メイン・コンテンツ
検索フォーム
吉野彰氏のノーベル賞受賞を機に考えるカタカナ英語と英語の発音の関係
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』 #NobelPrize (2019/12/06放送) | LANGUAGE & EDUCATION #040
Photo: ©RendezVous
2023/03/06 #040

吉野彰氏のノーベル賞受賞を機に考えるカタカナ英語と英語の発音の関係
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』 #NobelPrize (2019/12/06放送)

columnist image
KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.色んな形のお祝いの言葉を知ることができる#NobelPrize

12月6日放送のNHK Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』のテーマは#NobelPrizeでした。12月10日に開催されるノーベル賞授賞式に先駆けて、旭化成株式会社の名誉フェローである吉野彰をはじめとする、2019年の受賞者についてのツイートを紹介しました。

番組で紹介したツイートの内容としましては、受賞者に向けられたお祝いのメッセージが中心でした。英語学習者には、祝福の表現や賞に関連した言葉を知っていただけたのではないでしょうか。また、 “Yoshino-san’s contribution to the development of lithium-ion batteries has revolutionized technology"(吉野さんのリチウムイオン電池の開発への貢献は、技術に革命をもたらした)や“groundbreaking research"(画期的な研究)など、研究者の功績を称える言葉も取り上げました。

このコラムでは、番組では伝えきれなかった英語表現についての解説をしたいと思います。


2.“最先端の"や“画期的な"を表す様々な英語表現

英語には、新しい発明や最新の技術を形容する表現が数多く存在します。ここでは、良く見かける“revolutionary"や“innovative"の他、パイオニア精神を称えた表現や、地球を揺るがすほどの偉業をイメージさせる表現も取り上げたいと思います。

revolutionary

“revolution"とは「革命」「革新」のことです。“revolutionary breakthrough"は「革新的な大発明」、“revolutionary idea"は「画期的なアイディア」です。因みに“Revolutionary War"というと「アメリカ革命戦争」のことです。

groundbreaking

“groundbreaking"とは新たに建物を建てる際の「着工式」のことです。そこから転じて、「画期的な」「革新的な」「草分け的な」を意味する形容詞として使われています。“groundbreaking discovery"とは「画期的な発見」、“groundbreaking film"とは「革新的な映画」、“groundbreaking new technology"とは「画期的な新技術」のことです。

innovative

“innovate"とは新たなものを創造し、変革を起こすことであり、 “innovative"は「革新的な」という意味の形容詞です。カタカナ語としても使われる「イノベイション」は、ICT企業や自動車製造会社のCMや広告で必ずと言っていいほど用いられる単語です。

cutting-edge

edgeとは「端」や「縁」ことであり、包丁であれば一番切れる部分のことであることから、この表現は「最先端の」「最前線の」を意味します。“leading-edge"とも言います。また、“have an edge over"はライバルや競合商品などよりも一足先を行っている、つまり「有利である」「優勢である」という意味の慣用句です。

state-of-the-art

ここでの“state"とは「国家」という意味ではなく「(現在)の状況」のことです。“art"はこの場合は「美術」のことではなく物事を巧みに行う「技術」「わざ」のことです。したがって、“state-of-the-art"とは「現在手に入れることのできる最新技術を用いた」もの、つまり「最新式の」「最先端の」を意味します。“a state-of-the-art medical facility"というと「最先端の医療施設」のことになります。

pioneering

“pioneer"とは「先駆者」「草分け的存在」のことです。“pioneering company"は「先駆的会社」、“pioneering scientist"は「草分け的な科学者」、“pioneering gene therapy"は「先駆的な遺伝子療法」という意味になります。

trailblazing

“trail"は「道」、“blaze"は未開の森の中を進むときに道しるべとして樹皮に印を付けることです。転じて、“trailblazing"は「先駆的な」「開拓者的な」という意味です。後の人のために道を開くような人のことを“trailblazer"と言います。

epoch-making

“epoch"とは様々な発展や変化がある「時代」あるいは「新時代の始まり」のことです。“an epoch-making event"は「画期的な出来事」を意味し、“epoch-making research"は「画期的な研究」という意味になります。同義語に“epochal"や“era-defining"もあります。また、“epoch-maker"とは「新しい時代を作った人」のことになります。

landmark

land(土地)+mark(印)からなるこの言葉は、観光客や旅行者などにとって地理的位置を特定するために役立つ「目印」となる建物などを指す名詞です。そこから転じて、「画期的な」を意味する形容詞としても使われます。歴史に残る裁判は“landmark trial"、 画期的な論文は“landmark paper"と言います。

monumental

“monument"とは「記念碑」のことであり、そこから転じて“monumental"という形容詞は「記念碑的な」「歴史的な」「巨大な」「偉大な」「不朽の」という意味で使われます。2019年10月、ラグビー日本代表がスコットランド代表に勝利して決勝トーナメントに進出を決めたことは“monumental victory"、つまり「歴史的な勝利」と表現できます。

earthshaking

文字通り、「地球を揺るがすほどの」という意味の形容詞です。日本語でいうところの「驚天動地」のイメイジに近いでしょう。“The climate crisis will have earthshaking implications for future generations"「気候危機は将来の世代にとって極めて重大な影響を及ぼす」という風に使います。

次々と“画期的"な新技術が発表される今日、ICT 企業などの宣伝部に務める人には、こういったバズワードの使いすぎに是非注意していただきたいものです。


3.カタカナ語の罠に注意する

最後に、英語の発音とカタカナ語について少し話したいと思います。番組の冒頭で鳥飼先生が説明した通り、“Nobel Prize"の“Nobel"の発音には注意が必要です。

“Nobel"はカタカナにすると一般的に「ノーベル」と表記しますが、この言葉を発音する時には、アクセント(ストレス)、“b"と“v"の違い、二重母音の3つの点に注意する必要があります。

アクセントの点でいいますと、英語で「高潔な」「気高い」を意味する“noble"(「ノウブル」)と明確に区別する必要があります。“noble"は「ノウブル」のように、ストレスは第1シラブル(音節)にあります。ノーベル賞を作った“Alfred Nobel"は「アルフレッド・ノウベル」ではなく「アルフレッド・ノウベル」のように、ストレスは第2シラブルにあります。また、“Nobel Prize"の場合はそのストレスが和らいで3シラブルとも同じくらいのストレスになります。

また、“Nobel"と「小説」を意味する“novel"(ノヴェル)も区別する必要があるでしょう。アルファベットの“b"は「ビー」、“v"は「ヴィー」と発音します。“love"は「ラブ」ではなく「ラヴ」、生で音楽を聴く“live"は「ライブ」ではなく「ライヴ」となります。

そして二重母音にも注意する必要があります。二重母音とは、2つの母音が滑らかに移行して発音される母音のことです。“Nobel"と“noble"の第1シラブルの“no"(そして「いいえ」を意味する“no")は「ノー」ではなく「ノウ」と発音され、それも「ノ・ウ」のように別々に発音するのではなく、「ノォゥウ」のように一続きに発音します。

カタカナ表記だとこういった微妙な違いは失われるので、英語学習者には“カタカナ語"ではなく正しい英語の発音を意識して身につけていただきたいところです。

この教訓は、日本に来て13年になる僕自身も覚えておく必要があるのかもしれません。というのも、今回の収録は、“Nobel"の発音を気にするあまり、1つ目のツイートを読み上げる際にうっかり発音ミスを犯してしまいました。“lithium-ion"(リチウムイオン電池)の“ion"を日本語風に「イオン」と読み上げてしまったのです。正しくは「アイオン」と発音します。幸い、すぐ自分のミスに気づき、現場ですぐにその部分を撮り直すことができました。

“i"で始まる他の英語にも、注意する必要があります。“icon"はカタカナでは「イコン」ですが、英語では「アイコン」と発音します。“icon"はもともとはギリシャ語の“εικών"(「イコン」)、つまり聖書における重要な出来事を描いた宗教画のジャンルのことであり、“ει"は中世・現代ギリシャ語で「イ」と読むため「イコン」と読みます。ヨーロッパ中のパーティー・ピープルが集う地中海の“Ibiza"島はカタカナでは「イビザ」ですが、英語では「アイビザ」と発音されます。(元のスペイン語としては「イビザ」が正解です。)一方、中東の国“Iraq"と“Iran"に関しましては、カタカナでは「イラク」「イラン」であり、英語でも同じように発音することが一般的になりました。しかし、ジョージ・W・ブッシュ元大統領をはじめとするアメリカ人の一部は、どうしても「アイラク」「アイラン」と発音したがるのです。

この「アイ」も二重母音であり、「ア・イ」ではなく「アァィイ」のように母音を滑らかに繋げて発音するのが正解です。

ところで、日本国内でスーパーなどを展開する大手流通グループの「イオン・グループ」は英語ではどう発音するのでしょうか。この「イオン」の綴りは“ion"ではなくラテン語で「永遠」を意味する“aeon"なので、こればかりは英語でも「イオン」と発音できます。

バイリンガル・ウェブ・マガジンDIG TOKYOでは、こういった点を踏まえて、カタカナで表記する場合は日本で一般的に用いられている表記ではなく、なるべく英語の発音に近い表記で記すことを編集方針としています。例えば“event"は「イベント」ではなく「イヴェント」、 “Los Angeles"は「ロサンゼルス」ではなく「ロス・アンジェレス」と表現しています。

その点では、鳥飼先生が“award"は「アワード」ではなく「アウォード」であることをとても熱く語ってくれた時、それこそTeacher of the Year Award (今年の最優秀教師賞)を送りたいくらいでした。


4.今回の衣裳について

「グローバル・スタイル」のカーキ色のスーツ

「グローバル・スタイル」のカーキ色のスーツ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #020を参照してください。

「ル・カノン」の茶色のボタン・ダウン・シャツ

「ル・カノン」の茶色のボタン・ダウン・シャツ
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #028を参照してください。

「タビオ」のベイジュのソックス

「タビオ」のベイジュのソックス
こちらの商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #017を参照してください。

「レッド・ウィング」の『チャッカ・ブーツ』

「レッド・ウィング」の『チャッカ・ブーツ』
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #004を参照してください。

「ゾフ」のくろい眼鏡

「ゾフ」のくろい眼鏡
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #006を参照してください。

LANGUAGE & EDUCATION #040

吉野彰氏のノーベル賞受賞を機に考えるカタカナ英語と英語の発音の関係 - 『世界へ発信!SNS英語術』 #NobelPrize (2019/12/06放送)


Page Top