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KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (27) 
 映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のスター、オスカー・アイザックとジョン・ボイエガへのインタヴューを振り返って 
 - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』 (2020/01/17放送) | CINEMA & THEATRE #031
Photo: ©RendezVous
2022/10/03 #031

KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (27)
映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のスター、オスカー・アイザックとジョン・ボイエガへのインタヴューを振り返って
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』 (2020/01/17放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.『スター・ウォーズ』最新シリーズの悪ガキ2人へのインタヴュー

1月17日放送の『世界へ発信!SNS英語術』では、2019年のクリスマスに公開された、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のキャスト・インタヴューを放送しました。2015年の『フォースの覚醒』、2017年の『最後のジェダイ』からなる続3部作の完結編である本作の公開に先駆け、監督とキャストは世界中を飛び回り、作品を宣伝しました。今回は、シリーズの主人公格である2人、オスカー・アイザック氏とジョン・ボイエガ氏をインタヴューすることができました。

アイザック氏が演じる反乱軍の敏腕パイロット「ポー・ダメロン」は、クールな立ち振る舞いで、危険を顧みない無鉄砲な性格なのですが、徐々にリーダーへと成長していく姿が描かれています。一方、ボイエガ氏が演じる帝国から脱走したストームツルーパー「フィン」は、臆病な性格で危険と直面するとパニック状態になる性格なのですが、少しずつ新たな人生の目的と意義を見つけ出す姿が描かれています。

本シリーズではこの2人が絡み合う微笑ましいシーンがとても多く、今回の最終章でもそれが1つの見どころとなっています。2人は作中でも、宣伝活動中でも、私生活でも仲良しコンビというイメージが定着しており、僕と『世界へ発信!SNS英語術』の担当ディレクターは、その仲の良さを引き出したいという目論見で今回のインタヴューに臨みました。

10分という限られた持ち時間だったため、当初は不安もありましたが、インタヴューを開始するやいなや、その心配はすぐ吹き飛びました。僕が最初の質問としてアイザック氏に「ポーを演じ終えることについて、どんな点が一番寂しいですか?」と聞くと、アイザック氏とボイエガ氏はお互いを一瞬見つめあって、突然朗らかに笑い出しました。僕はその瞬間、むしろ心配するべきだったのは、2人の暴走を止められるかどうかであるということに気付きました。お互いにしか、わからないような秘密を隠している中学生のように、2人は終始、照れ臭そうに笑い合っていました。

それに対して僕は、悪ガキ2人を呼び出した校長先生のような気分でインタヴューを進行しました。


2.センシュアルなチャーミングさがあるオスカー・アイザック

1979年に中米のクァテマラで生まれたオスカー・アイザックは、ここ10年の間で、アメリカでは数少ないラテン系の主役級の俳優へと成長しました。

フロリダ州のマイアミで育ったアイザック氏は、子供の頃からいたずら好きで、人を笑わせることが好きだったようです。キリスト教主義学校では様々なトラブルを起こし、結局退学となりました。しかし、その後、マイアミ周辺でバンドのギターとヴォーカルを担当し、21歳の時に世界で最も優秀な音楽大学の1つとされるジュリアード音楽院に入学しました。卒業した後、本格的に俳優活動も始めました。

キャリアのはじめは比較的シリアスでシニカルな役柄が多く、その時代を象徴するのが、2013年の『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』です。悲劇的なコメディであるこの作品でアイザック氏は、時代の波にうまく乗れずに生活がどんどん苦しくなるフォーク歌手を演じています。撮影中に生で録音されたとされる劇中歌は高い評価を受け、アイザック氏はブレイクしました。

2015年には、AIをテーマにしたSFスリラー映画『エクス・マキナ』で天才プログラマ/ICT企業の社長を演じ、今度はオーディエンスを引き込むようなセンシュアルな魅力で話題となりました。それを象徴するのが、こちらのダンス・シーンです。

プロ並みのギターの腕と歌唱力と、ラテンの血を生かした男らしさでファンを魅了したアイザック氏は、『スター・ウォーズ』続3部作の主役の1人に抜擢され、スターとして不動の地位を確立しました。彼が演じるポーには、『スター・ウォーズ』原作のハン・ソロを思い出させるようなチャーミングさがあり、大人気のキャラクターとなっています。ネット上では、今の時代にふさわしい理想的な男性像として持ち上げられるようになりました。

実は2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の製作当初、ポーというキャラクターは映画の前半で死ぬこととなっていたと、監督のJ・J・エイブラムズは明かしています。きっとアイザック氏は、その独特のチャーミングさで監督を魅了し、延命したのでしょう。


3.SNSと人生を満喫しているジョン・ボイエガ

ジョン・ボイエガ氏は、ナイジェリア出身の両親の下に1992年に英国で生まれました。小学生の頃から演劇に目覚め、9歳の時に南ロンドンの劇場の芸術監督に見出され、劇団に参加するようになりました。中学・高校では学校が企画する演劇作品にも出演し、大学では舞台芸術を専攻しました。

ボイエガ氏は、2011年の『アタック・ザ・ブロック』で映画デビューを果たし、ブレイクしました。 この作品は、南ロンドンのブロック(マンション)を舞台に、地球を襲ってきた宇宙人と立ち向かうストリート・ギャングを描いたSFアクション映画です。ボイエガ氏は、少年ギャングのリーダーであるモーゼスを演じたことで、広く認識されることとなりました。渋々マンションの住民のために立ち上がるモーゼスを演じた彼が、その後『スター・ウォーズ』シリーズで戦いに巻き込まれたくない脱走兵のフィンに抜擢されたのは納得できることです。

脱走兵という深刻なキャラクター設定のフィンですが、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では、彼が慌てふためいて、滑稽に逃げ回る様子が主な笑いの要素となっています。ボイエガ氏の面白さと遊び心は、本シリーズだけでなく、彼のインスタグラムでも伺うことができます。例えば、こちらの動画では、ボイエガ氏がインタヴュアーとインタヴュイーの2役を自ら演じ、普段の英国訛りと見事なアメリカ訛りを見せています:

他にも、相棒のオスカー・アイザック氏を笑いのタネにした動画を多く投稿しています。例えば、日本にいる間に訪れた、ブタに触れることのできるカフェの様子を撮ったこちらの動画です。途中に“オスカー"が登場するところに、注目してください:

そして次のインスタグラム投稿では、ボイエガ氏がアイザック氏に当てたラヴ・レターを読み上げています。最後に会った時から2週間も経ち、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のプレミアにデートの相手として一緒に行って欲しいと誘う、微笑ましい姿が見られます:


4.問われる「ディズニー」の進化

アイザック氏とボイエガ氏のこの中の良さっぷりを、番組では“bromance"(romance + brotherを合わせた造語)というスラングで表しました。この言葉には、「友達以上恋人未満」というようなニュアンスが含まれますが、“romance"という言葉とは裏腹に、性的な対象として見ていない関係性に対して使われます。

実は、この2人の相性があまりにも良いことから、2015年に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』がリリースされたときから、2人はカップルになるのではないか、あるいはカップルになるべきだと噂されていました。ネット上の熱狂的なファンは、2人のそんな関係のファンタジーを描いた “fan fiction"(二次創作物語)を執筆し、「遠い昔 はるか彼方の銀河系」を舞台とする『スター・ウォーズ』が、ようやく現代の性的多様性を反映することとなるのではないかという期待が密かに描かれました。

ここで忘れていけないのが、『スター・ウォーズ』は現在、ディズニーの傘下にあるということです。ディズニーといえば、近年、過去の名作を、より今日の世の中の価値観を反映した形でリメイクしています。その中にはゲイやレズビアンだと噂されるキャラクターもいくつもいますが、依然として、公にLGBTであるキャラクターは事実上存在していません。

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』でもやはり、アイザック氏が演じるポーとボイエガ氏が演じるフィンは、友達として物語を終えます。

そればかりか、本作にはわざわざ2人に対してそれぞれに恋愛の対象となる女性が登場し、多くのファンをがっかりさせました。アイザック氏とボイエガ氏本人たちも、最近のインタヴューの中で、2人の関係が特別であることを認め、その絆を作品の中でより具体的に見せることができなかったことは残念であるという発言をしています。

監督及びディズニーが最終的に2人の関係を“bromance"ではなく本物の“romance"として描かなかった(もしくは描けなかった)ことには、いくつかの理由が考えられます。まずは、『スター・ウォーズ』シリーズのファンの中には、異性愛者(“ストレイト")の白人男性が圧倒的に多いことが考えられます。また、トランプ政権に代表されるように、現在アメリカ社会には、LGBTに対する差別や職場からの排除を押し進めようとする動きがあり、社会全体にピリピリした空気が漂っているのです。

そしてもう1つの理由は、ディズニーという会社が時代に追いついていけていないということです。ディズニーは、世界中の子供達に夢を与えることをコンセプトとした会社です。全ての人に受け入れられ、全ての人に愛される夢を描こうとすると、それは自ずと「当たり障りない夢」となるのはないでしょうか。

その結果、LGBTの人からすると明らかにLGBTのペルソナのキャラクターでも、ディズニーはそれを決して認めようとはしません。そのキャラクターがLGBTであると決めつけることによって、LGBTでない視聴者が感情移入できなくなることを恐れているからでしょう。しかし、全ての人が共感できる夢は、すなわち誰にも響かない夢とも言える時代になってきているのではないでしょうか。いよいよディズニーの進化が、問われているのです。


5.この日の衣裳について

「グローバル・スタイル」のグレイのスーツ

「グローバル・スタイル」のグレイのスーツ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #008を参照してください。

「麻布テーラー」の白いシャツ

「麻布テーラー」の白いシャツ
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #014を参照してください。

「ブルックス・ブラザーズ」のグレイのソックス

この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #008を参照してください。

「アレン・エドモンズ」の『パーク・アヴェニュー』

「アレン・エドモンズ」の『パーク・アヴェニュー』
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #024を参照してください。

「999.9」の『M-27』

「999.9」の『M-27』
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #005を参照してください。


CINEMA & THEATRE #031

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