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SNSがもたらした観光被害について考える
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』 #Overtourism (2019/09/13放送) | LANGUAGE & EDUCATION #033
Photo: ©RendezVous
2022/10/24 #033

SNSがもたらした観光被害について考える
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』 #Overtourism (2019/09/13放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.SNSが生み出した「オーバーツーリズム」の弊害

NHK Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』の9月13日放送分のテーマは、#Overtourismでした。

「オーバーツーリズム」とは「過度に」を意味する接頭辞“over-"と「観光」を意味する“tourism"を合わせた造語で、ある観光地の施設や設備に想定以上の観光客が押し寄せる状態のことを指します。その結果、観光客はその観光地に悪い印象を持つようになり、また、現地の住民とも衝突が起こり、最終的にはその観光地にとってブランド・イメージという面でも経済面上でもマイナスになるのです。

“over-"という接頭辞には「上の」以外にも「標準よりも多く」「過度に」という意味が含まれています。“overcrowded"というと「過度に混み合う」つまり「混みすぎ」という意味であり、“overpriced"というと「過度に高価である」つまり「高すぎる」という意味です。因みに、“overact"は「大げさに演じる」という意味ですが、日本語で「過剰反応」を意味する「オーバー」はこの言葉から由来しているのでしょう。

今回は解説者の佐々木俊尚さんが世界各地に見られるオーバーツーリズムの例を紹介してくれました。まずは、佐々木さん自身がオーバーツーリズムの問題に関心を持つきっかけともなった、2017年にキューバを訪れた時の経験について語ってくれました。20世紀のアメリカ文学を代表する作家であるヘミングウェイのゆかりの地に行ってみたものの、行列ができていてなかなかそこに入れなかったそうです。そしてその後2軒目に向かったものの、あまりにも長い列を目にして諦めたと語っていました。

エベレスト山脈では、許可証の乱発によって標高8,000メートル以上のいわゆる「死のゾーン」と呼ばれるエリアで大渋滞が起きているニューズも紹介しました。極限状態での混雑は12時間以上も続くことがあるようで、死亡事故が相次いています。ネパール政府は、遭難者数の増加への対策として、登る人に「一定のレベルの経験を持っていることを証明することを要求する」新しい規則を設けました。

パリのルーブル美術館では、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』を目当てに訪れる入館者が常に行列を作っています。今年の夏は、展示室の改築のため、7月17日から10月半ばまで(予定)、『モナ・リザ』の展示位置が変更となりました。その展示室の入口がボトルネックとなり、例年以上の大行列と混乱が発生し、予約なしでは鑑賞できない状態が続いているそうです。番組では、長い待ち時間の末、警備員に急かされてしまったため、その作品を思う存分眺めることができなかったことを嘆く投稿者の声を取り上げました。

今年6月にイタリア・ヴェネツィアで超巨大クルーズ船が観光船に衝突し、5人が軽傷を負った事故も紹介しました。英国の神出鬼没のストリート・アーティストであるバンクシーは、豪華客船が随時着岸しているようなその景色を皮肉って、街のスカイラインのほとんどが超巨大クルーズ船に遮られた作品を発表しました。

他にも、ローラー付きキャリーバッグによる騒音公害や観光地におけるゴミの問題など、マナー違反や近隣などへの迷惑行為といったオーバーツーリズムによる弊害についても紹介しました。

かつては「高嶺の花」だった海外旅行ですが、グローバル化が進み、インターネットやSNSの普及によって誰でも海外の情報が簡単に入手できるようになりました。LCC路線の開設によって、お金の面でも海外旅行のハードルはかなり下がりました。このことによって世界各国で観光客が急に増加しています。観光地にとっては短期的には良いことのように思えましたが、長期的には、観光地の人々にとっても負担が大きくなっているようです。


2.日本各地にも広がる「オーバーツーリズム」の魔の手

政府が2020年までにインバウンド観光客4,000万人を目標にかかげている日本においても、ここ10年間、外国からの訪問者数が急速に増えたことによって、「オーバーツーリズム」の様々な弊害が現れています。

それが最も顕著に見られるのが、東京に次いで2番目に観光客数が多いとされる京都です。紅葉の名所として知られる清水寺など京都の人気スポットではバスの混雑が著しく、ピーク時では2、3本見送らないと乗れないことは、地元の人を悩ましています。また、京都を代表する繁華街・祇園では、「インスタ映え」する写真を狙った観光客が、舞妓さんを取り巻いてスマフォで撮影するという“パパラッチ行為"が大きな問題となっています。そういったマナー違反は様々なところで見られ、その懸念から2017年には、夜桜観賞の恒例行事「祇園白川さくらライトアップ」が中止になったことが話題となりました。

ここ数年では、古都・奈良の名物である鹿に関連した被害も問題視されています。国の天然記念物でもある奈良の鹿に鹿せんべいを与える際にじらしたり、無理やり触れようとして噛まれる観光客が急増しているのです。奈良県は対策として、英語、中国語、日本語で鹿せんべいをあげるコツを指南する看板を奈良公園とその周辺に設置しました。

「一度も登らぬ馬鹿、二度登る馬鹿」ということわざがある日本の象徴・富士山でもオーバーツーリズムの被害が現れています。自分のゴミを持ち帰る習慣のない外国人は、山頂付近で寝床やトイレでゴミを置いて行ってしまっているなど、外国人登山者のマナーが深刻な問題とされています。

オーバーツーリズムの魔の手は、何も有名な観光スポットだけに限ったことではありません。北海道函館市の人気ラーメン店「星龍軒」は、2012年に念願のミシュラン・ガイドに掲載されたのですが、その後観光客が殺到することとなり、それまで来てくれていた常連が遠のき、ただ仕込みに追われる日々に限界を感じた店主が閉店を決意したことが話題となりました。また、外国人はそういったガイドブックやSNSを頼りにオススメのレストランを探すため、豚骨ラーメンの「一蘭」など限られた特定のラーメン屋だけが流行る現象が起きています。

函館市のラーメン店のニューズを聞いて、とても複雑な気持ちになりました。僕の知人の外国人の多くは、日本に来る際に観光ガイドブックを見るのではなく、SNSを通して在日外国人の知り合いやその分野の“通"の人にオススメを聞くことが多いからです。そこでの発言が場合によってはオーバーツーリズムに繋がる可能性があることを忘れてはいけません。僕の場合は、お気に入りのスポットや店を知ってもらいたい気持ちと、客が殺到してそのスポットや店が変わってしまうことを懸念する気持ちで内心、葛藤します。


3.外国からの観光客は何を求めているのか

次は、外国からの観光客が何を求めているのか、そのキー・フレーズやバズワードをいくつか紹介し解説します。

tourist trap

観光客が一番避けたい“tourist trap"は、直訳すると「観光客の罠」、つまり観光客に通常より高い料金を吹っかけて商品や提供をする観光スポットのことです。

hole-in-the-wall

直訳すると「壁の中の穴」を意味する“hole in the wall"は、狭くて小さい、気取っていないお店のことを指します。わざわざ訪れなくてはいけない、目立たない場所という意味では日本語の「隠れ家」にも似ていますが、文字どおり「穴場」が一般的には適切な翻訳でしょう。

off the beaten path

日本人と比べて、旅行プランではなく自分で旅程を立てるのを好む外国人は、踏みならされた、人がよく通る道(“beaten path")ではなく、観光客の多い場所から離れた場所を訪れることを好みます。それを“off the beaten path"と表現します。

authenticity

外国人は“authentic"、つまり「本物」や「本格的」なモノとコトが大好きです。ただ問題なのは、外国人が思う“本当の日本"とは、“サムライ" “ニンジャ" “ロボット"のいる「変な国」だということです。

like a local

観光客にはまず誰もが訪れるべきマスト・スポットを見ていただきたいですが、リピーターには、観光客のたまり場のような店ではなく、地元の人が通うようなディープなスポットを体験してもらいたいものです。近年、「airbnb」のような空き部屋がある“ホスト"とそこに宿泊したい“ゲスト"をつなげるサーヴィスが注目されているのもこの理由です。

experience tourism

旅慣れした観光客は、モノを見たり、買ったり、消費したりするのではなく、コトを「体験」したい気持ちが強いです。“experience tourism"とは「体験型観光」のことです。

responsible and sustainable tourism

責任のある、持続可能な観光のことです。近年は観光客の意識も高まっていおり、目的地になるべく負担をかけない形で観光したいと思っている人が増えています。僕がいつも外国人から言われるのは、「なぜ日本人は使い捨てのプラスチック製品をそんなに使いたがるのか?」です。「自然を尊ぶ」というイメージが強いだけに、注意したいポイントかもしれません。


4.今回の衣裳について

「麻布テーラー」のオフホワイトのダブル・ブレスト・ジャケット

「麻布テーラー」のオフホワイトのダブル・ブレスト・ジャケット
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #008を参照してください。

「麻布テーラー」の白いリネン・シャツ

「麻布テーラー」の白いリネン・シャツ
この商品は、以前紹介したので LANGUAGE & EDUCATION #023を参照してください。

「ブルックス・ブラザーズ」のグレイのズボン

「ブルックス・ブラザーズ」のグレイのズボン
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #006を参照してください。

「タビオ」のグレイのソックス

「タビオ」のグレイのソックス
こちらの商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #016を参照してください。

「パラブーツ」の黒いローファー『ランス』

「パラブーツ」の黒いローファー『ランス』
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #010を参照してください。

「MFYS」の黒いカフリンクス

「MFYS」の黒いカフリンクス
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #011を参照してください。

「ゾフ」の黒いメガネ

「ゾフ」の黒いメガネ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #006を参照してください。


LANGUAGE & EDUCATION #033

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