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有力ラケット・メイカーの違い (2)
  - 洗練されたデザインとタッチの良さで知られるヨーロッパの「ヘッド」 | SPORTS & CULTURE #006
Photo: ©RendezVous
2021/08/02 #006

有力ラケット・メイカーの違い (2)
- 洗練されたデザインとタッチの良さで知られるヨーロッパの「ヘッド」

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BigBrother
プランナー / エディター / イヴェント・オーガナイザー

目次


1.プロローグ

このシリーズでは有力ラケット・メイカーの人気モデルの違いについて紹介しています。アメリカを代表するWilsonに続き、今回はヨーロッパを代表するHEADの各ラケット・シリーズの魅力とそれぞれの違いについて説明します。


2.HEADの歴史について

HEADは、1950年にアメリカのデラウェア州で創業され、現在はオランダのアムステルダムに本社を置くスポーツ用品メイカーです。1960年代から現在に至るまで、アルペン・スキーの分野においてトップ・ブランドとしての地位を保っています。オリンピックやワールド・カップのアルペン・スキーにおいて、常に上位に入賞し、競技用スキーにおいては国際的に高い評価を得ています。

テニス・ラケットについても1960年代後半から、木製ではないアルミ製のラケットを展開するなど、先進的なラケットの製作を行なっています。

現在もノウベル物理学賞を受賞したアンドレ・ガイム氏とノボセロフ氏が開発した“グラフィーン"と呼ばれる新しい素材を使った“SPEED"シリーズを販売しています。

HEADは、現在も数多くのトップ・プロのテニス・プレイヤーと契約をしており、プロや上級者向けのラケットが多くあることが特徴です。また、ラケットやバッグなどのデザインが良いことでも知られています。


3.SPEED シリーズ

SPEEDシリーズは、その名の通り、ラケットのスウィング・スピードの速さ(ヘッドが走る速さ)がコンセプトです。パワーとコントロール性のバランスも良く、グランド・スラマーのノヴァク・ジョコヴィッチ選手はストリング・パターン18×20の310 gのPROを、2019年に2人ともグランド・スラム初優勝を果たし大活躍をしたアシュリー・バーティ選手とビアンカ・アンドレースク選手はストリング・パターン16×19で300 gのMPを使用しています。

PROはよりコントロール性が良く、MPはスピン性能が高いセッティングとなっています。

重量が軽いSPEED MP LITEとSPEED LITEというラケットも開発されていますが、SPEEDシリーズの本当の良さを感じるには、PROかMPをオススメします。


4.GRAVITYシリーズ

SPEEDシリーズは、そのスピードが最大の特徴であるのに対して、2019年より展開されている最新ラインGRAVITYはとても大きなスウィート・スポットが特徴です。涙の形を逆さにしたフェイス面は全モデル100平方インチ以上で、その名前の通り、どんなに重いボールでも打ち返せる安定感があります。

とはいえ、その特徴的な形により、そのスウィート・スポットの位置がフェイスの真ん中ではなく先よりになっており、中・上級者からすると慣れるまで多少の違和感があるでしょう。新しい時代のテニス・スタイルを感じさせるシリーズです。

近年、急成長してきたアレクサンダー・ズヴェレフ選手は、2019年夏頃からGRAVITY PRO(ストリング・パターン18×20、重量310 g)を使用しています。他にも5 g軽いGRAVITY TOUR(ストリング・パターン18×20、重量305 g) 、104平方インチの大きなフェイス面を持ったスピン重視の GRAVITY S(ストリング・パターン16×20、重量280 g)もあります。


5.RADICALシリーズ

BIG 4の1人であるアンディ・マレー選手が推奨するのがRADICALシリーズです。(実際には、マレー選手はボックス型のプロトタイプのラケットにラディカルのコスメティックス(デザイン)を施した非売品のラケットを使用しています。)

パワー、スピンに加え、スピード感のある対応力があるため、攻撃的なプレイ・スタイルのプレイヤーに向いたラケットになっています。かつてはアメリカのテニス界のレジェンドであるアンドレ・アガシ選手が使用していたことでも知られます。

310 gのPROよりもやや軽い295 gのMPの方が、よりRADICALらしさが感じられます。

大学の体育会の選手や20歳台のテニス・クラブ常連のプレイヤーにはとてもいい“武器"となることでしょう。


6.PRESTIGEシリーズ

HEADの“ボックス型"のラケットが“PRESTIGE"シリーズです。“ボックス型"の特徴であるコントロール性とタッチの良さがとてもよく現れています。

マリン・チリッチ選手が使用している“PRESTIGE MID"はストリング・パターン16×19、ラケット面が93平方インチととても小さく、重量が320 g(チリッチ選手はより重くセッティングしていると思われます)というスペックなので、きちんとしたボディ・ターンのできないプレイヤーには全く扱えないでしょう。

基本のしっかりしているプレイヤーがスウィート・スポットでボールを打てた時、フィーリングは“格別"なものとなります。

ジル・シモン選手が使用している“PRESTIGE MP"は、ストリング・パターン18×20、ラケット面が95平方インチ、重量が320 gのラケットで、“MID"より更にコントロール性とタッチの良さが加えられており、上級のヴェテラン・プレイヤーに最高のフィーリングを与えてくれます。

試合に勝つためではなく、ラリーを楽しむプレイヤーであれば、“PRESTIGE MP"にナチュラルのストリングスを張って使ってみることをオススメします。


7.INSTINCTシリーズ

INSTINCTシリーズは、簡単に素早い反応をサポートしてくれる工夫がなされたベイスライン・プレイヤーのためのラケットです。INSTINCT MPはいわゆる“黄金スペック"(100平方インチ、300 g、ストリング・パターン16×19)のラケットで幅広いプレイヤーに人気があります。

ラケットをフルに振り抜くタイプの元プレイヤーである長身のトマーシュ・ベルディヒ選手もマリア・シャラポワ選手も使用していたことから分かるように、幅広いプレイヤーに対応しているラケットです。

ラケット面が107平方インチ、重量が270 gのINSTINCT LITEは、よりスウィート・スポットが大きくなっており、シャラポワ選手に憧れる女性プレイヤーにオススメのラケットです。


8.EXTREMEシリーズ

EXTREME PROは、グリグリのスピンをかけることで有名な(試合中にグリップ・テープを頻繁に交換することでも有名な)リシャール・ガスケ選手が使用することで知られるHEADのスピン・ラケットです。

EXTREME PROもいわゆる“黄金スペック"のラケットで、スピン主体の体育会の大学生の選手にオススメの一本です。


9.ヴェテランのダブルス中心のクラブ・プレイヤーにオススメのラケット

HEADはより幅広い層にとって使いやすいMxGシリーズを展開しています。

最新のテクノロジーによって、スウィート・スポットをより拡大させ、身体にも優しい設計になっています。

MxGシリーズの中でもパワーのあるMxG 3がヴェテランのダブルス・プレイヤーにはオススメです。

また、PWR(パワー)シリーズもテクニシャンのヴェテラン・プレイヤーにはオススメです。

ストリングス、トップスピン、ドロップ・ショットなどのタッチが良く、これまで培ってきたテクニークが生かされるラケットです。

HEADはまた、ジュニア向けのラケットも充実しているので、成長に合わせて買い換えていくことをお勧めします。


10.デザインが優れたHEADのバッグ

HEADは、バッグのデザインも“つくり"が秀逸なので、HEADのラケットを使用するプレイヤーは、是非バッグも購入するといいと思います。


11.エピローグ

2019年のグランド・スラム優勝者を振り返ると、男子ツアーでは、ノヴァク・ジョコヴィッチ選手が全豪オープンとウィンブルドン、女子ツアーではアシュリー・バーティ選手が全仏オープン、ビアンカ・アンドレースク選手が全米オープンと、HEADのラケットを使用した選手が大活躍しました。

また、バーティ選手やアンドレースク選手、男子ツアーではスヴェレヴ選手など、これからのテニス界を担う若手の活躍が目立つようになっていることも注目のポイントでしょう。



次回以降、Babolat、YONEX、Princeのラケットについても紹介していきます。お楽しみに!


SPORTS & CULTURE #006

有力ラケット・メイカーの違い (2) - 洗練されたデザインとタッチの良さで知られるヨーロッパの「ヘッド」


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