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KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (25) 
 映画『ヒックとドラゴン: 聖地への冒険』の監督、ディーン・デュボアへのインタヴューを振り返って
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/12/13 放送) | CINEMA & THEATRE #029
Photo: ©RendezVous
2022/08/29 #029

KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (25)
映画『ヒックとドラゴン: 聖地への冒険』の監督、ディーン・デュボアへのインタヴューを振り返って
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/12/13 放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.プロローグ

先日、NHK Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』の取材で『ヒックとドラゴン:聖地への冒険』の監督を務めたディーン・デュボアをインタヴューしました。


2.シリーズ3作目の日本公開が実現した『ヒックとドラゴン』

北の海に浮かぶ架空のバーク島を舞台にした『ヒックとドラゴン』シリーズは、長きにわたってドラゴンと争い続けてきたヴァイキング一族のリーダーの息子であるヒックという名の少年の物語です。鍛冶屋で修行するヒックはひ弱で村人に邪魔扱いされていますが、研究熱心で発明の才に恵まれています。自分を大人たちに認めてもらおうと、自ら発明した投擲機で最も危険とされるドラゴン「ナイト・フューリー」をなんとか捕らえることに成功します。ところが、ヒックは傷を負ったそのドラゴンを殺すことができず、「トゥースレス」(歯無し)と名付け、絆を深めていくうちにドラゴンを天敵とするヴァイキングたちの考えを変えたいと思いようになります。

本シリーズは、ヒックが自分の一族の意識を変え、リーダーへと成長する様子と、ヒックとトゥースレスとの友情が描かれています。(因みに、日本版ではヒックのドラゴンは「トゥースレス」とは反対の意味になる「トゥース」(歯)と名付けられています。)

このシリーズの2作目は、日本では劇場公開されませんでした。1作目の『ヒックとドラゴン』は、米国で2010年3月に公開され、興行的にも評論家の間の評価という意味でも大成功となった作品です。しかし、日本では同年の夏に、ディズニーの『トイ・ストーリー3』やスタジオ・ジブリの『借りぐらしのアリエッティ』の後に公開されたためか、興行収入的にはイマイチの結果でした。

続編の劇場公開を求める日本のファンは、署名収集サイトChange.orgにおいて「『ヒックとドラゴン2(仮題)』(原題:How To Train Your Dragon 2)の日本での劇場公開を求めます」<リンク>という署名運動を立ち上げました。デュボア監督本人もこれに署名していますが、最終的には直接パッケージ販売されるいわゆる“DVDスルー"のリリースという形になりました。(署名した人数は最終的に7,108人でした。) CGを用いたアニメイション映画の場合、日本ではそもそもディズニーと現在ではディズニーの傘下にあるピクサー以外のスタジオの作品はなかなかヒットしないのが現状なのです。

そういった意味でも、今回『ヒックとドラゴン:聖地への冒険』は、満を持して日本公開の実現となります。

『ヒックとドラゴン:聖地への冒険』
ヒックとその仲間たちが捕らえられたドラゴンを次々と島へ連れ戻してきていることによって、ヴァイキング一族が暮らすバーグ島は過密状態になってしまいます。ヒックは子供の頃に父親から聞いた「ドラゴンの楽園」の話を思い出し、それを探すために村人を連れ、相棒のドラゴン「トゥース」と旅に出るのです。


3.宮崎駿を“ヒーロー"と慕うデュボア監督へのインタヴュー

デュボア監督は、子供時代に観た日本のアニメ作品に強く刺激されました。中でも、宮崎駿の作品が特に好きだったそうです。本作を観て日本の観客に何を感じてもらいたいかということについて尋ねると、彼はこう答えました。「私は宮崎さんからの影響を強く受けています。なので、日本の皆さんには、宮崎さんの作品にあるような驚きや世界観、それに加えて共感できるキャラクターというものを感じていただけると思います。私を刺激してきたそういった要素を“翻訳"し、この作品の世界に入れ込んだつもりです。」

デュボア監督の特にお気に入りのジブリ作品は、『となりのトトロ』のようで、ディズニーに所属していた頃に製作した出世作『リロ・アンド・スティッチ』は、その影響を強く受けていると語ってくれました。特に監督が感銘を受けたのは、宮崎監督が描くリアルな人間関係だったようです。『リロ・アンド・スティッチ』の主人公のリロと姉のナニの姉妹関係は、『となりのトトロ』のサツキとのメイを参考にしたそうです。主人公だけでなく、不思議な生き物を登場させるというファンタジーの要素もこの2つの作品に共通することです。

また、『ヒックとドラゴン』シリーズの最大の見所とも言える、スピード感と迫力に満ちた飛行シーンも、宮崎監督の『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『紅の豚』に対するオマージュと言えるでしょう。『千と千尋の神隠し』には、主人公の千尋が白竜に乗って空を飛ぶ印象的な場面もあります。

他にも、ドラゴンを敵として扱い、理解しようとしないことや、自然界と共存するのではなく制御しようとすることなど、「人間の愚かさ」がテーマとして扱われていることも、宮崎駿監督からの影響といえるでしょう。壮大な自然環境で知られるカナダで生まれたデュボア監督だからこそ、こういったテーマに共感し、自らの作品にも取り入れたいと考えたのではないでしょうか。


4.『スター・ウォーズ』シリーズの壮大な物語性を意識した『ヒックとドラゴン』3部作の魅力

デュボア監督に強い影響を与えたのは宮崎駿監督の作品だけではありません。3部作となった本シリーズの大きなストーリー構成は、同じく3部作として始まった『スター・ウォーズ』シリーズを参考にしたものだと、監督自身も、これまでのインタヴューで明かしています。1作目では、新たな希望が生まれ、2作目では、やや重くて予想もしなかった展開があり、3作目では成長を遂げた主人公が最大の試練に直面します。

キャラクターの設定や物語の内容を見ても、『ヒックとドラゴン』と『スター・ウォーズ』の間に様々な共通点があります。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の始まりでは、主人公のルーク・スカイウォーカーは、ヒーローや戦士とは程遠い変わり者の青年として登場します。銀河を支配する銀河帝国と戦う反乱軍のリーダーの1人であるレイア姫を救うために、ルークは壮大な冒険に出ることになるのですが、肝心な場面ではむしろルークはレイア姫に救われることになります。ヒックというキャラクターもルークと同じく、頼りない“匂い"がするのです。途方に暮れたヒックをいつも救うのは、力強い戦士であるフィアンセのアストリッドなのです。

また、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』では、ルークは、自分の父親を殺したと思っていた敵のダース・ヴェイダーが、実は自分の父親だったことを知ることとなります。このシーンは映画の歴史に残る衝撃的な場面です。一方で、『ヒックとドラゴン2』には、ヒックを守ろうとした父親がドラゴンに殺されるという衝撃的なシーンがあります。

類似点は、これだけではありません。ルークは戦いで片腕を切り落とされますが、ヒックも大きな戦いの末に片足を失ってしまいます。一般的な子供向けのアニメのイメージからするとびっくりさせられるストーリー展開が描かれているのです。


5.「子供の中の大人」のための映画の紹介

このように、『ヒックとドラゴン』シリーズは、子供に向けたアニメイション映画でありながら、少し“大人向け"のシーンやテーマが描かれています。それができるのは、ドリームワークス・アニメーションという製作会社の影響も大きいと言えるのでしょう。

実は、ドリームワークス・アニメーションについて監督に聞いてみると、彼は次のように答えました。「ディズニーは、大人の中の子供に向けた映画を製作します。ドリームワークスのフィロソフィーは、子供の中の大人に向けた映画を製作することなのです。」

『ヒックとドラゴン』には、デュボア監督が敬愛する宮崎駿監督の作品や『スター・ウォーズ』に対する様々なオマージュがありますが、何より監督がこれらの作品から強く影響を受けたことは、「子供を子供扱いしない」作品の作り方なのかもしれません。


6.この日の衣裳について

「ルイジ・ボレッリ」の茶色のネクタイ

「ルイジ・ボレッリ」の茶色のネクタイ
こちらはBigBrotherからお借りした「ルイッジ・ボレッリ」のヴィンテージのネクタイです。上質な茶色のシルク生地に、青色の花のモチーフをした黄色いドットが施されています。

「グローバル・スタイル」のカーキ色のスーツ

「グローバル・スタイル」のカーキ色のスーツ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #020を参照してください。

「麻布テーラー」の黄色いクレリックのシャツ

「麻布テーラー」の黄色いクレリックのシャツ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #014を参照してください。

「タビオ」のベイジュのソックス

「タビオ」のベイジュのソックス
こちらの商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #017を参照してください。

「パラブーツ」のダブル・モンク・シューズ『ポー』

「パラブーツ」のダブル・モンク・シューズ『ポー』
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #008を参照してください。

「999.9」の『M-27』

「999.9」の『M-27』
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #005を参照してください。


CINEMA & THEATRE #029

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