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KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (16) 
 映画『ライオン・キング』の監督、ジョン・ファヴローへのインタヴューを振り返って
  - Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/08/09放送) | CINEMA & THEATRE #020
Photo: ©RendezVous
2022/04/18 #020

KAZOOの『SNS英語術』映画コーナー (16)
映画『ライオン・キング』の監督、ジョン・ファヴローへのインタヴューを振り返って
- Eテレ『世界へ発信!SNS英語術』(2019/08/09放送)

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KAZOO
翻訳家 / 通訳 / TVコメンテイター

目次


1.プロローグ

今回は本作の監督であるジョン・ファヴロー氏にインタヴューすることができました。ファヴロー監督は、数年前にディズニーの1967年の長編アニメイション『ジャングル・ブック』の実写版の監督も務めました。その作品では主人公である少年のモーグリを除いて、ほとんどCG技術による作品でしたが、人間の登場人物がいない『ライオン・キング』はその一歩先を行ったフルCGによる作品です。


2.ディズニーの実写版と“超実写版"の『ライオン・キング』

近年、ディズニーはこれまでの名作アニメイション映画の実写版を次々と製作し、ヒットさせています。2017年にはフランスの民話を基に製作した1991年の『美女と野獣』、2018年にはくまのプーさんを実写映画化した『プーと大人になった僕』。2019年だけで、1941年の『ダンボ』と1992年の『アラジン』の実写映画版が公開されました。この流れの背景には、新しい世代をディズニーの世界観に巻き込むと同時に、元の作品を観て育った世代にノスタルジーを提供するというディズニーの狙いがあるのでしょう。

より現代の風潮に合った形で作り直すことができるところも大きなポイントなのでしょう。1994年のアニメイション版の『ライオン・キング』は、アフリカという舞台設定でありながら、主人公のシンバをはじめ、声優の大半は白人であったことは、人種や民族の多様性が進んだ現代からすると、ある種の“ホワイトウォッシング"に見えます。また、悪役のハイエナたちの喋り方は、都市部のスラム街に暮らす貧困層の黒人やラテン系を彷彿させるキャラ設定であることも指摘されてきました。今回のリメイク版では主人公をはじめ大半は黒人の俳優が声優を務め、ハイエナたちにも単なるステレオタイプ以上のキャラ設定が与えられています。

最新の『ライオン・キング』の注目すべき最大のポイントは、“実写版"ではなく、“超実写版"であるところです。つまり、最新のCG技術を用いて実写映画を“超えた"映像美を実現しました。デフォルメや“崩し"で描かれた伝統的な“アニメ"作品とは違い、できるだけリアルに見せることで、この物語の世界観や、そこに込められた「サークル・オヴ・ライフ」(生命の環)のメッセージを今までにない形で表現することが可能になりました。

一般的にアニメイション作品は、製作がかなり大変で、厳しい時間制限の中でアーティストやアニメイターたちが絞り出した血と汗と涙の結晶というイメージがあるのではないでしょうか。ファヴロー監督は『ジャングル・ブック』を製作する中で技術のできること・できないことを把握したことで、その経験を生かして本作の製作に臨むことができたと話してくれました。新技術に慣れるまでの準備期間を省くことができたことによって、最初から全速力で製作に取り組み、アーティストやアニメイターたちも自分たちの最高の仕事をすることができたようです。その映像美はとても見事なもので、まるで自然や野生動物を追ったドキュメンタリーを観ている錯覚にさえ落ちるほどにリアルな映像となっています。


2.ジョン・ファヴローについて

ジョン・ファヴロー(1966年~)はニューヨーク市クイーンズ区生まれの俳優、映画監督、映画プロデューサーです。大学を中退してウォール街で働き始めたもののコメディアンになるためにシカゴに移りました。その後、端役でテレヴィや映画に出るようになり、脚本家として映画製作に携わるようになります。2008年の『アイアンマン』が世界的大ヒットを博しました。

『ライオン・キング』(2019年)
1994年に公開されたディズニーによる長編アニメイション映画を“超実写化"した本作は、実写を超えたリアル感を目指したフルCGによる作品です。動物たちの王国“プライド・ランド"を舞台に、ライオンの子のシンバが新たな王となるまでの成長を追った物語です。

『アイアンマン』(2008年)
アメコミ出版社「マーベル・コミック」の作品を映画化した『マーベル・シネマティック・ユニバース』の記念すべき第1作目です。それまでは不人気で二流のスーパーヒーローだったアイアンマン役にファヴローの推薦で名優ロバート・ダウニー・Jrが抜擢され、世界的ヒットとなりました。

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(2014年)
一流レストランで総料理長を務めるカールは、不慣れなSNSでレストランの評論家と喧嘩になり、解雇されてしまいます。気分転換に息子とマイアミを訪れる際に、キューバ・サンドイッチの美味しさに感動を覚え、フード・トラックでの移動販売を始めることにします。ファヴローは本作の監督・脚本・主演を務めました。現在、スピンオフとしてファヴローがアメリカ各地の食文化やレシピを紹介する『ザ・シェフ・ショー -だから料理は楽しい!-』もNetflixで配信中です。

『ジャングル・ブック』(2016年)
イギリスの小説家であるラドヤード・キップリングの短編小説集『ジャングル・ブック』と、ディズニーによってそれが映画化された1967年のアニメイション映画を実写版化した冒険ファンタジー映画です。狼の群れの中で育てられた少年モーグリが、凶悪なトラのシア・カーンに追われながら、動物の仲間たちとともに自分の居場所を模索します。主人公以外は動物たちも環境は全てCGで作られたことが話題となりました。


4.人間性とわびさび

本作を製作するために、ファヴロー監督は、一般消費者でも買えるヴァーチャル・リアリティ(VR)技術を用いて映画製作の“ゲイム"をプログラミングしたそうです。映画の舞台となる「プライド・ロック」を仮想空間として作り、その中で“撮影"を行なったと説明してくれました。「もしあなたたちが製作現場を訪れていたとしたら、そこにいる皆はVRゴーグルをつけながら、カメラを操作する様子を見ることができたはずだよ」と監督は笑いながら言いました。この技術は、今後の映画製作を大きく変える可能性を秘めていると、多くの業界関係者は主張しています。

同時に、「注意しなくてはいけないのは、テクノロジーが私たちの人間性をしのぐことがないようにすること」とも強調していました。ファヴロー監督は、最新の技術と人間性の両方の要素をバランスよく作品に取り入れることに優れている監督です。例えば『アイアンマン』は、最新技術を使った最先端の“鎧"を身につけて悪と闘うスーパーヒーローの物語ですが、同時に、自分中心で遊び人である主人公が真の“スーパーヒーロー"に必要な人間性を身につけるまでの成長の物語でもあります。

ファヴロー監督の発言を受けて、「CGの技術ばかりが話題となっていることについてどう思いますか」と尋ねました。すると監督は、「皮肉なことに、私たちは技術を重視した結果、本作は手製の映画になった、ということです」と答えてくれました。最新のテクノロジーを駆使した実際の作業は、芸術家がモザイク画のタイルを一枚一枚塗るプロセスに似ているということです。

そんな芸術性を重視した作品に込められた美意識について尋ねると、ファヴロー監督の口から「わびさび」という言葉が出ました。流れるようなスムースな映像美が特徴の従来のアニメイションとは違って、本作ではアニメイションにはない不完全性を敢えて人工的に表現することを意識したそうです。そして、人間の手を感じさせない、ありのままの“大自然"を見せるために、実際には、その裏でとてつもない手間をかけたことを語ってくれました。「それは日本の枯山水に似ているかもしれない」と監督は言いました。どうやらファヴロー監督は、知日派のようです。

インタヴューが終わってファヴロー監督に「ありがとうございます」と伝えた後に、一言「『ザ・シェフ・ショー』を観ています」と伝えました。Netflixで配信中の『ザ・シェフ・ショー』は、大のグルメ好きとして知られるファヴロー監督が、プロのシェフにレシピを教わったりする料理番組です。監督は、「日本でもそれなりに評判が高いと聞いている。ありがたいね」というと、僕は「食は世界の共通語ですからね」と言いました。どうやら監督は約3年ぶりに来日するにあたって、日本での食事をとても楽しみにしていることを教えてくれました。最新のCGを操るハリウッドの一流監督にとっても、やはり美味しい食べ物の“シズル感"に勝るものはないのでしょう。


5.この日の衣裳について

「エルメネジルド ゼニア」のネイヴィーのドット・ネクタイ

「エルメネジルド ゼニア」のネイヴィーのドット・ネクタイ
こちらはBigBrotherからお借りしたヴィンテージの「エルメネジルド ゼニア」のネクタイです。

「グローバルスタイル」のグレイのスーツ

「グローバルスタイル」のグレイのスーツ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #008を参照してください。

「麻布テーラー」のストライプのクレリック・シャツ

「麻布テーラー」のストライプのクレリック・シャツ
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #028を参照してください。

「ブルックス・ブラザーズ」のグレイのソックス

この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #008を参照してください。

黒いカフリンクス

黒いカフリンクス
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #011を参照してください。

「パラブーツ」の茶色いダブル・モンク・ストラップ・シューズ『ポー』

「パラブーツ」の茶色いダブル・モンク・ストラップ・シューズ『ポー』
この商品は、以前紹介したのでFASHION & SHOPPING #008を参照してください。

「999.9」の『M-27』

「999.9」の『M-27』
この商品は、以前紹介したのでCINEMA & THEATRE #005を参照してください。

CINEMA & THEATRE #020

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