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アメリカ人のティーネイジャーにとっての夏休みとは“ショッピング・モール"に行く季節
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』#SummerBreak (2018/08/02放送) | LANGUAGE & EDUCATION #011
Photo: ©RendezVous
2021/12/06 #011

アメリカ人のティーネイジャーにとっての夏休みとは“ショッピング・モール"に行く季節
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』#SummerBreak (2018/08/02放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.プロローグ:楽屋オチ

この日のテーマは、#Summer~(ホニャララ)でした。#SummerBreak(夏休み)をはじめ、#SummerSolstice(夏至)、#SummerVibes(夏の雰囲気)、#SummerGoals(夏の目標)、#SummerRuined(台無しの夏)など、様々な夏に関連したハッシュタッグを取り上げました。

これまで番組としては、ある1つハッシュタッグにテーマを絞り、そのハッシュタッグを含むツイート文を紹介してきました。今回はアメリカの夏休み事情を紹介するに当たって、#Summerもしくは#SummerBreakのみに的を絞るよりは、様々な切り口から見ていった方が面白いということになりました。

今回は、アロハ・シャツを着た内藤先生が登場し、“humid"(蒸し蒸しする暑さ)、“sticky"(まとわりつくような暑さ)、“scorching"(焦げるような暑さ)、“sizzling"(ジリジリする暑さ)など、暑さに関するいくつかの言葉を、先生自らが写した写真を用いて紹介しました。この演出は、この回のディレクターのアイディアだったのですが、番組放送後SNSを見た限り、視聴者にも好評だったようです。秋、冬、春に関連する様々な英語表現もあるので、その際は是非、また内藤先生の写真シリーズを見てみたいものです。

因みに、番組冒頭では、かき氷を急いで食べたせいで頭がキーンとした状態で登場することになりました。氷が溶けてしまう為、かき氷を作るタイミングと出すタイミングが難しかったようで、スタッフもとても大変そうでした。テレヴィを見ている側からすると、なんでもなさそうなシンプルな演出でも、舞台裏では色んな要素がうまく連動しないといけないということが、最近よく分かるようになってきました。


2.“夏休み"という季節

僕が生まれ育ったカリフォルニア州のシリコン・ヴァリィは、1年中気候が穏やかな場所です。はっきりした季節の区切りがなく、いつの間にか太陽がジリジリ照らすような季節が訪れ、またいつの間にか少し肌寒くなるという感覚で1年を過ごします。その為、僕は子供の頃、“summer" は地球の公転と自転軸の傾きによる季節ではなく、学校がない期間という風に認識していました。つまり、“spring"と“fall"の間にあったのは“summer"ではなく“summer break"というシーズンだったのです。学校の休みも、おおよそ10~11週間あり、1年間の4分の1近くを占める長さですので、一つの“季節"と言っても自然なのかもしれません。

90年代のカリフォルニアの少年が、そんな季節をどう過ごしたかというと、海の近くに住む人は海に行きますし、内陸の人はプールやウォーター・パークに行ったりします。(カリフォルニア州のことを西海岸と大きく、括りますが、東西の広さでいうと本州の1.5倍くらいあるので、内陸からだと、太平洋まで行くのにはかなりの時間がかかります。)僕の住んでいた近所には、遊園地があったので、ある期間中好きなだけ訪れることのできる“シーズン・パス"を買って、毎日のようにそこへ行って、ワイワイよジェットコースターにばかり乗っていた友達もいました。

そして、アメリカの子供が親元から離れる為に行くのが、“サマー・キャンプ"です。“サマー・キャンプ"には、様々なプログラムがあり、アウトドア系のもの、スポーツをテーマにしたもの、数学や科学など学問をテーマにしたものもあれば、宗教信者向け、恵まれていない子供向け、障害者向けのものなども存在します。

もう1つ、ティーネイジャーが親元をから離れる為に行くのが“ショッピング・モール"です。アメリカの“モール"の楽しみ方は、人間観察、ゲーセンでの暇つぶし、フード・コートでたむろ、あるお店でショッピング・カートをいっぱいにし店内に放置するイタズラ、併設の映画館でチケット1枚買って複数の映画を楽しむなど、様々な“テクニーク"があります。因みに、モールに入り浸っているこのような若者を“mall rat"(モールのネズミ)と言います。

それにしても、夏休みがあまりにも長いので、どうしても家でボーッとしている時間が増えてしまいます。車を持てる年齢になるまでは、尚更です。英語ではこの状態を“死ぬほど退屈である"(bored to death)と言います。僕が幼かった頃は、“死ぬほど退屈な状態"で夏を過ごす割合がとても多かったことを覚えています。

スマートフォンが当たり前になった今日では、子供がボーッとしたり、“退屈すぎて死ぬかも"という感覚を経験することは、少なくなってきたのではないでしょうか。治安が悪化し、“ヘリコプター・ペアレント"も増える中で、子供が外で遊ぶことも減ってきたように思えます。スマホの普及によって、子供が何か大事なものを失っているような気がします。便利な世の中になってきた反面、子供が“子供らしく"生きることが、どんどん難しい時代になってきたということは、皮肉なことです。

子供の想像力を育てる為に、それなりにボーッとする時間を与えることは、大事かもしれませんが、いくらなんでも3ヶ月間という期間は長すぎるのではないでしょうか。アメリカの都市部や郊外で暮らしているティーネイジャーは、やることがなくなると、最終的にはイタズラ行為(時には、犯罪行為)に走ったり、麻薬などに手を伸ばしてしまうことがよくあります。そういう“意識を拡張させる経験"をした友人が、夏休み明けに、夏休み前とは全然違う人になっていたりすることもよくありました。

アメリカの夏をテーマにした映画


3.この日の衣裳について

シャツのインナーについて

僕は汗っかきなので、以前は、ドレス・シャツの下にインナーを着るべきかどうか悩んでいました。Scarletに相談したところ、ワイシャツは本来下着であることを説明してくれました。つまり、どんなに暑かったとしてもジャケットを脱がないことを前提としているのです。さすがに日本の蒸し暑い夏の場合は、いわゆる“クールビズ"と言われるスタイルで、シャツ1枚で過ごすビジネスマンが多くなってきましたが、それでも下着の下に下着を履くのはおかしいとScarletは言うのです。

毎日ワイシャツを着るような仕事についている方にとっては、インナーを着ることで洗濯する頻度を減らす方もいるのでしょうが、基本的にはワイシャツはあくまでも下着なので、毎日着替えるようにして下さい。

仕事柄、どうしてもインナーを着た方が実用的な方は、ワイシャツからインナーが透けることだけは避けたいところです。夏の東京のビジネス街では、ランニング・シャツが透けて見えるワイシャツ姿の中年のサラリーマンが、あちこちに出現します。安物のワイシャツだと“ニップル"が透けるという理由でインナーを着るという人がいますが、こういう方は、是非一度7000円位の質の高いドレス・シャツをオーダーしてみて下さい。それだけの価値はありますので。

また、無地のTシャツをそのままインナーとして使おうとしている方もたまに見かけますが、Tシャツはインナーより厚い素材でできている為、“Tシャツ姿"がより目立ちやすくなってしまいます。また、ノー・ネクタイ・スタイルで第1ボタンを外した場合、丸首のTシャツは襟元から見えてしまうことがありますので、注意が必要です。襟の形は、Uネック、あるいはVネックを選びましょう。色は、白の無地か、肌色のものが望ましいです。黒のTシャツやプリントのあるTシャツは、最悪の選択です。ワイシャツを着ないで、UネックやVネックのインナーだけを着ることは、更に問題です。

因みに、“ワイシャツ"という表現は和製英語で、語源は“ホワイト・シャツ"に由来するそうです。僕はてっきり、“Tシャツ"に対して、襟と前立ての形の“Y"を表した名称だと思い込んでいました。(お恥ずかしい。因みに、英語ではワイシャツのことをドレス・シャツと言います。)

「麻布テーラー」のピンク・ジャケット

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この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #007を参照してください。

「ユニバーサル・ランゲージ」のグレイのズボン

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この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #010を参照してください。

「麻布テーラー」のピンク・リネン・シャツ

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この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #008を参照してください。

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「白山眼鏡店」のメガネ

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4.エピローグ:#SunsOutBunsOutを解説すると

この日、まさか紹介することになるとは予想していなかったのが、#SunsOutBunsOutというハッシュタッグでした。これはつまり「太陽が出ると、お尻も出る」という意味で、ビーチで水着姿になるなど、女性が引き締まったボディを見せる季節が来た、という意味合いの言葉です。

“バンズ"(buns)というと、日本では、ハンバーガーの具を挟む為に使われる丸いパンのことを想像すると思いますが、その形が似ていることから“お尻"を指す言葉としても使われます。また、髪をおだんごにすることは“tie your hair in a bun"と言い、男性のおだんごヘアを、セクシィさが少々疑わしいというニュアンスも込めて“man bun"と言います。僕に言わせれば、これは日本とアメリカの食文化の豊かさの違いが、言語に表れているのだと思います。日本ではお尻の形が、桃に例えられることがあります。アメリカ人が『桃太郎』を書いたとしたら、主人公はハンバーガーのバンズの中から生まれてきたという設定になっていたのかもしれません。また、日本の民話の『おだんごころころ』も、“バンズころころ"になっていた可能性があります。

ここで、英語学習の視点から、注意点が2つあります。ひとつは、1つのパンを割る前の状態であればそれは“bun"(単数形)であり、割って具を挟む時点では“(two) buns"になるということです。カタカナ語ばかり見ていると“単数形なのか複数形なのか"が、曖昧になってしまうので注意が必要です。(単数形と複数形の区別については、翻訳する際に、一番苦労することの一つです。)もうひとつは、#SunsOutBunsOutの“suns"という表現は、太陽が複数あるという意味ではなく、“sun’s = sun is"のことです。(ハッシュタッグにはアポストロフィー、コンマ、ピリオド、星印やなどの記号を使うことができません。)これもまた、SNSを通して英語を学習する場合には、充分注意する必要があります。

因みに、男性がタンクトップや水着を着て引き締まったボディを見せたがる現象を“sun’s out, guns out"と言います。この場合の“guns"とは下ネタではなく、上腕の筋肉のことです。そもそもの語源は、違うと言われているのですが、英語で腕のことを“arm"と言い、武器や銃のことも“arms"と言うのも実に興味深いことです。


LANGUAGE & EDUCATION #011

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