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日本とアメリカの子育ての仕方の違いについて考える
 - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』#CollegeAdmissionScandal (2019/04/12放送) | LANGUAGE & EDUCATION #016
Photo: ©RendezVous
2022/02/07 #016

日本とアメリカの子育ての仕方の違いについて考える
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』#CollegeAdmissionScandal (2019/04/12放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.大人になろうとする子供、それを引きとめようとする親

2019年度の2回目のテーマは #CollegeAdmissionsScandal、つまり “大学不正スキャンダル"でした。

アメリカにおいて、子供を名門校に入学させようと、入学試験の担当者や大学のスポーツ・チームのコーチに賄賂を渡したなどとして、人気女優(ロリ・ロックリンとフェリシティ・ハフマン)を含む33人の保護者が刑事訴追された事件です。アメリカの大学システムのあり方そのものを問題視する人もいれば、親による過保護が行き過ぎた事例として見ている人もいます。また、子供の為なら、親はあらゆる手段や対策を惜しまないはずだと、親を擁護する意見もあります。アメリカにおいて、この事件がここまで大きく報道されている理由を知るためには、アメリカにおける大人と子供の関係性を知る必要があります。

日本をはじめ、いわゆるモンスーン・アジア全域の耕作農業社会においては、子供は家計を助ける重要な労働力とされてきました。そのため、子供は大事にされ、“子供っぽさ"も“無邪気さ"も、決して悪いことではありませんでした。しかし、アメリカをはじめとする欧米社会においては、子供というものは、知識やモラルのない“邪悪"な存在と考えられてきました。ですので、アメリカの子供は、誰もが“早く大人になりたい"と思いながら青年時代を過ごします。親も子供に対して、幼いうちから自立心が芽生えるように働きかけ、早く“巣"から追い出そうとします。

アメリカの場合は、18歳になると成人とみなされるので、高校を卒業し大学に入学することは、事実上“大人への入り口"となるのです。(飲酒は21歳からですが。)そのため大学生は、歴とした大人として扱われます。こうした背景があるので、大人として扱うべき子供に対して、自分の子供だけが有利になるように、親があの手この手を使うという過保護な振る舞いに対して、反発があるのです。もっと言えば、親が、悪意を持って子供の成長の邪魔をした、という見方もできるのです。


2.アメリカの過保護な親たち

アメリカでは、こうした過保護な親を指す言葉がいくつもあります。90年代に提唱され、2000年代にいわゆる“ミレニアル世代"の親の過保護を説明する言葉として広まったのが“helicopter parent"という表現です。ヘリコプターで上空にホバリングしながら子供を監視し、困った様子や何かの問題があれば、すぐ降下して助ける準備をしているような親のことを言います。常に子供に対して、いちいちうるさく口出しをするというニュアンスもあります。最近では、“drone parent"、つまり“ドローン親"という言葉も一般的になりました。

ここ何年か使われるようになった表現に“lawnmower parent"、つまり“芝刈り機親"というのもあります。子供がいつも良い思い、良い格好ができるように身の回りの世話をし、障害物を予め“刈り取ろう"とする親のことです。ヘリコポター親は見守るだけだったのに対して、芝刈り機親は子供の先回りをするのです。

ごく最近言われ始めたのが“snowplow parent"、つまり“除雪車親"です。除雪車親は、子供が行く道にある障害物をすべて排出しようとします。道路を整備しようとする意味では芝刈り機親と同じようなものですが、そもそも芝刈り機は家庭にあるような道具であるのに対して、除雪車だと過保護の度合いさらに強まっていることを表しています。こうした傾向が続けば、“戦闘戦車親"が現れる日はそう遠くはないでしょう。とはいえ親というものは、子供のために常に戦っている生き物なのです。


3.日本の“モンスター・ペアレンツ"

一方、日本では、過保護な親や学校などに過剰なクレームをつける親のことを“モンスター・ペアレンツ"と言います。(シングル・マザーやシングル・ファザーであれば、正確には“モンスター・ペアレント"というべきでしょう。)子供のために地形や道路ですら、強引に造り変えるアメリカの親に対して、日本の親は、先生たちを精神的に追い込もうとすることで、自分の子供だけが有利になることを強要する傾向があるのではないでしょうか。かつて、日本では、学校の先生のことをとても尊敬していました。しかし、近年では、先生の資質が低下し、親の方も高学歴な人々が増えてきたので、相対的に学校の先生を“バカ"にする風潮が強くなったことがこうした現象の原因のようです。“モンスター"には「圧倒的な存在感や影響力をもつ人や物」という良い定義もありますが、第一の定義は「怪物」「バケモノ」であることを決して忘れてはなりません。

また、大人になっても親の元で暮らす未婚の子供のことを日本語では“パラサイト・シングル"と言います。“パラサイト"(寄生虫)という言葉からもわかるように、アメリカの子供はとにかく早く巣立とうという本能が働くのに対して、日本では子供をいつまでも巣に停まらせようとする傾向があり、“引きこもり"として社会問題化しています。

『パラサイト・シングルの時代』 山田昌弘(著)
“パラサイト・シングル"という概念は、そもそも本書の著者である、日本の社会学者・山田昌弘が1999年提唱したものです。本書ではパラサイト・シングルがなぜ現れたのか、そしてその層が増殖することで日本の景気や社会にどのような影響を与えるかを洞察しています。

“モンスター・ペアレンツ"にしても“引きこもり"にしても、親の過保護、言い換えれば、親の自己満足がその原因と言えるのでしょう。何かを潰すことで自意識を満足させているのです。こうした心理については、中野信子さんの『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』がとてもわかりやすい新書になっています。

『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』中野信子(著)
スマホとSNS時代において、成功した人のちょっとした失敗を、ここぞとばかりにとがめ、引きずり下ろして袋叩きにする様子は、日常茶飯事に見受けられます。人間はなぜ他人を妬むのか。本作はそういった行動を脳科学の視点から解説した新書です。

因みに、中国系アメリカ人の家庭を始め、子供に対してどこまでも学業成績を求めるようなアジア系アメリカ人の親のことを英語では“tiger parent"と言います。いわゆる“教育ママ"のことです。


4.「誰も負けないようにする」のか「全員が勝つようにする」のか

ここまで、子供に対する親の態度を指す様々な言葉を見てきました。では子供の方にまつわる言葉はどうでしょうか。

日本の場合は、1980年から2010年代初期まで “ゆとり教育"が実施されていました。それまでの“詰め込み教育"(とにかく知識量に重きを置いた教育方針)に対して提示された“ゆとり教育"は、子供に心のゆとりを持ってもらうことを目標に、授業時間とカリキュラムの内容を大幅に減らしました。しかし、その方針は失敗に終わり、今では“ゆとり世代"は、“打たれ弱い世代" “言い訳ばかりする世代"と揶揄され、マイナスなイメージがついてしまっています。また、日本では伝統的に“出る杭は打つ"文化なので、能力や才能がある子供がいたとしても、その可能性を育てるのではなく、潰そうとする傾向さえあるように感じられます。日本社会は、優れた個性よりも凡庸な平等を“よし"とする文化なのです。

一方でアメリカでは、2001年に No Child Left Behind Act (どの子も置き去りにしない法)が実施され、それに加えて2015年にはEvery Student Succeeds Act(どの子も成功する法)が実施されました。この政策の効果については賛否両論があります。こうした近年の政策を“every-child-gets-a-trophy generation"(どの子もトロフィーがもらえる世代)と揶揄する傾向もあります。とはいえ、アメリカ人特有の、誰にでもチャンスを与えようとする前向きな態度だけは、感じられる政策といえるでしょう。

「日本社会は誰も負けないようにする」のに対して、「アメリカ社会は全員が勝つようにしよう」としているようです。言い換えると、日本では目標の水準を下げることで子供に間違わせないようにするのに対して、アメリカは全員に“自分は特別である"ことを叩き込み、成功の感覚を味わせようとしているのです。どちらのアプローチにもメリットとデメリットがあり、そもそも歴史的経緯による社会のあり方そのものの違いもあるので、どちらが正解とは断言できません。日本では頑張っている人や能力のある人を妬み、足を引っ張る傾向があります。一方、アメリカでは、成功している人を尊敬するという文化があります。(最近は、違ってきましたが。)いづれにせよ、子供はやがて大人になり、必ず現実に目が覚める瞬間が訪れます。その時にひどいショックを受けない精神力と、転んでも立ち直れるレジリエンス((心理学用語としての)レジリエンスとは、危機や難局など、自分に不利な場面に直面した時に、いかにそれを素早く乗り越え、ストレスのない状態に戻る能力のことです。“耐性" “回復力" “復元力"と翻訳されることが多いです。)を子供に身につけさせるのが親の役割なのではないでしょうか。

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』ケリー・マクゴニガル(著)、 神崎朗子(訳)
私たちは、すっかりストレスは悪いものだと思い込み、生活や仕事の中の悩みの多くをストレスのせいにしがちです。本書はストレスに対するそんな考え方に疑問を投げかけ、いかにそれを受け入れて上手に付き合っていくかの大切さ、そしてその方法を説いています。


5.今週の衣裳について

「ブルックスブラザーズ」のピンクのチノパン

「ブルックスブラザーズ」のピンクのチノパン
こちらは「ブルックスブラザーズ」のカジュアル・ライン『レッド・フリース』の商品です(税抜き10,000円)。去年もこのラインのチノパンを何枚か購入し、とても気に入っていたので、先日春物が新しく入荷していることを見て、春の衣裳として購入しました。スリムなフィットと、フロントを閉じる時に締める、先端が少し出ている“持ち出し"と呼ばれる部分がポイントです。新年度1回目に続き、今週も桜をイメージしました。

「ブルックス・ブラザーズ」の赤いコットン・ブレイド・ベルト

「ブルックス・ブラザーズ」の赤いコットン・ブレイド・ベルト
こちらは「ブルックス・ブラザーズ」のカジュアル・ライン『レッド・フリース』のコットン素材の網ベルトです(税抜き6,000円)。ベルトの先とループのところにレザー素材が施されており、赤いステッチはいかにも『レッド・フリース』らしいアクセントです。

「タビオ」のグレイのソックス

「タビオ」のグレイのソックス
こちらは表参道ヒルズ内の靴下専門店「タビオ」で購入したグレイの『リブソックス』(税抜き900円)です。毎シーズン新しいカラーが色々発表されるので、靴下を楽しみたい方は是非一度訪れて見てください。

「MFYS」のカフリンクス

「MFYS」のカフリンクス
こちらはアマゾンのカフリンクス専門店「MFYS」から購入したものです(510円+送料)。ラウンドの形に青い渦巻きのデザインが清々しいものとなっています。

「ブルックス・ブラザーズ」のグレイのジャケット

「ブルックス・ブラザーズ」のグレイのジャケット
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #007を参照してください。

「ディファレンス」のピンクのボタン・ダウン・シャツ

「ディファレンス」のピンクのボタン・ダウン・シャツ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #008を参照してください。

「パラブーツ」の黒い『ランス』

「パラブーツ」の黒い『ランス』
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #010を参照してください。

「ゾフ」の黒いメガネ

「ゾフ」の黒いメガネ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #006を参照してください。

6.エピローグ:スタイリスト・Scarlet によるアンサンブルのポイント

今回は、2019年度の第2回の放送ということもあり、春らしい、フレッシュなイメージを心がけてみました。

青山通りの「ブルックス・ブラザーズのフラッグシップ」で見つけたキレイなピンクのチノパンを中心にコーディニットをしてみました。

桜の季節でもあるので、ピンクをボディーの中心にするために、シャツもピンクのボタンダウンにしました。

MCの遼河はるひさんの衣裳方向がまだ掴めていないので、KAZOOがあまり派手に見えないようにジャケットとソックスは無難なグレイにしてみました。

通常ボタンダウンのシャツのカフスは、ラウンドかスクウェアのボタンにするのですが、KAZOOのこだわりで、ダブル・カフスにしています。KAZOOのこだわりのカフリンクにも注目してください。

今回、ピンクのシャツとパンツの間に「ブルックス・ブラザーズ」の『レッド・フリース』の布の赤いベルトをコーディニットしたのですが、残念なことにオンエアではずっと着席していたので、赤いベルトは映りませんでした。またどこかのシーンでこの赤いベルトは使用するつもりです。

コリン・ファレルへのインタヴューで再度、グレイのチェックのダブルのスーツの全身のショットがインサートされていたので、嬉しくなりました。


LANGUAGE & EDUCATION #016

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