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「世界の映画史」シリーズの概要 前編 (1)~(10)
  – 映画の黎明期/ハリウッドの誕生/ハリウッドの黄金期/映画監督/俳優 | CINEMA & THEATRE #048
2023/09/11 #048

「世界の映画史」シリーズの概要 前編 (1)~(10)
– 映画の黎明期/ハリウッドの誕生/ハリウッドの黄金期/映画監督/俳優

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


プロローグ

今回からCINEMA & THEATREのカテゴリーでは「世界の映画史」シリーズをスタートさせます。今回と次回では、まずその全体の概要を説明しています。

世界各国から優れた映画作品は発表されていますが、映画史を語る上でその大半を占めるのがアメリカ合州国カリフォルニア州のロス・アンジェレスを拠点とした“ハリウッド"と、そこから生まれた作品です。そもそもハリウッドが映画の街として栄えた最大の理由は、地理的な条件といえるでしょう。一年中太陽が降り注ぎ、乾燥している気候は映画撮影に向いていました。また、だだっ広い平地が続いていることから比較的土地の値段も安く、映画製作の関連事業やタレントを管理するエージェンシーなども増えることができ、巨大な産業を支えるために街全体が発展を遂げました。

第一次世界大戦によってヨーロッパ諸国が大きな打撃を受けると、ハリウッドは事実上、映画産業を独占するようになりました。このシリーズの前半では、ハリウッドの歴史や著名な監督、俳優、女優、職人、そして人気のジャンルやその代表作を取り上げます。

シリーズ後半では、英国、フランス、イタリアを中心にヨーロッパの映画と日本・アジアの映画について紹介します。英国の映画産業は、米国と言語が同じということもあり、アメリカと密接に繋がって発展を遂げてきました。一方、フランスやイタリアなどではハリウッドの影響を受けながらも、芸術性の高い独自の映画文化が成長しました。それはハリウッドの映画製作者にも大きな影響を与えることとなりますが、世界的な認知度でいうと、アメリカよりもむしろ日本のインテリの間で知られています。

また、日本をはじめとするアジアの作品や、インドや中東の映画、メキシコを中心とした中南米の映画も取り上げます。特にアジアの映画作品は、近年の映画配信サーヴィスの普及によって、かつてないほど観ることが容易になった状況になりました。今年の2月に韓国のポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が外国の映画として初めてアカデミー賞の作品賞を受賞し、注目度が更に高まっています。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、映画館に足を運びにくくなった今、こういった映画のストリーミング・サーヴィスを通してハリウッド映画だけでなく世界の優れた映画に触れることをオススメします。


1.映画の黎明期と“ハリウッド"が誕生するまで

世界の映画史シリーズの第1回では、映画史の始まりに着目します。まず最初に、映画の発明者とされるフランスのリュミエール兄弟やアメリカのトーマス・エジソンを取り上げます。次に1910年代から1920年代後半まで続いた“サイレント映画"の時代を取り上げます。この時代の作品は保存状態が悪いものが多いことから“プリミティヴ"な作品という印象が一般的にありますが、実はこの時代に映画製作や編集の基本言語ともいうべきルールが確立されたことを忘れてはいけません。その後、映画製作や映画館の技術が発達したことによって、映像とセリフや音が同期して放映される“トーキー"が誕生します。このことは映画業界に大きな変化を巻き起こします。しかし、日本など一部の国では“サイレント映画"から“トーキー"へのシフトがなかなか進みませんでした。1930年代になり、“トーキー"は世界的に映画の主流のスタイルとなっていきました。


2.ハリウッドのストゥディオ・システムと“トーキー"の時代の始まり

第2回では第二次世界大戦以前のハリウッドに迫ります。“トーキー"が主流となっていく中で、映画ストゥディオには様々な葛藤がありました。映画というもののあるべき姿が問われる時代でもありました。その背景には、アメリカにおける女性の選挙権の獲得や大恐慌など、アメリカ社会を大きく変える出来事がありました。まさにアメリカ人が大好きな、波乱万丈の時代なのです。


3.アメリカのプロパガンダ映画の文化と第二次世界大戦中のハリウッド

第3回では第二次世界大戦中のハリウッドの映画を取り上げます。1941年12月に日本軍がハワイの真珠湾に攻撃し、日本と軍事同盟を結んでいた枢軸国のドイツとイタリアがアメリカに対して宣戦布告をすると、アメリカは連合軍として第二次世界大戦に参戦することとなります。真珠湾の奇襲攻撃を機にアメリカ国民の戦争参加の意欲が一気に盛り上がることとなりました。とはいえ、日本とヨーロッパの2つの戦場での長い戦いに備えるためには、“巨人"にも身体と心の糧が必要でした。アメリカの軍隊と国民が士気と集中力を保ち続けられた背景には、ハリウッドの活躍がありました。


4.第二次世界大戦後の赤狩りとハリウッドの黄金期の終焉

第4回では、ハリウッドの黄金時代の後期に当たる、第二次世界大戦が終わった1945年から、“古典的"ハリウッドが終わったとされる60年代末までの期間の作品を取り上げます。戦時中に映画というものが“自由"や“民主主義"などアメリカ的な価値観を拡散させるための道具となることに気づいたアメリカ政府は、戦後に映画産業に介入するようになります。また、冷戦の勃発により、米国内で共産主義に対する拒絶反応が起こり、“赤狩り"(レッド・パージ)へと発展し、ハリウッドでも共産主義者や“シンパ"の“ブラックリスト"が作られました。それによってそれまでの体制は崩壊していくこととなります。


5.1960年代後半のカウンターカルチャーが生み出した“アメリカン・ニュー・シネマ"

戦後の時代でヨーロッパではフランスの「ヌーヴェル・ヴァーグ」やイタリアの「ネオリアリズム」など、前衛的な映画ムーヴメントがいくつも起こりました。60年代後半には、アメリカでもこういったムーヴメントに強い影響を受けた新しい世代の映画製作者たちが頭角を表すようになります。彼らの作品群を総称して日本語では「アメリカン・ニュー・シネマ」、英語では“New Hollywood"と呼びます。彼らの作品に共通していたのは、「作品のテーマがカウンターカルチャー運動や若者文化、あるいはヴェトナム戦争に代表される、当時のアメリカ社会にのしかかっていた“闇"を表現していること」でした。


6.ハリウッドを代表する映画監督

第3回では、70年代以降のハリウッドを代表する映画監督を時代別に取り上げます。70年代にはフランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピールバーグといった巨匠が頭角を現しました。彼らは映画学校を卒業していたことから、ハリウッドの黄金時代に対する敬意を持ちつつも、画期的なことに挑戦する若いエネルギーがありました。80年代にはジェームズ・キャメロン、ロバート・ゼメキス、リドリー・スコットなどがいわゆる“ブロックバスター作品"(大作映画)を多く発表しました。 また、90年代ごろからは、スパイク・リー、クウェンティン・タランティーノ、ポール・トーマス・アンダーソンらがインディペンデント系の映画作品を続々とリリースします。彼らはレンタルVHSのヴィデオで映画を勉強しながら育ったことから、“ヴィデオ世代"の監督とも呼ばれました。


7.ハリウッドを代表する俳優 (前半 / 後半)

第7回ではハリウッドを代表する俳優を取り上げます。ハリウッドの黄金期ではジミー・ステュアートやポール・ニューマン、ハンフリー・ボガートやマーロン・ブランドなどの伝説的な俳優が人気を博します。70年代にはロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ダスティン・ホフマンらが頭角を現しました。80年代では新しいタイプのアクション俳優が現れる一方で、多くの青春映画に出演した若手俳優の一団である、いわゆる“ブラット・パック"が注目を浴びました。90年代に入るとトム・ハンクス、トム・クルーズ、ハリソン・フォード、ケヴィン・コスナーなどが世界的スターとなりました。00年代以降も多くの優れた俳優がハリウッドから輩出されています。この時代においてはスーパーヒーロー映画への出演がある種の登竜門となったことが興味深い点です。


8.ハリウッドを代表する女優

第8回では、ハリウッドを代表する名女優を時代別に取り上げます。ハリウッドの黄金期にはエリザベス・テイラーやマリリン・モンロー、キャサリン・ヘップバーンやオードリー・ヘップバーンなどが今でも語り継がれる伝説的なスターとなりました。70年代と80年代には、フェイ・ダナウェイやジェーン・フォンダなど自由奔放な性格の女優や、メリル・ストリープやジョディ・フォスターなどの実力派女優が頭角を現しました。90年代はジュリア・ロバーツ、メグ・ライアン、サンドラ・ブロックらが、ラヴ・コメ、ドラマやアクション映画などで大人気となり、“アメリカのスウィートハート"と呼ばれるほどのハリウッドを象徴するスターとなりました。00年以降は、“恋愛の対象"となる役柄以外で女性が登場する作品が増え、それまでのハリウッドの常識を覆すようなアクション女優などが多く活躍するようになりました。彼女らを取り上げるこの回では、ハリウッドを始め、アメリカ社会を揺るがしている#MeToo運動や#TimesUp運動についても取り上げます。


9.ハリウッドの様々なスターの形

第9回では、様々なハリウッド・スターの形を取り上げます。例えば、ハリウッドには俳優賞をもらうような実力派俳優ではないが、その1人の名前が挙がるだけで映画会社のゴーサインが出るような人気スターを紹介します。その代表例が、80年代にアクション俳優というひとつの“ジャンル"を作り出したアーノルド・シュワルツェネッガーやシルヴェスター・スタローンなどです。また、クリント・イーストウッドやジョージ・クルーニーなど、映画俳優からキャリアをスタートさせ、後に監督やプロデューサーとしても評価を得た俳優も取り上げます。他にもハリウッドの名脇役や名悪役にも着目します。


10.ハリウッドを代表する職人

第10回では、ハリウッドを支える様々な“職人"に注目します。まずは優れた脚本家やシナリオが輝いている映画作品を取り上げます。「優れた脚本を基に駄作の映画を作ることは可能だが、ダメな脚本からは良い映画作品を作ることは不可能だ」という名言があるように、ハリウッドの名作と呼ばれる映画には、必ず優れた脚本があります。

また、スティーヴン・キングやマイケル・クライトンなど、人気映画の原作となった小説を多く発表している作家もこの回で取り上げます。近年は商業目的でヒットした文学作品を無理やり映画化するケースが目立ちますが、中には『ショーシャンクの空に』(1994年)や『ジュラシック・パーク』(1994年)など原作に劣らない名作映画も存在します。

また、映画サウンドトラックの名手と呼ばれている作曲者も取り上げます。優れたサウンドトラックというものは、単純にキャッチーな曲を並べたものではなく、映像とマッチングし、ストーリーや登場人物の心境を私たちが気付かない形ですんなり伝えてくれるために不可欠な存在です。例えば『スター・ウォーズ』シリーズの作品を見たことがない人でも、ジョン・ウィリアムズが作った『帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)』がかかれば、誰もが悪役が何かを企んでいるような、不吉な空気を感じてしまうことでしょう。

他には息を呑むような映像美や、ワンカットの長回しなどで観客を釘付けにさせた有名な撮影監督や、映画史に名を残すコスチューム・デザイナーやメイクアップ・アーティストなども紹介します。このカテゴリーには、石岡瑛子やワダ・エミなど優れた日本人のアーティストが存在します。近年はアカデミー賞の「メーキャップ&ヘアスタイリング賞」を2度受賞しているカズ・ヒロが話題になったことが記憶に新しいです。


CINEMA & THEATRE #048

「世界の映画史」シリーズの概要 前編 (1)〜(10) – 映画の黎明期/ハリウッドの誕生/ハリウッドの黄金期/映画監督/俳優


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