メイン・コンテンツ
検索フォーム
オススメの海外の雑誌 (2) 
 ファッション・センスを磨くための女性ファッション・アート誌編
  -『ヴォーグ』『エル』『ハーパーズバザー』『ヴァニティフェアー』『ヌメロ』『ナイロン』『アイディ』 | BOOKS & MAGAZINES #005
2021/07/19 #005

オススメの海外の雑誌 (2)
ファッション・センスを磨くための女性ファッション・アート誌編
-『ヴォーグ』『エル』『ハーパーズバザー』『ヴァニティフェアー』『ヌメロ』『ナイロン』『アイディ』

columnist image
OCEAN
経営コンサルティング / エンジェル投資家

目次


1.プロローグ

トランプ大統領夫妻をテレヴィで見ていると“ジョック"と“クイーン・ビー"という言葉を思い出します。

今では、デブで傲慢な金持ちにしか見えていないトランプ大統領の若い頃の写真を見ると、正に“ジョック"そのもののイメージです。

“ジョック"とは、アメリカにおける“スクール・カースト"の頂点に君臨する存在のことで、“身体が大きくスポーツ好き"“ルックスが良く女性にモテる"“富裕層に属する"白人男性のことです。

性格的には、“傲慢不遜"“差別意識が強い"“男尊女卑"であるとされています。
トランプ大統領は、正に典型的な“ジョック"なのです。

“ジョック"のガールフレンドにふさわしいのが“クイーン・ビー"なのです。基本的には、メラニア夫人のように“グラマラス"で男性にモテる女性でチアリーダーが代表的なイメージです。

また、トランプ氏の娘イヴァンカのように才色兼備な女性ももちろん“クイーン・ビー"と言えます。

アメリカの“スクール・カースト"は、日本のそれに比べても、とても残酷なもので、最下層の“ギーク"や“ナード"は、人間扱いされていません。

ICT革命が進行しているこの20年間、“ギーク"や“ナード"の代表であるマイクロソフトのビル・ゲイツやアップルのスティーヴ・ジョブスが、社会の中心的活躍を果たしてきたことに対する不満が“ジョック"の代表であるようなトランプ大統領を生み出したのではないかと私は考えています。

アメリカにおいては、これまでも現在も、そしてこれからも、身体的特徴に基づく、メンタリティーの階層社会が存在し続けるのではないでしょうか。
日本における、女性向け雑誌は、ファッションのテイストや年齢の違いによるターゲティングがなされていますが、アメリカの女性向け雑誌は、社会的階層と政治思想の違いによって差別化されています。

どんな雑誌を購読しているかで、その女性の属性は、すぐにわかります。誌面もファッションのことだけではなく、ライフスタイルやオピニオンに関する記事が多くあります。

一方、日本の女性誌は、“リアル・クローズ"によるコーディネイトばかりが紹介されており、映画やアート・音楽といった文化面のない雑誌まで存在しています。

日本では、“同調圧力"によって、お金持ちも貧しい人も同じような格好をしています。

年収200万円の派遣のOLが30万円もする「ルイヴィトン」のバックを通勤用の自転車のカゴに入れて、「シャネル」の化粧品を買った時にもらった紙袋と一緒に入れて、走っています。その一方で、世田谷の大邸宅に住んでいて、1000万円の「ベンツ」に乗っている“奥様"が「ユニクロ」でシャツを大量に購入しているといった、とても不思議な光景をよく目にします。

日本では、格差が広がっていると叫ぶ評論家や社会学者がいますが、アメリカにおける格差と比較すれば、大したことはなく、ほとんどの日本人は、アメリカでは中間層に分類されることでしょう。


2.『VOGUE』

1892年に創刊され、1909年よりコンデナスト・パブリケーションズが発刊しているアメリカの『VOGUE』は、ハイファッション誌の代名詞的な存在です。映画『プラダを着た悪魔』の“悪魔"のモデルであるとされる編集長のアナ・ウィンターは、『VOGUE』を「ファッションを取り上げる雑誌」から「ファッションを牽引する雑誌」に育て上げた、ファッション界の重鎮です。1916年に創刊された『BRITISH VOGUE (ブリティッシュ・ヴォーグ)』を始め、『VOGUE ITALIA (ヴォーグ・イタリア)』、『VOGUE PARIS(ヴォーグ・パリ)』、『VOGUE JAPAN (ヴォーグ・ジャパン)』など、現在23の国際版を発行しています。因みに、アメリカ版とイギリス版の違いは、前者の表紙は女優が飾ることが多くセレブ系の情報に強いのに対して、後者はモデルが飾ることが比較的多く、ファッション・ジャーナリズムに強いことです。


3.『ELLE』

フランス発祥の『ELLE』は、世界60各国で43の国際版が発行される、世界最大規模のハイファッション雑誌です。創刊当時は“ファッション誌"というよりかは“女性誌"としてフランスの女性に選挙に参加することを呼びかけたり、女性の権利を訴えるなど、政治色・社会色が強かったそうです。その名残で今も、女性活動家やフェミニズム運動を取り上げたり、女性のエンパワーメントをテーマにした内容が比較的多いことが特徴的です。1970年には初めての国際版としてマガジンハウスの『an・an』より日本版が発行され、1982年には『エル・ジャポン』が創刊されました。因みに“ELLE"はフランス語で“彼女"という意味です。


4.『Harper's BAZAAR』

『ハーパーズ・バザー』は1867年にアメリカ史上初の女性ファッション誌として誕生しました。以後、上位中産階級と上位階級の洗練されてスタイルにこだわりのある女性に向けて ファッション、美容、 ライフスタイル、そしてセレブのプロフィールを発信しています。本誌はまだ無名だった写真家のリチャード・アヴェドンやアレクセイ・ブロドヴィッチ、モデル・女優のローレン・バコールなどを見出したことでも知られています。近年は20歳代~60歳代+まで、それぞれの年代を代表する1人の読者を選ぶ『Fabulous at Every Age』(年代別のおしゃれな女性)コンテストが毎年の恒例企画となっています。


5.『Vanity Fair』

ポップ・カルチャー、ファッション、時事を取り上げたカルチャー誌である『ヴァニティ・フェア』はセレブリティー・ジャーナリズムの権威とされています。表紙に妊娠中のデミ・ムーアや性転換後のケイトリン・ジェンナー、などの時の人が飾り、イヴァナ・トランプとの結婚が崩壊寸前であったドナルド・トランプや「ディオール」に解雇されたジョン・ガリアーノなど、世間を騒がすセレブ達へのインタヴューも目玉です。因みにアカデミー賞の授賞式後に毎年開かれる数々の“オスカー・パーティー"の中でも、ヴァニティ・フェアが開催するパーティーはハリウッド・セレブなら誰もが憧れる賑やかなイヴェントとされています。


6.『Cosmopolitan』

130年以上前に文芸雑誌として創刊され、1965年からは女性誌として発刊されているアメリカの『コスモポリタン』は、女性ファッション誌の中でも恋愛、セックス、健康、自己啓発、キャリア、セレブ・ゴシップ、占いなどのコンテンツに力を入れています。男性の目線を意識した内容であり、女性の読者が男性に向けて質問を投稿する『Ask Him Anything』(彼に聞きたいことを何でも聞いて)や、『Bachelor of the Year』(その年1位の独身男性)が恒例のコンテンツとして人気があります。日本語の印刷版はないものの、2015年よりミレニアル世代に向けた日本語のオンライン版を運営しています。


7.『Numero』

『Numero』は、男性の目線ばかりを意識した女性誌が多いことにうんざりしたフランスのファッション編集者が立ち上げた、美術や文化など知的好奇心のある女性を意識したモード誌です。掲載されているファッション写真には高い芸術性があり、国際的な視点を持ったインタヴューも女優やモデル、アーティスト、デザイナー、写真家、ミュージシャンなどクリエイティヴな仕事をしている女性を多く取り上げています。2007年より『Numero TOKYO』も発刊されています。


8.『NYLON』

1998年に創刊されたアメリカの『NYLON』は、キュートでありながらクールであり、少しエッジの効いたストリート・モードを中心に紹介しており、コーディネイトが参考になることで、若い女性の間で人気です。2017年にはデジタル版への移行を発表し、アメリカの印刷版は休刊になりましたが、日本語版はその後も毎月発刊され続けています。芸能人などの“イット・ガール"が紙面を飾ることが多いのが特徴です。因みに誌名の“NYLON"は「ニューヨーク(NY)」と「ロンドン(LONDON)」からとったものだそうです。


9.『i-D』

かつて『VOGUE』のアート・ディレクターを務めたイギリスのデザイナー、テリー・ジョーンズが創刊した、隔月発刊の雑誌です。創刊当時は、手作り感満載だったデザインは、今はとても洗練されたレイアウトになっています。雲の上の世界を描いたハイファッション誌に比べ、依然としてよりストリート・ファッションや若者文化の最先端、ロックやアートに視点を向けた内容が特徴です。因みに、誌名の“i-D"は頭を90度曲げて見るとウィンクの絵文字になっていますので、表紙を飾るモデルがウィンクをしていることが多いのです。また、この雑誌はタイポグラフィーにもこだわりがあることで知られています。


10.『Purple』

Purple』は、それまで80年代のファッション雑誌の多くに見られたコマーシャリズムや華やかさに対してのアンチテーゼとして、1992年に創刊されたファッションとアートの雑誌です。現在はファッションに焦点を当てた『Purple Fashion』を年に2回発刊し、それ以外にもカルチャーを取り上げる『Purple Journal』も制作しています。2004年以降、印刷版には毎回ある一人のアーティストが制作したスペシャル・ブックも同封されています。


11.『V Magazine』

『V Magazine』は、コレクターズ・アイテムとして人気が高いニューヨーク発の高級アート誌『Visionaire』の姉妹誌として創刊されました。ファッションを通して、アート、音楽、映画など、様々な視点からポップ・カルチャーを取り上げています。表紙を飾るのは、俳優、モデル、ミュージシャンが多く、その幅広い内容なら男性読者も多いのが特徴です。男性向けの『VMan』も年に4回発刊しています。


12.『ダブリュウ』

“ファッションのバイブル"とも言われる『WWD』の姉妹誌として誕生したアメリカのモード誌です。一般的な雑誌より大きいサイズで、写真集のようなファッション・フォトなどが多数掲載されており、一号一号が永久保存版をイメージしたデザインとなっていることも特徴的です。2018年9月号は、編集長を除いて関わったスタッフも誌面に登場するモデルも、女性だけで制作したことが話題を呼びました。


13.エピローグ

2018年5月に行われたヘンリー王子とメーガン・マークル妃との結婚式のTV中継を観ていて、イギリスでは王室と貴族がきちんと存在し続けていることを、改めて痛感しました。

トランプ政権の幹部を見ていても、アメリカの“エスタブリッシュメント"の層の厚さというものを感じます。

第二次世界大戦の勝利国であるイギリスとアメリカというアングロ・サクソンを中心とした両国(もちろん両国が現在、多民族国家であることを含めて)が世界に対して強い“意思"(アメリカの世界の覇権やイギリスのブレグジットなど)を表明できるのは、その多くの国民が“上への意志"を強く持っているからなのだろうと思います。

イギリス人もアメリカ人も、より高い価値への“憧れ"や“尊敬"という概念を大切にしています。両国とも“自由と平等"といった国家の理念を掲げているにもかかわらず。

日本においては、この欧米流の“自由と平等"を“わがままと同質"と誤解しているようです。

自由とは“他人に迷惑をかけない限り"という条件が前提であり、平等とは“結果の平等(同質)"のことではなく“機会の平等"のことです。

しかし、日本社会は、明らかに迷惑のかかるスマホ歩きを容認し、努力もしないで貧困に陥った人にも、高額な生活保護費を支給しています。

テレビや新聞では、権力者や有名人の些細なミスを見つけ出し、近代法で最も禁じている“人民裁判"(吊るし上げ/リンチ)を連日報道しています。

これは、前近代から続く下からの“妬み"を伴う“ムラ社会"の延長であるからでしょう。

立憲主義とは、こうした“リンチ"を禁止することから生まれた思想であることを忘れては、いけません。


BOOKS & MAGAZINES #005

オススメの海外の雑誌 (2) ファッション・センスを磨くための女性ファッション・アート誌編


Page Top