メイン・コンテンツ
検索フォーム
KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (23) 
 映画『アナと雪の女王2』の監督、ジェニファー・リーとクリス・バックへのインタヴューを振り返って
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/11/29 放送) | CINEMA & THEATRE #027
Photo: ©RendezVous
2022/07/25 #027

KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (23)
映画『アナと雪の女王2』の監督、ジェニファー・リーとクリス・バックへのインタヴューを振り返って
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/11/29 放送)

columnist image
KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.プロローグ

『世界へ発信!SNS英語術』の取材で『アナと雪の女王2』の監督を務めたジェニファー・リーとクリス・バックの2人と、プロデューサーのピーダー・デル・ヴェッコをインタヴューすることができました。

本作は、日本でも街のいたるところで『Let It Go』がかかるという “アナ雪現象"を生み出した『アナと雪の女王』(英題は“Frozen"です)の続編です。

『アナと雪の女王』は異なった性格を持った2人のプリンセス、アナとエルサの物語です。姉のエルサは、手から冷気を出してものを凍らせたり、雪を作り出すことができる不思議な魔法を生まれつき持っています。しかし、その力をコントロールできず、周りの人を傷つけてしまうかもしれないということから、エルサは城に閉じこもり、妹のアナとも距離をとります。やがて成人したエルサは、女王として即位することとなり、戴冠式を開きますが、あることをきっかけに感情的になり、王国全体を凍らせてしまいます。ひたむきに明るいアナは、姉を連れ戻すために険しい雪山へと向かいます。壮大な冒険の末に、2人は仲直りして国民にも受け入れられることとなります。続編の『アナと雪の女王2』では、姉妹はエルサの魔法の力の秘密を知るために“未知なる世界"へと旅立ちます。

ディズニーによると、公開直後の週末3日間(金・土・日)だけで、前作に比べ、2倍以上の興行収入と観客動員となっているようです。全米のオープニング興収を見ても、前作の約6470万ドルに対して、本作は2倍近い約1億2700万ドルを稼ぎ出しています。

このコラムでは、インタヴューを振り返りながら『アナと雪の女王2』の魅力について書きます。


2.『アナと雪の女王2』のファッションに見る姉妹の成長

今回のスタジオの収録部分のテーマが「アスレジャー」と「ファッション」となっていたので、『アナと雪の女王2』のインタヴューの時も「ウォードローブ」について聞くこととなりました。

実は、ファッションは『アナと雪の女王』シリーズの1つの見どころともなっているのです。そもそもディズニー映画というものを考える上で、映画と連動して展開される関連グッズは、無視できない存在なのです。中でも人気キャラクターのデザインが入った洋服や仮装は、世界中の少年や少女の間で人気になります。『アナと雪の女王』の公開以来、しばらくの間は、子供のハロウィーン・パーティはアナとエルサだらけとなりました。ディズニーによると、公開翌年の2014年には、米国だけでアナとエルサのドレスが300万着以上も売れたそうです。本作でアナとエルサが着るウァードローブには、どう言った思いが込められているのでしょうか。

「第1作ではヤング・アダルトだった2人が、本作の終わりでは大人の女性にまで成長している様子は、とても見応えがあると思います。衣装を通して、その進化が見えると思います」とリー監督は説明しました。

前作のエルサは、まさに「雪の女王」らしい綺麗なドレス姿でしたが、本作ではより女王としての権威を表した、パワーアップした衣装をまとっています。雪の結晶のデザインをした“エポーレット"(肩章)がその1つの象徴でしょう。雪の魔法を使って自分の衣装を“作り出す"ことができるエルサが着ている服は、どれも色合いも素材感もどこかこの世のものとは思えない優美さがあります。

一方で、アナの服装は前作に比べて大人のシルエットを意識したものとなっており、肩から裾に向かって広くなって行くAラインのドレスに、深い紫のマントを羽織っています。色合いは全体的に秋を意識したものとなっています。

そして2人はドレスの下にスボンを履いているところもポイントだそうです。リー監督によると、「今回2人は、実用性で服を選ぶことがでたのです。“魔法の森"に行くわけですし、それが正解ですよね。」

そんな姉妹の成長は、髪型にも表れています。第1作目のアナは少女らしいツインテイルの髪型でしたが、今回冒険に出る際には、リー監督の助言もあって、編み込みのハーフアップという“大人かわいい"髪型となっています。一方で、エルサはある思い切った行動をとるシーンで、特徴的な三つ編みをより実用的ポニーテイルとして結び直して気を引き締めます。最終的には髪の毛を下ろし、緊張から解き放たれた様子が描かれています。


3.“アナ雪"は型破りなおとぎ話

『アナと雪の女王』が2013年に公開された時、クリス・バックと2人で監督を務めたジェニファー・リーは、女性としては史上初めてウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編映画の監督となったことが大きな話題となった人物です。男女のコンビがディズニー映画の監督を務めたことも、もちろん初めてのことでした。

バック監督は第1作の製作に取りかかり始めた当初、それまでディズニーが得意としていた「ハンサムな王子様のキスに救われるプリンセス」といったこれまでの“定番"とは違うストーリーを描きたかったそうです。それまで脚本家として活動していたリー氏とタグを組むことが決まり、2人はストーリーを編み出す中で、プリンセスを救う「真実の愛」は王子によるものではなく、妹によるものだというアイディアにたどり着きました。

“アナ雪"は、いろんな意味で型破りな映画シリーズなのです。

前作と同様、本作の中心となるのは男女関係ではなく、アナとエルサの姉妹関係です。大人になった彼女たちも、やはり白馬に乗った王子様を待つような女王ではありません。明るくて楽観的なアナには恋人のクリストフがいるのですが、自分の気持ちをうまく伝えられずにおどおどするのは、むしろクリストフの方です。そして神経質で冷静なエルサは、恋人もいなければ、そもそも恋愛のことは頭にすらありません。妹のアナが信じてくれるからエルサは強くなれるのです。

また、「善と悪」というわかりやすい対立がないことも、“アナ雪"がディズニー映画として型破りである理由のひとつです。ディズニーがこれまで描いてきたおとぎ話は、誰が応援するべきヒーロー(もしくはヒロイン)で、誰が悪役であるかが明確なのです。しかし、『アナと雪の女王2』では黒幕や最後に倒さなくてはならない“ラスボス"のようなキャラクターは登場しません。前作もそういう意味では従来のおとぎ話とは違うストーリーでした。姉妹から王国を乗っ取ろうと企むハンス王子というキャラクターはいたものの、これが物語の中心ではありませんでした。それ以上に自分の魔法をコントロールできないというエルサ自身の中にあった「恐怖感」が強敵なのでした。

インタヴュー当日、リー監督は、ワイン・レッドの生地に花の模様が施された、秋らしいジャケットを着ていました。まさに本作のアナをイメージさせるような服装です。

リー監督と言えば、2018年にウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任しています(これも女性としては初のことです)。監督・脚本家・CCOという仕事をバランスよくこなし、いずれの面でも功績を挙げています。魔法によって超人的なことができる雪の女王エルサより、くじけない明るさで人の心を動かすアナよりの人物なのでしょう。


4.ディズニー初の女性監督、ジェニファー・リー

ジェニファー・リーは、アメリカの映画監督、脚本家です。現在ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めています。ニュー・ハンプシャー大学で英語科を卒業し、出版業界でグラフィック・アーティストとして働いた後、コロンビア大学芸術学部で美術修士号を取得します。2011年にコロンビア大学のクラスメイトであった脚本家のフィル・ジョンストンに声をかけられ、2人は共同で『シュガー・ラッシュ』の脚本を書き上げました。その後2013年の『アナと雪の女王』の脚本と監督を担当し、第86回アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞しました。

『シュガー・ラッシュ』
アーケード・ゲイムの世界を舞台とした本作は、ヒーローになることを夢見る人気ゲイムの悪役キャラクター「ラルフ」と、レース・ゲイムのキャラクターでありながらバグのせいでレースに出ることが禁止されている少女ヴァネロペの冒険物語です。2018年に続編『シュガー・ラッシュ:オンライン』が公開されました。


5.ディズニーに呼び戻されたクリス・バック監督

クリス・バックはアメリカの映画監督です。カリフォルニア芸術大学でキャラクター・アニメイションを学んだのち、「ディズニー・アニメーション」に入社し、アニメイターとしてキャリアを積みました。1999年に初監督作品『ターザン』が公開されました。2007年にフルCGアニメ『サーフズ・アップ』を監督するためにソニーに移籍しますが、翌年にディズニーに呼び戻され、その時に『アナと雪の女王』のアイディアを提案しました。

『ターザン』
アフリカのジャングルでゴリラに育てられた人間の男の子を描いたアメリカの小説家のエドガー・ライス・バローズの代表作『ターザン』の初アニメ化作品です。1989年から1999年の間にディズニーが数々のヒット作を世の中に送り出した、いわゆる“ディズニー・ルネッサンス期"の最後の作品とされています。


6.映画を成功に導いたプロデューサーのピーター・デル・ヴェッコ

ピーター・デル・ヴェッコはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの映画プロデューサーです。ボストン大学の芸術学部を卒業し、15年間演劇界で働いた後、ディズニー・アニメーションに雇われました。その後『プリンセスとは魔法のキス』(2009年)や『くまのプーさん』(2011年)のプロデューサーを務め、『アナと雪の女王』ではアカデミー長編アニメ映画賞を受賞しました。


7.インタヴュー時の衣裳について

「KASHIYAMA the Smart Tailor」の黒いダブル・ブレスト・スーツ

「KASHIYAMA the Smart Tailor」の黒いダブル・ブレスト・スーツ
この商品は、以前紹介したので FASHION & SHOPPING #030 を参照してください。

「麻布テーラー」の白いシャツ

「麻布テーラー」の白いシャツ
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #014を参照してください。

「イセタンメンズ」の黒いソックス

この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #005を参照してください。

「アレン・エドモンズ」の『パーク・アベニュー』

「アレン・エドモンズ」の『パーク・アベニュー』
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #024を参照してください。

「MFYS」のウッドのカフリンクス

「MFYS」のウッドのカフリンクス
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #012を参照してください。

「999.9」の『M-27』

「999.9」の『M-27』
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #005を参照してください。

CINEMA & THEATRE #027

映画『アナと雪の女王2』の監督、ジェニファー・リーとクリス・バックへのインタヴューを振り返って -『世界へ発信!SNS英語術』(2019/11/29 放送)


Page Top