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KAZOOのアメリカ観を形成した映画 (2) 
 - 『アメリカン・グラフィティ』『イージー・ライダー』『ビッグ・ウェンズデー』『エンドレス・サマー』 | CINEMA & THEATRE #002
2021/06/15 #002

KAZOOのアメリカ観を形成した映画 (2)
- 『アメリカン・グラフィティ』『イージー・ライダー』『ビッグ・ウェンズデー』『エンドレス・サマー』

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.プロローグ

CINEMA & THEATER #001 のエピローグでは、カリフォルニアの郊外の生活を見事に描いた青春物語『アメリカン・グラフィティ』(通称“アメグラ")について触れました。 今回は、“アメグラ"をはじめ、僕が生まれ育った米国・カリフォルニア州を舞台にした映画や、サーフィンを題材にした映画を紹介します。それに加え、カリフォルニア的なライフスタイルやサーフ・カルチャーを題材にしたポップ・サウンドやハーモニーで知られる「ビーチ・ボーイズ」の影響を強く受けた日本のシンガー・ソングライター、山下達郎の名作を紹介します。


2.『アメリカン・グラフィティ』(1973年)
監督・脚本:ジョージ・ルーカス

この映画は、ベトナム戦争が泥沼化する前の“古き良きアメリカ"、“世界で一番、偉大な国アメリカ"を象徴している映画です。

監督・脚本をジョージ・ルーカス、製作は、僕が卒業したUCLAの先輩でもあるフランシス・フォード・コッポラが担当した、1973年にアメリカで公開された映画です。

舞台は、1962年のルーカスが高校時代を過ごしたカリフォルニアのモデストという街です。この街は、サンフランシスコから車で約2時間内陸にあり、僕が生まれ育った街ととてもよく似ています。

僕は、この映画を中学生の時に近くの映画館で観たのですが、僕の両親が青春時代を過ごした時代と重なるので、少しセンチメンタルな気分になった記憶があります。

低予算ながら大ヒットしたこの映画の成功で、ジョージ・ルーカスは『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の製作への手がかりを掴みました。

ラジオDJのウルフマン・ジャックが流すBGMもどれも素晴らしく、ドライブに最適です。

この映画を観て、僕も大きくなったら、ウルフマン・ジャックのようなラジオDJになりたいと思いました。


3.『イージー・ライダー』(1970年)
監督:デニス・ホッパー

この作品は、1970年に公開されたアメリカン・ニューシネマと呼ばれるスタイルの代表作です。このムーブメントによって新しい世代の映画製作者が頭角を現し、映画界を変えました。

この映画を観ることで、両親の青春時代のカウンター・カルチャーであり、アメリカ社会の主流な道徳観を拒否した、ヒッピー・ムーブメントについて、感覚的に知ることができました。

ピーター・フォンダの乗っている「キャプテン・アメリカ」のチョッパータイプではなく、この作品で監督も務めているデニス・ホッパーの乗るハーレーダビッドソンの方に強く憧れました。僕もいつかは、ハーレーダビッドソンでルート66を使ってアメリカ大陸を横断したいと思っています。

この映画のサントラもドライブに最高です。『ワイルドでいこう!』は象徴的な曲です。

『イージー・ライダー』サウンドトラック

4.『ビック・ウェンズデー』 (1978年)

僕の住んでいたところは、カリフォルニアといってもやや内陸の地域で、海に近いわけでもありません。(カルフォルニア州は、ほぼ日本の本州ぐらいの大きさがあります)

しかし、カリフォルニア・ボーイにとって、“マリブ"という場所には特別な響きがあります。“ビバリーヒルズ"と並んで神話的な場所です。

この映画は、その“マリブ"を舞台にしたサーフィン+青春映画です。サーフィンとスケートボードは、カリフォルニアの少年には、いつまでも憧れなのです。


5.『ブルー・クラッシュ』 (2002年)
主演:ケイト・ボスワース

『ブルー・クラッシュ』というハワイ・オアフ島でプロサーファーを目指す女の子の映画を高校生の時に観ました。

中学生の頃に家族と行った時に、とても心が惹かれたノースショアーのバンザイ・パイプラインを舞台にした物語でした。

この映画は、ストーリーとかテーマが良いというより、パイプラインやチューブライドということ自体に、とても強いパッションと原始的な憧れを感じた作品です。


6.『エンドレス・サマー』 (1966年)

『エンドレス・サマーⅡ』 (1994年)

『ステップ・イントゥ・リキッド』 (2003年)

『エンドレス・サマー』は、1966年のブルース・ブラウン監督によるサーフィンのドキュメンタリー映画です。ブラウンは1994年に『エンドレス・サマー』の続編として『エンドレス・サマーⅡ』を製作しました。2003年の『ステップ・イントゥ・リキッド』は、ブルースの息子であるデイナ・ブラウン監督によるサーフィンのドキュメンタリー映画です。

この3本とも、表面的には最高の波を求めて世界各地をひたすら巡るだけのサーファーを追ったドキュメンタリーです。しかし、この3本を通して観ると、サーファーという生き方がどんなものなのかが少し、分かった気がします。サーフィンのスピリチュアルな意味や、彼らが、禅や瞑想に興味を持つ理由が理解できました。

このドキュメンタリーを通じて、僕の父も僕の母もそして、僕自身も実はサーファー気質だったのではないかということに気付かされました。

日々、仕事や勉強に追われて、人生の意味や価値を失いかけている方は、必見です。自分が抱えているトラブルがいかに小さなことなのかに、気づくはずです。

最近、NHKのBSで立て続けに2本の“サーフィン"に関するドキュメンタリーを観ました。1つは、ポルトガルのナザレで大波に挑むサーファーたちの話で、もう一つは、ノースショアのパイプラインでチューブライドに人生をかけているサーファーの話でした。

やはり大波というものは、人生をかける程、男の心を動かすものなのですね。


7.『ビッグ・ウェイブ』 (1984年) 監督:ウォルター・マルコネリー

『ビッグ・ウェイブ』(サウンドトラック) 山下達郎

これは、前に紹介した作品に比べると世界的には、あまり評価の高い作品ではありません。この映画のことを知ったのは、日本で出会ったベスト・ミュージシャンの1人、山下達郎のディスコグラフティからです。チューブライディングの写真のカバーを見た瞬間、ドキッとする思いがしました。

山下達郎について知ったのは、東京で暮らすようになって友人とドライブしている時に、コンピレーション・アルバムの『カム・アロング』と『カム・アロング2』のCDを連続してかけてくれた時でした。

日本語と英語が入り乱れた歌詞で、ちょっとアメリカンスクールの高校生が日本語と英語をチャンポンにしている感じと似ていました。山下達郎の英語の発音が案外良いので聴きやすいです。

そのアンビバレントなスタイルが、とても新鮮に感じられました。20歳代後半の僕は、日本人なのかアメリカ人なのか、ちょうど自分のアイデンティティについて悩んでいた時期でした。そんな僕に、日本人であり、アメリカ人であり、そのイイトコドリでいいんだということを山下達郎は、教えてくれた気がしました。

それ以来、山下達郎の音楽をよく聴くようになりました。

この『BIG WAVE』というサントラに収録されている『Jody』の英語ヴァージョンは、特にお気に入りです。夏らしい哀愁が漂うこの曲は、僕にとってとても大切な思い出の曲となっています。


8.『カム・アロング』/『カム・アロング2』/『カム・アロング3』

2017年に33年ぶりに山下達郎の『Come Along』シリーズの第3弾がリリースされました。

『Come Along』シリーズの1と2は、当初、販促用のアナログ・レコードであり、山下達郎の曲が小林克也のラジオDJトークで繋げられています。33年ぶりに3枚目がリリースされることは、ちょっとした奇跡に思えます。

また、アナログ・レコード・ブームの再来、山下達郎の音楽の普遍性、小林克也の圧倒的な洋楽愛、そして僕自身、30代になってやっと沖までこぎつけたことを踏まえると、どこか、僕にとっては、目に見えない赤い糸でつながっているように感じられるような不思議なアルバムです。

そして、山下達郎という日本の素晴らしいミュージシャンが、より多くの世界の人々に知られることを心より願っています。彼の音楽は、見逃したくない「誘い」です。


9.エピローグ

僕がいつの日か、中学生の頃に見たオアフ島のノースショアのパイプラインで、チューブライドがしたいとBigBrotherに話したところ、それならば、クロールで10km、ノンストップで泳げる体力をつけることと、サーフィンのトレーニング用のスケートボードをグーフィースタイル(左足を後ろ側に置くスタンス)で乗れるようになることをアドバイスしてくれました。

2000年以降、パイプラインで開かれるプロ・サーフィンの大会では、グーフィー・フッターはなかなか活躍できていないようですが、BigBrotherによると、“バックドア"と呼ばれるレギュラーサイドより、グーフィーサイドの方が、有利だからだそうです。

サーフィンのトレーニングの第一段階として9フィート位のロングボードを念頭に置いて35インチのものと6.8フィート位のファンボードを念頭に32インチのWoody Pressのスケートボードの2本購入しました。

このスケートボードを使って日々、カーヴィング・ターンによるスラロームと登り坂でのチック・タックの練習をしています。


CINEMA & THEATRE #002

KAZOOのアメリカ観を形成した映画 (2) - 『アメリカン・グラフィティ』『イージー・ライダー』『ビッグ・ウェンズデー』『エンドレス・サマー』


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