』 を推奨しています。柔らかいフレームが特徴であり、パワーはその分落ちますが、シャポバロフ選手のように大きなスウィングをする選手には向いています。


5.ヴィーコア・プロ 97

このラケットは、ハード・ヒッターであるスタン・ヴァヴリンカ選手のために作られた、いい意味で「ヨネックス」らしくないラケットです。

特に、日本国内では販売されていない330 gのヴァージョンは、ボールを潰すことのできるプレイヤーにしか使えないモンスター・ラケットです。

きちんとしたスウィングのできるプレイヤーにとっては、タッチの良さ、コントロール性の良さがとても感じられる一本です。

重量が20 g軽い『VCORE PRO 97 (310 g)』は、330 gのヴァージョンが生み出すような重さはないものの、より扱いやすい1本です。韓国の鄭現選手やアメリカのフランシス・ティアフォー選手などの若手選手が使用しています。


6.オススメの「ヨネックス」のストリングズ

「ヨネックス」はストリング・メイカーとしても人気があり、初心者からプロまで幅広いプレイヤーに使ってもらいたい商品があります。

『AERON SUPER 850』は、初心者・中級者・熟練プレイヤーにオススメの“マルチ"ストリングです。とても柔らかいので、肘や手首にトラブルのある方にもオススメです。

『POLY TOUR PRO 120』 は、ポリ・ストリングの中では、とても柔らかい製品なので、本格的なトレーニングを行なっている高校生やインカレ・レヴェルの大学生が使用するのにピッタリのストリングです。カラフルなのもクールです。キリオス選手は120を使用、大坂なおみは125を使用しています。

スピンを強くかけたいのであれば、コバルトブルーが鮮やかな『POLY TOUR SPIN 120』もオススメです。

スウィート・スポットでハードヒットできるプレイヤーにはケルバー選手も使用している『POLY TOUR FIRE 120』もとてもいいストリングです。「バボラ」の『VS TOUCH NATURAL GUT』とハイブリッドにして使用するのもオススメです。


7.エピローグ

ここまで「ヨネックス」のラケットを使用している選手を見てきましたが、このメイカーがいかに長期の経営戦略として、将来有望な若手に力を入れているかが分かります。

フォアハンドもバックハンドも両手打ちだったモニカ・セレシュ選手、「天才少女」と言われたマルチナ・ヒンギス選手、「蝶のように舞う」と形容された伊達公子選手をはじめ、ベリンダ・ベンチッチ選手や大坂なおみ選手に到るまで、「ヨネックス」はこういった選手を若い頃からサポートすることでブランドとしての知名度と信頼性を着々と築き上げてきました。

大坂選手の場合などは、まだ10歳だった頃から「ヨネックス」の支援を受けているのです。当時フロリダに在住していた大坂選手の家族は、彼女をプロ・テニス選手に育てたいと思い、母は「ヨネックス」の当時の米山勉社長(「ヨネックス」という名前は、この米山氏の名前に由来します)に手紙を送り、ラケットなどのサポートを求めたのです。米国支社のスタッフが大坂選手が出場するトーナメントを観戦し、その「パワーの可能性にかけたい」と支援をOKしたそうです。

そんな大坂なおみ選手が2018年の全米オープンと2019年の全豪オープンを優勝し、世界ランキング1位を獲得したことを記念して、2019年には『EZONE 98』のゴールド色の限定モデルも販売されました。

また、「ヨネックス」は2011年より、ジュニア選手を育成することを目標に、試合とクリニックを融合させた「YONEX VAMOS・J」というテニス・キャンプを開催しております。近年は日本のみならず、アメリカ、ドイツ、英国、中国、タイなどでも実施し、ジュニアのレヴェル向上に努めています。

こうして若手選手は、あの独特な四角い形をしたラケットにハマっていくのでしょう。


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世界的に認められたメイド・イン・ジャパンの「ヨネックス」 - 有力ラケット・メイカーの違い (4)


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