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KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (19) 
 映画『ジョン・ウィック:パラベラム』の主演・キアヌ・リーヴスへのインタヴューを振り返って
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/10/04放送) | CINEMA & THEATRE #023
Photo: ©Ikeji Uju
2022/05/23 #023

KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (19)
映画『ジョン・ウィック:パラベラム』の主演・キアヌ・リーヴスへのインタヴューを振り返って
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/10/04放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.キアヌ・リーヴスへのインタヴューに向けてドキドキ

NHK Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』10月4日放送分ではキアヌ・リーヴスへのインタヴューが放送されました。リーヴス氏は最新作『ジョン・ウィック:パラベラム』のプロモーションで来日していました。

今回リーヴス氏へのインタヴュー取材が決まったことを受けて、番組の本編のテーマとしてもキアヌ・リーヴスを取り上げることになりました。リーヴス氏は、その偽りのない生き様や紳士的な行いからSNSを始め、インターネット上で伝説的な存在となっているのです。しかし、僕の中には少し戸惑いがありました。リーヴス氏は口数が少ないことで有名で、インタヴューでは、これまでもプライヴェートの話はほとんどしてこなかったからです。インターネットにおいて拡散される“キアヌ伝説"から、彼はインタヴューというものにあまり関心がない印象を受けていました。

ただその一方で、彼の存在そのものが非常にSNS向けであることも確かなのです。一般的なスターは自らのパブリック・イメージを慎重にコントロールするため、SNSでは“作られた"場面やセレブ的な姿ばかりを公開します。そうした傾向に対してリーヴス氏は、そのようなことに一切興味がないのです。彼がNYCの地下鉄に乗ったり、ホームレスの男性と談笑したり、ボロボロになった靴を履き続ける様子は、SNSで度々拡散されています。こうしたスターやセレブのイメージとはかけ離れた質素な生活に、ネット市民はむしろ好感を抱いています。謎めいた、ありのままのキアヌ・リーヴスが、多くのファンを虜にしているのです。

見方が変えると、そんなリーヴス氏こそ、今までのインタヴュイーの中でも最も『世界へ発信!SNS英語術』の番組コンセプトにふさわしい人物なのかもしれません。口数が少なかったとしても、仮にSNSについて話が盛り上がらなかったとしても、そもそもリーヴス氏の魅力はそこではないからなのです。彼のマイペースな雰囲気さえ引き出すことができれば、インタヴューは成功と言えるのではないか。そんな思いを胸に、臨みました。


2.個性的なアクション・スターとしてのキアヌ・リーヴス

俳優としてのキアヌ・リーヴスといえば、真っ先に思い浮かぶキャリアは『スピード』や『マトリックス』などのアクション映画でしょう。これらの作品におけるリーヴス氏の存在感と、そこに見られるヒーロー像を分析すると、彼のスタイルは典型的なアクション・スターと全く異なっていることがわかります。

リーヴス氏は、90年前後にキャリアをスタートさせた頃は、ちょっとおバカな好青年・美男子というキャラでブレイクしました。89年の『ビルとテッドの大冒険』ではロックスターを夢見る怠け者な高校生、91年の『ハートブルー』では男性ホルモンを放出するサーファーに扮したFBI捜査官を演じ、こうしたイメージが確立されました。

その後、90年代を代表するアクション映画の名作『スピード』(1994年) のヒットによってリーヴス氏はアクション俳優として注目されるようになります。最初から最後まで緊張感のある、初々しいヒロイン役のサンドラ・ブロックと、見事なまでに異常な悪役のデニス・ホッパーは、本作の独特のスタイルとなり、その後のアクション映画に大きな影響を与えました。そんな中、リーヴス氏が演じるヒーローのジャック・トラヴェンの特徴といえば、「いい人」である以外にあまり印象に残りません。しかし、主役のリーヴス本人は、アーノルド・シュワルツェネッガーやシルヴェスター・スタローンのようなマッチョでもなければ、89年のアクションの名作『ダイ・ハード』のブルース・ウィリスのような冷笑的なユーモアのセンスもないのです。

世界中に衝撃を与えたSFアクション映画『マトリックス』(1999年)はどうでしょう。リーヴス氏が演じる主人公の「ネオ」は、昼間は大手ソフト会社のコンピューター・プログラマー、夜にはコンピューター犯罪を犯すクラッカーという役柄です。そんな“ギーク"が、自分は実は人類の救世主であることに目覚めるというストーリーなのです。本作はそれまでのアクション映画の常識を覆したことで知られています。何よりその後のデジタル時代を暗示していた、「ネオ」という存在は“新しい"アクション・ヒーローとなりました。

その後、リーヴス氏はちょっとしたスランプ期に入リますが、2014年の『ジョン・ウィック』で再び大きな注目を浴びるようになります。引退したはずの殺し屋が、ある事情によってしぶしぶ裏社会に戻ることとなる復讐劇である本作は、アクション映画好きのための究極のアクション映画と言えます。50歳代に突入したリーヴス氏は、激しいアクション・シーンをほとんどスタントマンに頼らずに自分でこなしたことも、大きな話題を呼びました。時代や映画業界が彼に追いついたのか、今やリーヴス氏こそアクション・スターの典型ともいえる俳優となったのです。


3.『ジョン・ウィック』シリーズの人気の秘訣

『ジョン・ウィック』
伝説的な殺し屋のジョン・ウィックは、最愛の女性と出会い、裏社会から足を洗います。しかしある日、愛車を奪われ、愛犬を殺されたジョンは、再び裏社会に戻り、かつての同業者に対して復讐を計ることとなります。

『ジョン・ウィック:チャプター2』
第1作の出来事から5日後、ジョン・ウィックはかつての借りがあるイタリア系犯罪組織の幹部からある暗殺を依頼されます。裏社会の掟として断れないウィックは、しぶしぶその依頼を受けることになります。

『ジョン・ウィック:パラベラム』
第2作の結末で裏社会の掟を破ってしまったため、懸賞金1,400万ドルをかけられたジョン・ウィックは、全世界の殺し屋たちに追われることとなり、報いを探し求めます。


4.キアヌ・リーヴスのプロフィールと代表的作品

キアヌ・リーヴス(1964年~)は、レバノン出身のカナダ人の俳優です。1989年の『ビルとテッドの大冒険』でブレイクし、1994年の『スピード』で国際的なスターとなりました。1999年の『マトリックス』で再ブレイクしました。

『ビルとテッドの大冒険』(1989年)
成績次第で、歴史の授業を落第する危機に瀕している怠け者の高校生コンビ、ビルとテッドの前に謎の男が現れ、電話ボックス型のタイムマシンを使って過去へと旅に出るというSFコメディ映画です。

『ハートブルー』(1991年)
リーヴスが演じるエリートFBI捜査官のジョニー・ユタが、L.A.のヴェニス・ビーチ付近で銀行強盗を繰り返す犯人グループに潜入するというアクション映画です。

『スピード』(1994年)
爆破テロ犯が路線バスに、スピードが50 mph(約80km/h)を下回ると爆発する爆弾を仕込みます。リーヴスが演じるSWAT隊員が、この事態に対応することとなります。本作は発表された当時、「『ダイ・ハード』の舞台を超高層ビルからバスに置き換えたコピーモノ」と評する人もいましたが、90年代を代表するアクション映画となりました。

『マトリックス』(1999年)
マシーンが作り出した仮想現実「マトリックス」によって奴隷とされた人類の一部が反乱を起こすというSFアクション映画です。インターネットというものが、ちょうど一般に普及し始めた頃にリリースされた本作は、「リアルとヴァーチャル」や「AIの脅威」など、ICTの時代のテーマにいち早く着目した傑作です。


5.“スタント"ではなく“アクション"にこだわるリーヴス

インタヴューでは「ご自身でスタントをやられているようですが・・・」という質問を切り出したところ、質問の途中にリーヴスは「私がやっているのは“スタント"ではない、“アクション"だ」とすぐに突っ込んできました。

『ジョン・ウィック』シリーズは、会話のシーンが少なく、アクション・シーンがとても多くなっています。アクション・シーンなどの危険なシーンでは、プロのスタントマンが俳優の代役をするのが一般的です。しかしリーヴス氏は主人公の殺し屋を演じるために、何ヶ月にも及ぶ“ブート・キャンプ"を通してカンフー、柔術、レスリングなどの格闘技を身につけ、銃を反射的に扱えるまで訓練を受ける必要がありました。

「私がやっているのは“スタント"ではない、“アクション"だ」という発言は、彼のアクション・シーンへのこだわりを物語っています。そもそも『ジョン・ウィック』シリーズの監督チャド・スタエルスキは、『マトリックス』においてリーヴスのスタントを担当した人物なのです。本作はそんなスタントマンとアクション・スターの2人のこだわりの結晶といえます。

一般的なハリウッドのアクション映画ではヒーローが持つ銃は永遠に弾切れになることがないのがお決まりなのですが、本作ではリーヴス氏が銃を事細かくリロードする動作が敢えて描かれており、弾切れになった場合は、銃そのものを近接武器として使います。他にも、倒した敵の銃を見過ごすのではなく、積極的に使用したり、身の回りの品を全て“武器"として活用しすることも特徴的です。アクション映画を知り尽くしている2人だからこそできるこういった細かい演出が見どころとなっています。

リーヴス氏に突っ込まれた時、僕の頭の中にはある英語のことわざがよぎりました。

“Actions speak louder than words."
行動は、言葉よりも大声を出す

リーヴス氏が演じる役柄というのは、口先で威張ったり、あれこれ議論するようなタイプではなく、とりあえず行動をとる役柄ばかりです。本人がインタヴューで口数が少ないのも、ネット上で拡散される“キアヌ伝説"についてあまり触れたがらないのも、そういう意味では全て“アクション"に対するこだわりであることがよく分かりました。そういう男だからこそ、かえって“言葉"や“議論"ばかりにこだわるネットやSNSで伝説として語り継がれるのかもしれません。


6.この日の衣裳について

「ユニバーサル・ランゲージ」のグレイのスーツ

「ユニバーサル・ランゲージ」のグレイのスーツ
この商品は、以前紹介したので LANGUAGE & EDUCATION #005 を参照してください。

「ユニバーサル・ランゲージ」のピンストライプの白いボタンダウン・シャツ

「ユニバーサル・ランゲージ」のピンストライプの白いボタンダウン・シャツ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #007を参照してください。

「Micky Milano」の黒いネクタイ

「Micky Milano」の黒いネクタイ
こちらはBigBrotherから借りた『Micky Milano』のヴィンテージのネクタイです。

「ブルックス・ブラザーズ」のグレイのソックス

この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #008を参照してください。

「リーガル」の黒いウィングチップ・シューズ

「リーガル」の黒いウィングチップ・シューズ
この商品は、以前紹介したので LANGUAGE & EDUCATION #003 を参照してください。

「999.9」の「M-27」

「999.9」の「M-27」
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #005を参照してください。
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