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“インターネットのボイフレンド"キアヌ・リーヴスの魅力とは
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』 #Keanussance (2019/10/04放送) | LANGUAGE & EDUCATION #035
Photo: ©RendezVous
2022/11/21 #035

“インターネットのボイフレンド"キアヌ・リーヴスの魅力とは
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』 #Keanussance (2019/10/04放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.ネット上で“神扱い"されるキアヌ・リーヴス

『世界へ発信!SNS英語術』の10月4日放送は、25分丸ごとキアヌ・リーヴスでした。

ネット上では、リーヴス氏の様々な伝説が語り継がれ、絶大な人気を誇っています。番組では、ニューヨーク市の地下鉄を乗ったリーヴス氏が、重たい荷物を持った女性に席を譲った動画がネット上で拡散されたことを紹介しました。また、今年3月に、サンフランシスコからL.A.に向かう途中に緊急着陸した飛行機に搭乗していたリーヴス氏は、移動用の車の手配をし、乗客も一緒に乗せてL.A.まで連れて行ったというエピソードも取り上げました。

リーヴス氏は独特な佇まいや表情をしているため、インターネット・ミームのネタにされやすいようです。番組では、その代表例の1つである“ぼっちキアヌ"というミームを取り上げました。ベンチに前かがみに座って一人“ぼっち"でランチを食べているところをパパラッチに撮られてしまいました。その孤独そうな姿の部分だけを切り取って様々な場面に挿入した合成写真を作るという“Sad Keanu" (「悲しいキアヌ」)というミームは、瞬く間にSNS上で拡散されました。

彼の独特な“キアヌ節”ともいえる発言も、ネット上でよくネタにされます。例えば2019年6月にL.A.で行われた新作ゲームの発表会において、自身がモチーフとなったキャラクターが登場するゲームのイヴェントに登場した際に、ゲームの舞台となる近未来の街は“breathtaking”(「息を呑むほど素晴らしい」)と言及しました。すると、観客のある男性に“You’re breathtaking!”(「あなたこそ息を呑むほど素晴らしい!」)と突っ込まれ、それに対してリーヴス氏はすかさず“You’re breathtaking! You’re all breathtaking!”(「キミこそ息を呑むほど素晴らしい!キミたち全員、息を呑むほど素晴らしい!」)と返したのです。このちょっとしたやりとりが、一気にネットで拡散され、“You’re breathtaking”はちょっとした流行語にさえなりました。

他にも、ファンの女性と写真を取る際には、相手の腰に手を回しているように見せていながら、よく見ると実際には相手には触れていないことから、ネット中の女性ファンは、その紳士的な振る舞いに惚れ込んでいます。

こういったリーヴス氏にまつわる逸話はネット上で数多く拡散され、もやは伝説に達しているのです。2019年6月に米『タイム』誌に“Why Keanu Reeves Has Always Been the Internet’s Soul Mate" (『キアヌ・リーヴスはこれまでずっとインターネットのソウルメイトであった理由』)という記事が掲載されましたが、正にリーヴス氏は、ネット市民にとって“運命の人"ともいえるほど相性が良い存在なのです。


2.“キアヌサンス"と“キアヌの夏"

そんなリーヴス氏は、ここ数年、俳優としても人気の再来の真っ只中にいます。今年の夏には、アクション映画からラヴ・コメまで、何作もの人気作品に立て続けに出演したことにより、その人気が今正に絶頂を迎えています。この社会現象は“キアヌサンス" (“Keanussance"、「キアヌ」と「再生」「復活」を意味する「ルネサンス」を融合させた造語)、別名“The Summer of Keanu" (「キアヌの夏」)と名付けられています。

このブームのきっかけとなったのが、2014年に第1作目が発表され、今年3作目が公開された『ジョン・ウィック』というシリーズ作品です。このシリーズはアクション映画マニアのために作られた、アクション映画マニアによる、究極のアクション映画です。一般的に続編というものは、作品のクオリティーも興行収入も下り坂なイメージがあります。が、2019年10月4日に日本で公開されたシリーズ3作目の『ジョン・ウィック:パラベラム』]は、アメリカ合州国で公開された10日後にはシリーズ最高の興行収入を叩き出しました。(この作品について詳しくはLANGUAGE & EDUCATION #035をご覧ください。)

また、今年7月に公開されたピクサー社のアニメイション映画『トイ・ストーリー4』では、リーヴス氏はカナダ出身の落ちこぼれたバイク・スタントマンの“おもちゃ"を熱演しました。カナダ人であることや堅苦しい身振り素振り、自分の腕前に自信をなくした“悲しい"キャラ設定など、正に「キアヌ・リーヴス」のパロディともいえる役柄は、多くの観客を魅了しました。 (『トイ・ストーリー4』については、番組の取材で監督にインタヴューしましたので、それについて振り返ったCINEMA & THEATRE #018 もご覧下さい。)

今年の5月には、ハリウッドとしては非常に珍しい、アジア系アメリカ人を題材にしたラヴ・コメ『いつかはマイ・ベイビー』にも、本人役でカメオ出演をしています。 (あまり取り上げられることがありませんが、リーヴス氏の祖母は中国系ハワイアンだったそうです。)本人役と言っても、“ハリウッドNo.1のナイスガイ"というイメージではなく、気難しい“嫌な奴"として、自身のパブリック・イメージを笑いのネタにしていました。

シリアスでストイックなイメージのリーヴス氏ですが、『トイ・ストーリー4』と『いつかはマイ・ベイビー』の2つの作品を通して、彼のユーモアのセンスが一般に知れ渡り、“キアヌサンス"が開花したのでしょう。


3.近年のハリウッドでは“~サンス"ブームが来ている

人気の再生期を迎えている俳優の名前に「ルネサンス」の「~サンス」をつけることが、近年流行しています。そもそもこの“~サンス"ブームの始まりとされるのが、2014年の“マコノサンス"(“McConnaisance")、つまり、俳優のマシュー・マコノヒーの人気の再来の時でした。マコノヒー氏といえば、それまでは主にラヴ・コメに出演するような2枚目として、演技力より、よくシャツを脱いで上半身を見せびらかす役柄が多いことで知られていました。

しかし、マコノヒー氏は『マジック・マイク』(2012年)では男性ストリップ・クラブのオーナー、『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013年)ではエイズを患ったカウボーイ、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』](2013年)ではウォール街の敏腕証券マン、『インターステラー』(2014年)では娘思いの宇宙飛行士などを演じ、実力派俳優としてのイメージも確立させました。特に『ダラス・バイヤーズクラブ』での演技はとても見事なもので、第86回アカデミー賞において、主演男優賞を受賞しました。

“マコナサンス"の主な理由としては、同じような役柄ばかりを演じることに疲れたマコノヒー氏がギャラではなく「やり甲斐のある役柄」を優先するようになったためとされていますが、その人気を後押ししたのはやはりインターネットやSNSの存在です。彼のテキサス訛りや気楽な振る舞いは、そもそもアメリカ人が思う“チャーミングさ"の典型で、映画賞での受賞スピーチなどの動画は、SNSを通して拡散されました。また、男性ストリッパーやウォール街の金の亡者のような役柄を演じることで、「上半身が常に裸なラヴ・コメ俳優」という自身のかつてのイメージを笑いのネタにするスタンスもやはり、自虐ネタが大好きなネット市民にアピールしました。


4.キアヌ・リーヴスはなぜ愛されるのか

マシュー・マコノヒーに続いて俳優として“ルネサンス"を経験しているキアヌ・リーヴスですが、マコノヒー氏とは違って、リーヴス氏には実力派俳優という評判はあまりありません。

キャリア初期のリーヴス氏には好青年/美男子というイメージがあり、ロマンス映画の主演を何度か務めて来ました。当時のものは、作品としてはどれも評価が今ひとつで、本人にはマコノヒー氏のようなロマンチックなイメージも定着しませんでした。

リーヴス氏は、役柄のために体型を変えたり、訛りを変えたりするような役者でもなく、それができる役者でもありません。彼の演技の特徴は、自己主張が少ないことでしょう。役柄になりきろうとしたり、あるいはなりきろうとする努力を見せようとするタイプではないのです。むしろ、“なりきろうとしない演技"が彼のトレードマークなのです。本人が持つ不思議な存在感を、そのまま作品に放つことによって、観客がそれぞれの思いや感情をそこに投影させることができるのです。それが彼が俳優としての長いキャリアを持つことができた秘訣なのではないでしょうか。

リーヴス氏の人気のもう1つの理由は、変わった作品を選び続けてきたことでしょう。ハリウッド映画という産業はこれまで、機械のようによりシステマチックにヒット作品やスターを量産しようとして来ました。現在アメリカの映画業界には、ヒットを狙って隅から隅まで計算して作られたフランチャイズ映画やリメイク映画ばかりとなっているのがその証拠です。しかし『マトリックス』や『ジョン・ウィック』といったリーヴス氏の代表作は、監督やリーヴス氏自身のこだわりとヴィジョンが、結実した作品であります。

作品に対しては譲らないこだわりを抱きながらも、自身のパブリック・イメージには無関心なのです。彼には気取った態度や「世の中にこう見られたい」「人に好かれたい」という願望が微塵もありません。見方を変えれば、これまでの成功によって1人では使いきれない財産と名声を得たために、完全に浮世離れしたような存在になってしまったのかもしれません。そこで注目すべきポイントは、彼はSNS的に「いい人ぶっている」のではなく、本当に見た目のままの根っこからの“いい人"であることなのです。

こういったことを踏まえて、番組でも取り上げた“紳士的なキアヌ" “いい人キアヌ" “悲しいキアヌ"など、ネット市民が彼に対して抱く評判を改めて考えてみると、実はこれらは全て私たちが勝手に自らの願望を彼に投影した人物像を築いていることに気づきます。彼はどんな役を演じても、紛れもなくキアヌ・リーヴスなのですが、「キアヌ・リーヴス」にはこれといった自己主張がある訳ではないのです。私たちは、キアヌ・リーヴスという俳優を30年間観てきたにも関わらず、本当の彼については何も理解していないのではないでしょうか。そういった意味で彼は、実はとても類稀なタイプの俳優なのかも知れません。


5.今回の衣裳について

「KASHIYAMA the Smart Tailor」の黒いヴェスト

「KASHIYAMA the Smart Tailor」の黒いヴェスト
この商品は、以前紹介したのでFASHION SHOPPING #030を参照してください。

「ル・カノン」のベイジュのボタン・ダウン・シャツ

「ル・カノン」のベイジュのボタン・ダウン・シャツ
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #029を参照してください。

「ブルックス・ブラザーズ」のイエローのチノパン

「ブルックス・ブラザーズ」のイエローのチノパン
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #017を参照してください。

「タビオ」のオレンジのソックス

「タビオ」のオレンジのソックス
こちらの商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #027を参照してください。

「パラブーツ」の茶色いローファー『コロー』

「パラブーツ」の茶色いローファー『コロー』
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #027を参照してください。

「MFYS」のウッドのカフ・リンクス

「MFYS」のウッドのカフ・リンクス
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #012を参照してください。

「ゾフ」の黒いメガネ

「ゾフ」の黒いメガネ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #006を参照してください。

LANGUAGE & EDUCATION #035

“インターネットのボイフレンド”キアヌ・リーヴスの魅力とは - 『世界へ発信!SNS英語術』 #Keanussance (2019/10/04放送)


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