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KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (15) 
 映画『風をつかまえた少年』の原作者・ウィリアム・カムクワンバへのインタヴューを振り返って
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/08/02放送) | CINEMA & THEATRE #019
Photo: ©RendezVous
2022/04/11 #019

KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (15)
映画『風をつかまえた少年』の原作者・ウィリアム・カムクワンバへのインタヴューを振り返って
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/08/02放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.プロローグ

先日、NHK Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』の取材で、アフリカのマラウイ共和国出身の発明家、ウィリアム・カムクワンバさんにインタヴューすることができました。このコラムでは彼の人生を題材にした映画『風をつかまえた少年』を紹介し、インタヴュー時の僕の衣裳を紹介します。


2.映画『風をつかまえた少年』について

カムクワンバさんは、幼いころからラジオを分解してその仕組みを調べるなど、電子機器に興味を持った好奇心旺盛な少年でした。しかし、干魃や飢饉によって両親が学費を払えなくなり、やむなく学校を中退することになります。しかし、その後も、村の図書館に通って独学に励み、そこで風力発電について書かれた1冊に出会います。電気の普及率が極めて低いマラウイの状況を変えたいと思い、14歳の時に、ユーカリの木と自転車の部品などの廃品を利用して風車を作り、風力発電を小さな村にある自宅で利用できるようにしました。

そんなカムクワンバさんは、2007年にタンザニアのアルーシャで行われたTEDGlobalにゲストとして招聘されました

このTEDトークの反響によってカンファレンスに参加していた複数の企業が、カムクワンバさんが中等教育を受けるための学費を支援することにしました。また、『ウォールストリート・ジャーナル』など大手メディアも彼の活動を取り上げ、彼の名は世界中に知られるようになりました。カムクワンバさんは、支援者からの奨学金によって、南アフリカ共和国のエリート養成大学である「アフリカ・リーダーシップ・アカデミー」に通い、その後アメリカのダートマス大学で環境学を学ぶことになりました。

そんな彼の経験がジャーナリストによってまとめられた書籍が『風をつかまえた少年』です。この本は、2010年に出版されてベストセラーとなり、それを基に製作された同名の映画が2019年8月2日より、日本でも順次公開されます。今回はその映画のプロモーションのために、カムクワンバさんは来日しました。

こちらはカムクワンバさんの2度目のTEDステージです:

https://www.ted.com/talks/william_kamkwamba_how_i_harnessed_the_wind?language=ja


3.ウィリアム・カムクワンバのプロフィール

ウィリアム・カムクワンバ(1987年~)はマラウイの発明家です。
電気の普及率が極めて低いマラウイの状況を変えたいと思い、14歳の時にユーカリの木や自転車の部品を使って風車を製作し、世界的に有名になりました。その後、地元で風車の建設を続け、太陽光発電を利用した貯水タンクを設置してきました。2013年に『TIME』誌に「世界を変える30歳未満の30人」の1人にも選ばれました。現在はマラウイにおいて地域の若者をサポートするイノヴェイション・センターを立ち上げる準備を進めています。

『風をつかまえた少年』ウィリアム・カムクワンバ(著)、ブライアン・ミーラー(著)、田口 俊樹 (翻訳)
2010年に出版された、ウィリアム・カムクワンバの自伝です。人間が持つ創作力と逆境を乗り越える力を描いた感動の実話です。

『風をつかまえた少年』監督:キウェテル・イジョフォー
カムクワンバの自伝を原作としたイギリス製作の映画です。マラウイ出身の俳優以外は現地語の「チェワ語」を学び、カムクワンバ本人のゆかりのある地で実際に撮影されるなど、マラウイの社会と文化を忠実に描いていることが話題となりました。
正式HP: https://longride.jp/kaze/


4.目先のことばかりにとらわれないということ

この日のインタヴューに向かう途中、数分程度の電車の遅れが発生しました。僕は少しイライラしながら時計と、ホームにある発車標を交互に繰り返し確認していました。

ICTの発達やSNSの普及によってどんどん便利な世の中になった結果、私たちは些細な障害に対して、すぐイライラしたり挫折することが多くなった気がします。また、目先のことにとらわれ、すぐに得られる快感や楽ばかりを求めて楽に生きるようになりました。それを象徴するように、都会であればどの街角にもコンビニや自販機が至るところにあり、最近では荷物の当日配達さえ当たり前のことになってきています。

今回カムクワンバさんに聞いてみたかったのは、「どうしてもっと長い目で物事をみて行動を取ることができたのか」ということでした。干魃や飢饉のために、学費が払えなくて学校にも通えなくなり、想像できないくらいの苦境に立ちながらも、カムクワンバさんはなぜ独学で勉強を続け、将来を見据えて風車を発明することができたのか。

「カムクワンバさんの精神力や教育に対する熱心さはどこからきたのですか」と尋ねると、彼は「祖母でしょう」と答えました。彼の祖母は自分でレンガを積んで家を作るなど、「男がやる仕事」だとされていた仕事を淡々とこなす強い女性であったそうで、自分を信じてより高い目標を持つことの大切さを教えてくれたとカムクワンバさんは話してくれました。「もしあなたの洋服に火が付いたとしたら、誰かが火を消してくれるのを待ってはいないでしょう。困った時には、自分で行動を起こす必要があるのよ」と教わったそうです。

もう1つとても印象的だったのが、“Teach a man to fish rather than give a man a fish"、つまり、「人に魚を与えるより、魚の釣り方を教えなさい」という言葉でした。これは有名な格言、“Give a man a fish and you feed him for a day; show him how to catch fish and you feed him for a lifetime"(「人に魚を一匹やればその人は1日食いつなぐが、人に魚の取り方を教えてやれば、その人は一生食いはぐれることはない」)を短く言い換えたものです。

日々の生活の中で、自分がやっていることが「魚を一匹得る」ことなのか、それとも「魚の取り方を身につける」ことなのかを、自分自身に問う重要性を強く感じました。それは勉強の仕方や、パソコンやネットの使い方など、生活のあらゆる面に当てはめることができるでしょう。学生であれば、自分がやっていることは「暗記」なのか、それとも、「本当に身につく勉強の仕方」なのか。社会人であれば、自分はパソコンやスマフォを使いこなしているのか、それともパソコンやスマフォに使われているのか。電気の普及率が極めて低い発展途上国だろうと、物質的に充足した先進国だろうと、人が5年後、10年後に思うような暮らしができるかどうかは、その人の自覚によって大きく変わるのかもしれません。


5.この日の衣裳について

「スティーヴ・ベネット」のネイヴィのネクタイ

「スティーヴ・ベネット」のネイヴィのネクタイ
こちらはBigBrotherからお借りしたヴィンテージの「スティーヴ・ベネット」のネクタイです。

「グローバルスタイル」の茶色いスーツ

「グローバルスタイル」の茶色いスーツ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #023を参照してください。

「麻布テーラー」の白いピンホール・シャツ

「麻布テーラー」の白いピンホール・シャツ
この商品は、以前紹介したのでLANGUAGE & EDUCATION #003を参照してください。

「タビオ」のレンガ色のビジネスソックス

この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #020を参照してください。

「MFYS」のウッドのカフリンクス

「MFYS」のウッドのカフリンクス
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #012を参照してください。

「パラブーツ」のマロンの『チャンボード』

「パラブーツ」のマロンの『チャンボード』
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #020を参照してください。

「999.9」の『M-27』

「999.9」の『M-27』
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #005を参照してください。

CINEMA & THEATRE #019

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