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KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (18) 
 テレヴィ・ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のショーランナーへのインタヴューを振り返って
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/09/20放送) | CINEMA & THEATRE #022
Photo: ©RendezVous
2022/05/09 #022

KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (18)
テレヴィ・ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のショーランナーへのインタヴューを振り返って
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/09/20放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.プロローグ

NHK Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』の9月20日放送の回では、テレヴィ・ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の2人の“ショーランナー"、 デイヴィッド・ベニオフとダニエル・ブレット・ワイスへ行ったインタヴューが放送されました。


2.アメリカを始め世界中で大ヒットした『ゲーム・オブ・スローンズ』

『ゲーム・オブ・スローンズ』は訳すると「王座を巡る権力争い」という意味です。架空の大陸「ウェスタロス」を舞台に、七王国の諸名家がぶつかり合う壮大なスケールのファンタジー・ドラマです。 “大人向けの『ロード・オブ・ザ・リング』"というと分かりやすいでしょう。中世ヨーロッパをイメージした世界観、剣や弓、魔法、ドラゴンなど、ファンタジーの定番の要素に、策略と陰謀たっぷりのストーリー展開、性描写や残酷な暴力のシーンが多いことが特徴です。

日本での知名度は今ひとつですが、アメリカをはじめ海外では、2011年に放送が開始されて以来、多くのファンたちを引きつけ、文化的現象となっています。アメリカのテレヴィの祭典であるエミー賞でも、これまでに、3回の作品賞 (ドラマ部門)を含む、史上最多である計57つもの賞を受賞しています。最終章となるシーズン8では、1話あたり約15億円もの予算をかけており、一般的なの1時間テレヴィ・ドラマの2~3倍となっていることが大きな話題となりました。

ベニオフとワイスの両氏は、シーズン8のブルーレイ&DVDがリリースされることを記念して来日しました。

『ゲーム・オブ・スローンズ』とは

アメリカの作家・ジョージR・R・マーティン著のファンタジー小説シリーズ『氷と炎の歌』を原作とした、アメリカのケーブル・テレヴィの放送局「HBO」のドラマ・シリーズです。全7部作となる予定の小説シリーズは1996年に第1章が出版され、現在第5章までが出版されています。一方、テレヴィ・ドラマは2011年にスタートし、2019年に終結したため、途中からドラマが小説を追い抜いた形となります。

ショーランナー2人について

デイヴィッド・ベニオフ(1970年~)は、アメリカの脚本家・小説家・ディレクター・プロデューサーです。映画『25時』や『トロイ』などの脚本で注目されるようになり、2011年に『ゲーム・オブ・スローンズ』のショーランナーの1人に抜擢されました。

ダニエル・ブレット・ワイス(1971年~)は、アメリカの小説家・脚本家・ディレクター・プロデューサーです。2003年に小説家としてデビューをし、その後デイヴィッド・ベニオフと共に活動するようになります。2011年に『ゲーム・オブ・スローンズ』のショーランナーに抜擢され、2人は大部分のエピソードの脚本を手掛け、いくつかのエピソードの監督も担当しています。


3.インターネットの光と闇の中に育まれた番組

かつて、アメリカの4大テレヴィ・ネットワークである「ABC」「NBC」「CBS」「FOX」が主流だった時代には、全国の視聴者を釘付けにした “water cooler show" (「ウォーター・クーラー番組」)というものが存在しました。放送の翌朝、社会人たちが仕事の合間に冷水器(ウォーター・クーラー)の前で集合して、番組を話題にする現象に由来した言葉です。今ではケーブル・テレヴィ、「Netflix」や「Hulu」などの動画ストリーミング・サイトなど、動画を観るための選択肢が多くなっているため、一世を風靡するような人気番組は稀になりました。

そんな中、アメリカのケーブル・テレヴィ放送局「HBO」の『ゲーム・オブ・スローンズ』は、SNS時代の“water cooler show"とも言える絶大な人気を博しました。その最大の理由は、SNSが一部の大学生から一般人に普及した時期と放送が重なったことが指摘されています。2010年ごろにiPhoneなどのスマフォが本格的に普及したことが、ヒットを大きく後押ししました。

放送期間中、『ゲーム・オブ・スローンズ』の大勢のファンは毎週日曜日の夜にテレヴィの前のソファに腰掛けて番組を見入っていました。 彼らはスマフォを片手に、リアルタイムでSNSに感想や意見を投稿しながら視聴する、いわゆる「ライヴ・ツイーティング」をして大いに盛り上がっていました。そして翌日になると、職場では、この番組をネタに大いに盛り上がったものです。

巨額の予算が注ぎ込まれた作品なだけに、壮大なスケールの物語を描いたCGや映像技術は見事なもので、映画作品にも見劣りしないクオリティも高く評価されました。ただ、その分、熱狂的なファンによる批判的な意見や「アラ探し」も横行しました。最終シーズンの第4話の一場面に、テイクアウト用のコーヒーカップが写り込んだ時には、SNS上ではあっという間に笑いのタネにされ、良くも悪くも大きな話題となりました。

『ゲーム・オブ・スローンズ』とSNSの関係は、あまりにも残酷な終末を迎えることとなります。シーズン8の放送が進むに連れ、ストーリー展開や出来栄えに対する不満の声が高まり始めたのです。ついには、最終話の放送後、「有能な製作総指揮者のもとで最終章を作り直して欲しい」という署名運動が立ち上げられるという事態となり、現在では170万人を超える署名が集まっています。(しかし、「HBO」は作り直す予定はないことを公表しています。)番組が自分の思い通りの結末を迎えなかったことに対して、子供のように駄々をこねている印象を与えます。是非とも、“クールダウン"してもらいたいところです。

SNSというメディアのユーザーは、味方についている時は強力な支えになりますが、一方で、敵に回すと手のひらを返したような行動をとるものです。


4.“初心"を大切にすること

今回のインタヴューで最も聞きたかったことは、「プロデューサーとしての経験がほとんど皆無だった製作総指揮者のベニオフとワイスの2人が、いかにして『ゲーム・オブ・スローンズ』を成功に導くことができたのか」ということでした。

「この番組のような、大きなことに挑戦する際、成功の鍵はなんですか?」と言う質問に対して、ベニオフさんは笑いながら“stupid confidence, stupid overconfidence"と答えました。つまり、「無知による自信、無知による自信過剰」ということです。経験がないにも関わらず製作総指揮の“スローン"(王座)を勝ち取れたことに、「根拠のない自信」を感じていたのかもしれません。1本のテレヴィ番組のあらゆる制作現場を仕切る“ショーランナー"には、それくらいの根性がないと、務まらないのでしょう。

一方、ワイスさんは、ベニオフさんが誕生日のプレゼントとして前日に“beginner’s spirit"という銘柄のお酒をプレゼントされていたことを話してくれました。恐らく、金沢で最も長い歴史を持つ酒造「福光屋」の『初心』のことだと思われます。

そもそも“beginner’s spirit"は元々英語にある概念ではなく、日本語の「初心」という概念を翻訳した言葉です。英語でよく用いられる似た言葉としては“beginner’s luck"というものがあります。「初心者が得る幸運や勝利」を意味し、「素人のまぐれ」というニュアンスの言葉です。日本人には「初心忘るべからず」ということはとても大切な格言なのですが、アメリカ人からすると「初心」から生まれた成功というものは少し恥ずかしい感じがするものです。できるだけ早く「初級」を卒業したいと思うものです。

『ゲーム・オブ・スローンズ』が終了した現在、ベニオフとワイスの今後に大きな期待が寄せられています。2018年2月、「ディズニー」と「ルーカスフィルム」は、この2人が『スター・ウォーズ』の世界を舞台にした新しいシリーズの脚本・製作を手掛けることを発表しました。(報道によると、2人はNetflixの作品に集中するために『スター・ウォーズ』のプロジェクトからは降りたようです。)そして2019年8月には、世界最大の動画ストリーミング・サーヴィス「Netflix」と200億円を超える巨額の長期契約を結んだことも発表されています。現在この2人は、アメリカのエンタメ業界の“王座"に君臨していると言っても過言ではありません。


5.この日の衣裳について

「グローバルスタイル」の黒いスーツ

「グローバルスタイル」の黒いスーツ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #011を参照してください。

『ファブリック・トウキョウ』のグレーのピンストライプのボタンダウン・シャツ

『ファブリック・トウキョウ』のグレーのピンストライプのボタンダウン・シャツ
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #001を参照してください。

『ラルフ・ローレン パープル・レーブル』のグレイのネクタイ

『ラルフ・ローレン パープル・レーブル』のグレイのネクタイ
こちらはBigBrotherから借りた『ラルフ・ローレン パープル・レーブル』のヴィンテージのネクタイです。

「999.9」の「M-27」

「999.9」の「M-27」
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #005を参照してください。

「パラブーツ」の黒い『アヴィニョン』

「パラブーツ」の黒い『アヴィニョン』
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #005を参照してください。

CINEMA & THEATRE #022

テレヴィ・ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のショーランナーへのインタヴューを振り返って - 『SNS英語術』(2019/09/20放送)


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